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可愛い嫁




──それから間もなくして理緒と雅明さんの言い合いが聞こえてきて…。

再び玄関に戻ってきた雅明さんは理緒を肩に担いでいて…もう片方の手には理緒のボストンバッグを提げていた。


「じゃあ、帰るわ。」

雅明さんはそう言葉にして再び靴を履き始めた。

その間、理緒はずっと 『離してよ!』 の声を荒げていたが、雅明さんはそんなのお構いなしといった感じで靴を履き終えてから再び俺と美亜のほうに向き直った。


「理緒が迷惑かけて本当にごめんな。また改めて理緒と一緒に来るからさ。」
「わかりました。」
「みーちゃんもごめんね。初対面だったのにゆっくり話もできなくて…。」
「いえ、大丈夫ですよ。またぜひいらしてください。」
「ありがとう。じゃあまたね。」


雅明さんはその言葉を残して未だに雅明さんの腕の中で暴れながら声を荒げている理緒と共に俺の部屋から出て行った。



扉が閉まって…2人の姿が見えなくなると、無意識に溜息が俺の口から溢れた。


「爽ちゃん?」
「なんか疲れた…。」
「そうだね…理緒さん相変わらずだな…」
「美亜ごめんな。明日も学校なのにこんな遅くまで付き合わせて…」
「大丈夫だよ。久しぶりに理緒さんに会えて嬉しかったし。」


俺は独り暮らしを始めてから理緒が押し掛けて来るのは頻繁ひんぱんにあったから慣れっこだったけれど、美亜と同居を始めてから理緒が押し掛けてきたのは初めてだったから美亜は驚いたに違いないと思って俺が謝罪をしたら……。

美亜は理緒に久しぶりに会えたことに喜んでいた。

だから俺もそれ以上は何も言えなくて "そっか" とだけ返事をした。



「げっ!もうこんな時間…」


美亜と部屋に戻って時計を見ると、AM 1:00を廻っていた。


「くそっ。理緒のせいで睡眠時間ちょっと減っちまったじゃねぇか。」
「本当だね!寝なくちゃ。」


そんな会話をしながら俺はソファーに寝転んで美亜はベッドへと上がると布団に潜った。


ちなみに何故、布団が別々かというと──。

俺がまだ美亜には触れられないプライドみたいなのがあるから。

だから美亜には俺が独り暮らしを始めた時に購入したベッドに寝かせている。
































───だけど、そんな俺のプライドも後に呆気もなく崩壊していくのは……もう間もなく─だということに……。

この時の俺は思ってもみなかったんだ──。


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