何故かあの日からよく御幸に話かけられる
最初はお菓子目的だと思ったけど甘いものが得意ではない御幸は僕が甘いお菓子を持ってくると早々辞退して‥でも意味もなくずっとしゃべってる‥時々、リクエストもされるけど‥
そして御幸がくると‥凄味のある顔で近づいてくる倉持‥
「おい、御幸テメー 何双葉に からんでやがる」
「えー何のこと?僕は双葉くんとお話してただけたけど?」
御幸は倉持の睨みなど怖くないのかヘラヘラ笑い倉持を揶揄う、それに倉持の眉の間にシワが増える
「どー見てもメシたかってんだろ、その手に持ってんのはなんだ」
「甘さ控えめのプリン‥さいこーにおいしい」
「‥‥‥」
「‥」
この頃ダイエット中の母のため(僕の料理が美味しすぎるせいって怒られた)糖分控えめなスイーツを作ってるのを御幸が見逃がさずデザートを少し多めに作ってる‥美味しそうに食べてくれるのは僕としても嬉しいんだけど‥怒りが爆発しそうな倉持に見せつけるかのようにプリンを食べる御幸に呆れる‥
「倉持‥くんも、いる?」
「‥‥‥いいのか‥」
なんだか流れでもう一つのプリンを倉持に差し出したら遠慮がちにプリンを受け取った‥それは御幸にとって爆笑するほど面白かったらしい‥
「笑うんじゃねー‼︎御幸‼︎」
「アッハハハッ‼︎これが笑わずにいられるかよ‼︎」
御幸の胸ぐらを掴み倉持は極悪な顔で睨むが頬が赤いので怖さ半減‥本当に仲いいなーこの2人
その時は2人のじゃれあいをのほほんと見ていた僕だが‥これがきっかけで僕に絡んでた御幸ともう1人倉持も参加することになる‥
「‥うまっ⁉︎なんだコレ‥今まで食べてきたプリンの中で1番うめーじゃねーか‼︎」
「わかるー」
「‥‥褒めすぎだよ‥」
でも、嬉しい…
「御幸っていつもそのボート見てるよね」
昼休み、売店組である御幸と倉持と一緒に教室でご飯を食べることが恒例に‥デザートは時々‥いや結構頻繁に作ってしまう‥2人が美味しそうに食べてくれるから‥つい‥
「スコアブックね」
「スコア‥ブック?」
よく、御幸は器用に昼ごはんのパンを片手で食べながら細かく書いてある理解出来ない文字を真剣に見ている
「野球の試合を記録するもんだよ、スコア見ればピッチャーが何投げて何打たれたかわかんだよ」
「へー!そんな事が書いてあるんだ」
御幸は名前だけ言ってまたスコアブックに夢中になったから代わりに倉持が教えてくれた
見た目がヤンキーで近づきにくい倉持だが見た目と反して優しく以外と世話焼き‥そして甘いもの好き
「今の野球って大変だね」
「W今のW‥?」
「あ‥ううん僕は野球詳しくないけど確か父親が野球好きでよく話してたのを思い出して‥父、熱血タイプだから‥」
「ふーん」
冷静に‥冷静に誤魔化せたと思う‥
ごめん父‥野球そこまで好きじゃないのに嘘ついて‥本当に野球が好きだったのは前世での彼女の子供の1人、見るのもするのも大好きな野球少年‥すべて熱血で乗り越えようとする野球馬鹿だった
「(‥危ない‥つい彼女の記憶を思い出して喋っちゃうの気をつけないと‥)」
この“クセ”はもちろん前世を思いだしてから度々あり、人によっては気味悪がられるので気をつけてはいるんだけど‥
『母さん!今日の試合 絶対見に来てくれよ‼︎』
まったく野球に詳しくないのに試合の度に彼女を誘っていた息子が可愛くてよく観戦してた‥野球か‥
「‥見てみたいな‥御幸と倉持が出てる試合」
「あ?」
「マジ?」
懐かしく思い野球に興味が湧いた‥元々部室から近い野球の練習をオーブンの待ち時間に遠くから覗いたりしてたんだけど‥
「うん、御幸が昼休みまで熱入れるほどの野球見てみたいなって」
「‥あーこいつ見た目と違って野球馬鹿だからなー」
「‥‥」
青道は野球部の名門校でよく練習試合はするみたいだが、まだ1年の2人はレギュラーまでほぼ遠く‥試合に出れるかわからないらしい‥と倉持から野球部情報を聞いてる中‥御幸はスコアブックは見ずに何か真剣に考えてる
「‥双葉の部活って水曜と土曜だよな?」
「?‥うんそーだよ」
「今週の土曜って何作んの?」
