01

見えない気持ち




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──時刻は午後21時。


イタリア料理のお店を出て再び車に乗り込んで数分後、私が "買い出しをしたい" と言っていたのを爽ちゃんは覚えていてくれたようで夜遅くまで開いているスーパーへと寄ってくれた。

爽ちゃんが駐車場に車を止め、2人で車から降りて店内へと足を運んだ。


「…美亜と買い物なんて初めてでなんか恥ずかしいな。」
「私も同じこと考えてた。でも、楽しい。あ、爽ちゃんなんか食べたい物とかあったら言ってね!」
「うーん、そうだなぁ…。」


私の言葉に爽ちゃんがそう思考し始めた直後のことだった。


「…あれ?爽介?」


前方から爽ちゃんの名を呼ぶ声が聞こえ、爽ちゃんがそちらに目を向けたから私も声の主に目を向けた。


そこにいたのは…。
スーツ姿の男の人だった。


「おー!隼人、久しぶり!」


爽ちゃんの知り合いらしく爽ちゃんは男の人にそう話し掛けた。


「久しぶりだな。つかお前が買い物ってなんか不思議な感じする。爽介、料理出来たっけ?」
「いや、俺は料理できねぇけど…。作ってくれるやつがいるから。」
「え?」


爽ちゃんの言葉に男の人──隼人さんは驚愕きょうがくした後、いまがた気付いたのか私のほうを凝視ぎょうししてきた。


「…え?この子は?」
「俺の嫁。」
「は?…えええぇぇぇえー!?」


爽ちゃんの "嫁" という言葉に更に驚愕したのか店内に響き渡るくらいの声量で隼人さんは声を上げて驚いた。


「うるせぇよ。」
「あ、ごめん。けど、驚くだろ普通に。嫁って…お前いつ結婚したの?」
「今年の4月のアタマくらいかな。」
「え?つい最近じゃん!なんで急に…。」
「まあ色々あってな。あ、美亜。こいつは門倉 隼人かどくら はやとで大学時代のダチだよ。」
「初めまして。岡崎美亜です。」
「あ、初めまして。門倉隼人です。それより、なんで制服なの?」
「美亜はまだ高校生だから。」
「は?高校生?まじかよ!」


それから数分、爽ちゃんと隼人さんの他愛のない会話は続き…私と爽ちゃんの馴れ初めなんかも根掘り葉掘り聞かれてしまった。



「…あ、忘れてた!」
「なんだよ。」
「ほら覚えてねぇか?お前にずっと言い寄ってた女いたじゃん!…早見 沙織はやみ さおりだよ。」


突如、出てきた隼人さんからの女の人の名前。


「…早見沙織…。なんとなく覚えてるけど、そいつがどうかしたか?」
「…俺、最近早見に会ってその時に色々爽介のこと聞かれたんだよな。まあ俺も爽介と暫く連絡とってなかったから "今何してるかは知らない" とは言ったんだけど…。」
「けど、なんだよ。」
「爽介、連絡先変わってないよな?」
「ああ、変わってねぇけど…。」
「早見にしつこく連絡先教えろって言われて……断りきれなくて…。」
「は?まさか教えたのか?」
「…ごめん。」
「…まじかよ。連絡先教えたのいつだよ?」
「…3日前くらいだったかな。本当にごめん。爽介が結婚してるのも知らなかったし…つい。本当にごめん。」
「まあ俺も誰にも結婚したこと言ってなかったし仕方ないけど、早見は…面倒だな。」


爽ちゃんと隼人さんの会話に私は動揺した。

爽ちゃんが大学時代の時の話は私にはわからないことだらけだから。

それに爽ちゃんの大学時代の女の話なんて…
尚更私には酷な内容だった。



──私は子供の頃から爽ちゃんしか見てなかったけれど、爽ちゃんは違うんだよね?


そう思うと心臓が壊れそうなくらい痛くなってしまった。


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