01
見えない気持ち
一──何故、藤代君に一緒に来てもらうことに困惑しているのかというと……私の "用事" が食料品の買い出しだからだ。
だから普通の女子高生とは違う私の "用事" に藤代君と一緒に…というのは凄く困惑することだしクラスメートで私が結婚しているのを知っているのは奈美ちゃんと担任の先生くらいで──結婚指輪も肌身離さず身につけてはいるものの普段はネックレスとして首に提げているからあんまり気付かれることはない。
それにいくらクラスメートとはいえ爽ちゃん以外の異性と自宅の近くまで帰るのには抵抗があるから──。
私が "どうしよう" かと悩みながらも校門の付近まで来た時だった。
――♪♪♪♪♪
軽快なリズムと共に鳴り出したのは私のスマホだった──。
しかもこの着信音は爽ちゃん専用で慌てて鞄からスマホを取り出して画面を見ると、案の定…【着信 爽ちゃん】の文字が表示されていた。
「藤代君、ごめん、電話だから。」
「あ、うん。」
藤代君のそんな返事を聞いてから私は通話ボタンをタップして電話に出た。
「もしもし?」
“もしもし、美亜?“
「うん、どうしたの?」
“…今、学校にいるのか?“
「え?うん、いるよ。校門の近くだけど。」
“…そっか。ならちょうどよかった。俺、今日営業でずっと外に出てたんだけど、さっき会社に電話で仕事の報告したら…そのまま直帰できることになったから今学校の方に向ってるんだよ。“
「え?本当?」
“本当。美亜がもう校門の目の前にいるなら学校の近くまで行くから一緒に帰ろうか。“
「一緒に帰れるの?やったー!場所はこの前のところでいいんだよね?」
“そうだな。そのほうがわかりやすいよな。じゃあそこで待ってるから。“
「うん、すぐ行くね!」
最後に "じゃあまた後で。" という会話を交わし私は通話終了ボタンをタップした。
突然だったとはいえ爽ちゃんと一緒に帰れるなんて何年ぶりだろうか──。
もしかしたら小学校ぶりとかかもしれない。
爽ちゃんと帰れることが嬉しすぎて──。
すぐにでも爽ちゃんに会いたくて──。
気分が
「…岡崎さん、待って!」
そう呼び掛けられて思い出した。
爽ちゃんと帰れることに興奮して一瞬で忘れてしまっていた……ほんの数分前まで藤代君といたことを──。
「…あ、藤代君……。」
「今の電話…誰?」
そう尋ねられてしまい、返事に詰まるも今はまだ本当のことは言えないと思考しながら言葉を
「…あ、えっと、幼馴染み…だよ。社会人なんだけど、仕事が早めに終わったから一緒に帰ろうって。」
"旦那" という言葉を必死で飲み込んで──
何故なら "幼馴染み" というのは嘘ではないけれど、それはほんの数ヶ月前までの話だからである──。
「…あ、そうなんだ。その幼馴染みって男?」
「あ、うん、そうだけど…。」
藤代君が "幼馴染み" が "異性" なのか─聞いてきたことに理解できなかった。
だけど、それは藤代君の次に発せられた言葉で理解できた。
「…そっか。どおりで岡崎さんが嬉しそうに話してたわけだね。」
そう言われてしまい、恥ずかしくなってしまった。
確かに爽ちゃんから一緒に帰れると聞いたときは興奮していたけれど、まさかそれが顔に出るくらいだったとは思いも寄らなかった。
「…"幼馴染み" と一緒に帰るなら無理だね。じゃあ俺は先に帰るよ。またね岡崎さん。」
藤代君のそんな言葉で我に返って慌てて─。
「あ、ごめんね。またね、藤代君。」
そう返事を返すと藤代君は手を振りながら
少しだけ藤代君の後ろ姿を見送った後、私も慌てて校門を出てから爽ちゃんとの待ち合わせ場所へと向った。
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