01

見えない気持ち




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奈美ちゃんがいなくなって数分後──。
日誌を記入し終えてから帰り支度をしつつも夕飯の献立を思考している時だった。


「……あれ?岡崎さん?」


突如聞こえた声に驚愕きょうがくして扉の方に目を向けると、そこにいたのは……。


「…藤代君。」


クラスメイトの藤代 宏太ふじしろ こうた君だった。

藤代君とはそんなに接点があるわけじゃないけれど、たまにこうして藤代君から話し掛けて来てくれる。


「もう18時なのにまだ残ってたんだね。」
「あ、うん。日直だったから。」
「そっか。ご苦労さま。」
「ありがとう。…藤代君はどうしたの?」
「俺は…忘れ物しちゃって…。」


藤代君はそう言葉にしながら自分の席に向かい机の中から1冊のノートを取り出した。


「…これ、数学のノート。宿題出てたの忘れてて思い出して慌てて取りに来たんだ。」
「あ、そうなんだ…。」


私はそれ以上なんて返事をしたらいいのかわからず言葉に詰まってしまった。

決して男の子が "苦手" ってわけじゃないんだけど、昔から爽ちゃん以外の男の子とまともに話をしたことがないから接し方とかそういうのがあまりよくわからなかった。


「…岡崎さん、もう帰るの?」
「え、あ、うん…。日誌書き終えたし帰るよ。」
「そっか。」
「う、うん。」


また少し気まずくなってしまって…暫くまたお互い沈黙が続いてしまった。

だけど、ふと "今何時だろう。" という思いが頭をよぎって教室の壁に掛けてある時計を確認した。

その瞬間──私はものすごく焦ってしまい、大慌てで帰り支度を再開した。


「藤代君、ごめん!私、もう帰るから教室閉めちゃうけど…。」
「あ、ごめん、俺も出るよ。」


藤代君と共に教室から出て鍵を閉めてから私がまず向かったのは職員室だった。

それには何故か藤代君もついてきていたのだけど、私は気にも止めず職員室にいる担任の先生の元へ日誌と鍵を預けてから昇降口のほうへ向かった。

昇降口で靴を履き替えてから昇降口を出ようとすると、突然声を掛けられた。


「…岡崎さん、途中まで一緒に帰らない?」


その言葉に吃驚びっくりして声のしたほうに振り向くと、そこにいたのは藤代君だった。

職員室前にいなかったからもう帰ったのだと思っていたのに…。


「藤代君…あ、えっと、私、用事あるから…。」


そう言葉にしながら私は慌てて校門のほうへときびすを返したのだけど…。


「じゃあその用事ある場所までとかでもいいからさ。」


藤代君はそんな言葉と共に一緒に歩いてきた。


「…あ、でも、ここから少し離れてるし…。」
「大丈夫だよ少しくらい。」


私も負けじと言葉を返すも藤代君からは再度、 "一緒に帰ろう。" という言葉が返ってきて益々ますます困惑してしまった。


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