01

見えない気持ち




「まあ俺が教えたのは連絡先くらいだし大丈夫だとは思うけど、早見だからちょっと危険な感じはするよな。」
「…アパートは知らないはずだけど、まあ用心はしておくよ。」
「あぁ、そうしてくれ。まじごめんな。」
「教えてしまったのはもう仕方ねぇしいいよ。」
「それよりまた飲みに行こうぜ。お互い社会人になってからは行けてなかったし。」
「そうだな。また予定合わせて行くか。」
「おう!また連絡するわ!」

そう言って隼人さんは爽ちゃんに "じゃあまた。"と告げ私には軽く頭を下げるとお店から出て行った。

そんな隼人さんの後ろ姿を暫しの間、見送ってから爽ちゃんは私の方に向くと言葉をつむいだ。


「美亜、ごめんな。久しぶりに会ったから盛り上がっちまった。」
「いいよ。仲良しなんだね。」
「あぁ。隼人とは大学4年間ずっと一緒だったからな。親友みたいなもんかな。」
「そうなんだね。」


爽ちゃんにも仲良しの友達がいるのは当たり前で爽ちゃんが友達と楽しく会話をする姿を見るのは微笑ましいことで──。

隼人さんとは "本当に仲良しなんだな。" って爽ちゃんの横顔を見ていて思ったんだ。

だけど、大学時代の爽ちゃんを知らない私には少し─いやかなり複雑な気持ちだった。

それに隼人さんとの会話で出てきた女の人も気になっていたから。


「…美亜、どうした?」


私の急な変化に気付いた爽ちゃんがそう尋ねてきた。


「…誰…?」
「は?」
「誰なの?…"早見沙織" って…。」

一度気になったら聞かずにはいられなくて私はそう呟いていた。


「…あ〜。"早見沙織" か…。別に。ただちょっと厄介な女だよ。」
「…元カノなんだよね?」
「は?」


爽ちゃんはもう社会人で過去に彼女がいたっておかしくないと思う。

だから大学生とはいえ、付き合っていた女の人だっているはず…。


「…え、元カノじゃないの? "早見沙織" って人…。」
「はあ?元カノなわけねぇだろ。俺、さっき言っただろ? "厄介な女" だって。」
「…どういうこと?」


"元カノじゃない。"
"厄介な女。"


言葉の意味が理解できなかった。


「……"早見沙織" は…。俺が何度断っても告白してきたり遊びに誘って来るような面倒な女だよ。」
「…え、じゃあ…。」
「元カノじゃない。あんな厄介な女が元カノなんて冗談じゃねぇよ。」
「でも、隼人さんが連絡先教えたって…。」
「…気の強い女だったからな。隼人も逆らえなかったんだろ。」


"気の強い女。"


その言葉がヤケに私の耳に響いた。


きっと、いや、間違いなく──私とは正反対の性格の女の人だから。



「…連絡くるのかなー。」
「まあ連絡きても適当にあしらうから。美亜は気にしなくて大丈夫だよ。」
「…うん…。」


爽ちゃんにそう言われて返事はしたものの内心では不安な気持ちが消えることはなかった。




























──そして、この "不安な気持ち" が後日―。

現実のものになるとは………この時まだ私は予想もしていなかった───。

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