01
可愛い嫁
一「岡崎さん!」
突然、誰かの呼ぶ声が聞こえてその声のしたほうに振り向くとそこにいたのは…。
同じ営業課の女性新入社員だった。
俺はそこまで深く仕事で関わりはないけれど、何度かは書類作成などを頼んだことはある。
「…なに?」
だけど、急に呼び止められた理由がわからなくて俺は少し冷たくそう返事をした。
「あ、すみません!急に呼び止めてしまって…。」
「…別にいいけど。なに?」
「…あ、あの……私まだ入社して間もないのにこんなこと言うのも失礼かもしれないですけど……岡崎さんを一目見た時から好きなんです!よかったらお付き合いしてくれませんか?」
突然の告白に俺は驚きを隠せなかった。
だけど、"一目見た時から" ってことは……。
要するに "一目惚れ" ってことだよな……。
今までに俺の外見で告白してくる女は数え切れないほどいた。
高校と大学でも
俺はそこまでクールってわけでもないけれど
必要最低限の会話しかしないことが多くて…。
それが、気に入らなかったのか──。
向こうから告白してきたくせに……
"何考えてるかわからない。"
─なんてそんな言葉で別れを切り出されたこともあるくらいで…いつしか俺の外見だけ見てるような女性には関わらないようにしてきた。
「……悪いけど、君とは付き合えない。」
「…どうして、ですか?」
今までなら、"今は誰とも付き合う気はない。" みたいな言葉で断っていただろう。
「……俺、1ヶ月前に結婚したんだよ。」
「…え?」
俺の "結婚した。" という言葉に彼女は
「嘘じゃねぇよ。」
今は結婚したことで少しでも告白の返事に困ることはない。
まあ結婚した理由とは関係ないんだけど。
「……え?本当に…?」
「これ本物だから。」
「え、でも…私が営業課に配属した頃は指輪してなかったですよね?」
「あの時はまだ指輪買ってなかったから。でも、その時にはもう結婚してた。」
「そう…ですか………わかりました………失礼します……お疲れ様でした…」
彼女はそう言うと営業課の方へと走り去って行ってしまった。
そんな彼女を黙って見送っていたが慌てて腕時計を確認すると、時刻は22時を廻った頃で俺は急いで
***
会社からアパートまでは1時間程掛かる為基本的には車で出勤している。
だから今から車を飛ばしても23時頃になってしまうわけだ。
美亜はまだ高校生なのにこんな時間まで待たすのは本当に申し訳なく思うが、俺は社会人でこればっかりはどうしようもない。
なるべく遅くなるときは連絡するようにはしているものの仕事内容によってはそれもままならない時もあるわけだ。
まあ時間によっては美亜にも "先に寝てて。" とは伝えることもあるんだけど、今回は完全に忘れていた自分が恨めしく思う。
そんなことを思考していると地下駐車場に停めてある自分の車の前に着き鍵の遠隔操作でドアを開け運転席に乗り込んだ。
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