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可愛い嫁




「…爽ちゃん?」


俺の突然の抱擁ほうように美亜は不思議そうな声音で俺の名前を呼んだ。


「…いや、美亜が可愛いこと言うから…なんか抱きしめたくなった。」
「なにそれ〜!変な爽ちゃん。」


美亜はそう言うとクスクス笑いながら俺の背中に手を回してきた。



──本当のところは…
美亜が可愛い発言をしたことだけじゃない。

大学入学の直前から今までずっと独り暮らしの生活が長かったせいか、誰かが……好きな人がこうやって自分の帰りを待っていてくれることになんか嬉しくなってしまったんだ。

それにこの部屋には美亜以外の女は一度も入れたことはない。

特に入れたくない理由なんてなかったんだけど、何故か今まで "部屋に行きたい" と言われる前に別れたりしていたから。

まあそこまで深い付き合いをしてなかったのもあるかもしれないけれど。



「…お腹空いた…」


俺は美亜にもっと触れたいのを我慢してそう一言呟き美亜から腕を離した。


今までだってずっと我慢してきたけれど、美亜に少しでも触れてしまうと理性が崩壊しそうで…
堪えるのに大変なんだ。

だから理性が崩壊する前に離れないと美亜を傷つけてしまいそうで怖かった。


「あ、ご飯できてるよ。食べる?」
「食べる。」

俺はそう一言だけ美亜の問い掛けに答えると靴を脱いで玄関を上がって部屋の中に入った。


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