01
見えない気持ち
一──放課後になり、HRが終わりクラスメイトが次々と帰っていく中…私は "本日の夕飯は何しよう。" なんて思考しながらも当直日誌を記入していた。
いつもならHRが終わったら私もすぐに帰宅準備をしてたまに夕飯の仕度でスーパーに寄ったりしてから家路に着くのだけれど、この日は当直ですぐには帰宅できそうもなかった。
まあ爽ちゃんが帰宅する時間までは数時間はあるから問題ないんだけど、スーパーで買い物をしなきゃいけない日でもあった。
大抵の食品は買い溜めしてから時間に余裕がある時には作り置きして冷凍庫に保存はしてあるけれど、以前に買い出しに行ったのは1週間前だ。
「…美亜、日誌書く手止まってる。」
「え、あ、ごめん。」
私が日誌を記入し終えるのを待ってくれている奈美ちゃんにそう指摘され、慌てて日誌書く手を進めた。
「…何、考えてたの?さっき。」
「…あ、うん。今日の夕飯のことと "買い出し行かなきゃなー。" って…。」
「夕飯かー。主婦になると毎日それ考えなきゃいけないもんね。」
「そうだよ。私もこんなに大変だとは思わなかったよ。」
やっと慣れてきた今の生活だけど、最初は本当に戸惑うばかりだった。
まずは朝から爽ちゃんが起床する時間よりも早く起きて朝食の支度をしながら自分のと爽ちゃんのお弁当を作って…爽ちゃんが起床してくる時間には制服に着替えて学校の準備をする。
普段は本当に普通の女子高生と変わらないのだけど、学校に登校するまでと学校を下校してからは普通の女子高生がしない主婦業をするのが私の日課になっていた。
まあ私は両親の都合で高校入学と同時に結婚しちゃったのだから仕方ないんだけど。
「…爽介さんは嫌いな食べ物ないの?」
奈美ちゃんに突如そう質問されてしまい、私は返答に
爽ちゃんの好き嫌いを知らないわけではないけれど、何が嫌いなのかは微妙なところだった。
爽ちゃんは "嫌い" と口に出すことはあるけれど、決してそれが "食べられない" 程の "嫌い" ではなかったりするのだ。
つまりは "食べられない程嫌いな食べ物" がないということになる。
「爽ちゃんは "これが嫌い!" とか言ったりはするけど、食べられない程の嫌いな食べ物はないよ。」
「嫌いなのに食べられるの?信じられない!」
「私も。でも、その分作り甲斐はあるかも。」
「確かにね。そりゃあ夕飯も何しよか悩むわ。」
「でしょ。」
「…あ、うそっ!もうこんな時間?私18時からバイトなんだった!」
奈美ちゃんが突然そう言葉にしながら慌てたように自分の席に戻って行ったから私も教室に設置されている時計を見ると、時刻は17時10分前になったところだった。
私も夕飯の買い出しと明日以降の買い出しにも行かないといけないから…と慌てて日誌を記入するペースを速めた。
「美亜、ごめん。日誌書き終えるまでは一緒にいたかったんだけど、バイトあるから先に帰るね!」
「ううん、大丈夫だよ。バイト頑張って!」
「ありがとう!じゃあまたねー!」
奈美ちゃんはそれだけ言葉にすると急ぎ足で教室を飛び出して行った。
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