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可愛い嫁




部屋に上がると真っ先に俺はタンスを開けて部屋着を出すと早急に着替えてからスーツをハンガーに掛け少し小さめのテーブル前のソファーに腰掛ける。

その直後に美亜が台所から出てきて料理を運んで来てくれた。


結婚してから知ったのだけど、美亜は家事が得意みたいだ。

もちろん料理の他にも洗濯、掃除を丁寧してくれている。

俺も美亜と結婚する前は食事はまあ外食が多かったけど、他のことはひと通りやっていたけれど、俺なんかより美亜のほうが遥かに上手だ。


たぶん─いや確実に美樹さんにしごかれたに違いない。


美樹さん─まあ今はもう俺の義理の母親なのだけど。


美樹さんは普段はおっとりしていてそんなに怒るように人でもない。

だけど、何に対しても一度行動を起こすとそれをやり遂げる─というか頑固ともいうのかな。

そういうタイプの人なんだ。


だからきっと美亜の家事もそんな美樹さんにしごかれたのだと思う。


「いただきます!」


最後に白米の入ったお椀が置かれて俺は箸を手に持つとそう言葉にしてから美亜の手料理を味わった。


──そして、俺がもう少しで食べ終えるって時に滅多に鳴らないインターホンが部屋に鳴り響いた。



──ピーンポーン。


そのインターホンに慌てたように美亜が立ち上がり玄関に向かっていった。


美亜はそのまま覗き穴から外を伺うとその瞬間驚きの声を上げた。


「え、理緒さん?」
「…は?」


美亜の口から発せられた名前に俺は頓狂とんきょうな声を出してしまった。



「爽ちゃん!理緒さんだよ!」


俺がなかば放心状態で玄関を見つめていると再び美亜から発せられた名前に聞き間違いではないのだと悟った。


「……まじかよ……美亜、開けてやれ。」
「うん、わかった!」


本当は会いたくない人物だったりする。

彼女が俺の部屋に来る時は大概ロクなことがないからだ。

寧ろ俺には関係ないことだったりする。



そうこうしているうちに美亜が玄関のドアを開けると予想通りの人物の声が聞こえてきた。


「そうす……って、あれ?みー?」


いつもならドアを開けるのは俺の役目だった。

だからいつもなら "そうすけーー!" なんて名前を叫びながら俺に抱きついてくる。

だけど、ドアを開けたのが俺じゃないと知るやいなや彼女は驚愕きょうがくの表情をしながら美亜を見つめ、瞳をしばたたかせていた。


「え、なんで?なんで…みーがここにいるの?」


状況を全く掴めていない彼女は言葉にも動揺の様子がうかがえた。


「俺の嫁になったから。」


だから俺はそう呟くように発言しながら止めていた箸を動かして残り少なくなっているご飯を完食したのだった。


「…は?」

一方で彼女からは俺の言葉に理解できなかったのか頓狂とんきょうな声を出していた。


「だから俺の嫁になったんだよ。」
「…え、ええぇぇぇえ?!」


俺が冷静に再度同じ言葉をつむぐと彼女からは雄叫びのような声が発せられた。


「…うるせぇよ、近所迷惑だろ。」
「あ、あの…理緒さん上がってください。」
「…え、あ、う、うん…」


今まで黙って見守っていた美亜は彼女─もとい理緒を部屋に上がるよう促し理緒は慌てたように返事をして靴を脱ぎ部屋に上がってきた。


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