「からあげパーティーをするんだ、色んな味のからあげを作って、みんなで何がナンバー1か決めようって話に」
「‥うまそー」
黙ってた御幸が急に話し出したと思ったら野球と関係ない僕の料理部の話‥倉持がよだれ垂らしてる
「確か土曜って練習試合あったよな」
「あ?‥あぁ、でも俺らが出ることはなさそーだな」
「千隼ちゃん、お願いがあんだけど」
いつもは苗字呼びなのに‥わざわざ下の名前でしかも“ちゃん”付け‥ニタニタと笑うその笑顔‥すべてが胡散臭い御幸のお願いはなんか受け入れ難い‥倉持もすごい睨みで御幸を見てるし‥
「‥なに?」
「土曜の昼にからあげの差し入れが欲しいんだけど」
「‥へ?」
「‥‥おい、それ図々しくないか?」
なに変なことお願いされるかと思えば…でも御幸のお願いに倉持がストップをかける
「だってよ倉持‥お前も思ってんだろ休日に出るおにぎりだけじゃ味気ないって」
「ぐっ‥」
「おにぎり‥」
強豪校だからこその大変さなのだろう‥野球部には寮があり、部員人数が多くても休日のご飯は寮内の食堂でなんとかなるのだが昼から夜にかけておやつ代わりにおにぎりが出る
「おにぎりはマネージャーが握ってくれてんだけど‥先輩マネ1人と俺達タメのマネが2人で3人しかいねーからおにぎりのレパートリーが少ないんだよ」
「3人だけで‥大変だね‥」
野球部の人数が100人近くいるのは知っている‥それを3人のマネで雑用の他におにぎり作りって‥
「キツイ練習の後に毎回同じ具のおにぎり食うの地獄でさ〜だけど1年のペーペーが文句言えるわけねーしマネが大変なことも知ってるからさー」
「‥‥‥」
御幸のおにぎり事情に倉持も思うところはあるのか最初のストップ以外口を出さなくなった‥ん〜
「僕としては差し入れを持って行くのは全然構わないよ、でも部活の中には差し入れ禁止な部もあるんじゃない?」
「そこは全然大丈夫、OBから差し入れとかしょっちゅう貰うから」
「‥無理しなくていーんだぜ双葉、これはただのワガママだかんな」
僕の心配事にいち早く解決する御幸と反して倉持が優しく僕に拒否権を与えてくれる
「ちょっとそれで断られたらどーすんのよ俺のナイスアイディアが台無し」
「何がナイスアイディアだよ断られとけ」
楽しそうにじゃれあってる2人を見ながら決めた、今おちゃらけてる御幸だけどマネに頼めないほどマネが忙しいって分かってて僕に言ってきたんだし‥
「んーいいよ‥
からあげ以外にも何個かおにぎりのおかず作ってくるよ」
「え、マジ?ちょー助かる‼︎」
「マジか⁉︎いいのかよ双葉‼︎」
「うん」
この差し入れが始まりで
僕と野球部の関係が深いものになる
□■□■□■
「おぉっ‼︎やべぇ‥めっちゃ美味そう‼︎」
「今すぐ食いてぇ!鬼練でいつも食欲ねぇのに‼︎」
そこまで喜んでくれるなら
作った甲斐があったなぁ‥
約束の土曜日、部活では予定通り‥というか張り切りすぎちゃって色んなからあげを揚げた‥まずは小麦粉か片栗粉どちらかで揚げるか話し合って、結局両方とも揚げることになり2つ合わせたやつも試してみようってなった…そして次は味付けで王道の醤油味に塩‥カレー味やピリ辛、甘酢に加えソースも作りハニーマスタードやタルタル、明太マヨと作った後に大量のからあげを見てみんなで後悔した‥
残ってしまったからあげは各自お持ち帰りで僕は少し多めにもらえて助かった御幸達のおかずにと狙ってたから
「(‥結局一位は決められなかったな〜)」
からあげは作りすぎてしまったけどパーティーは楽しかったしどれも美味しくて‥美味しすぎて一位を決めるのは無理だった
だいたい午前中に終わる料理部と違って野球部は午後もある、僕は一軍の練習試合‥ではなく二軍の練習試合を見る‥
「(一年で二軍ってすごいことだと思うけど‥)」
御幸と倉持が二軍の練習試合に来いと言う時、若干悔しそうだった‥試合に出れるかも分かんないって言ってたのに‥2人共野球馬鹿なのは知ってる
「‥すごい‥」
試合に間に合わなくて途中から観戦になってしまったが、まだどちらも無得点のままだった‥でも後半から倉持(足めっちゃ速い)や御幸(キャッチャーだった)がバットに球が当たる当たる‥
勝負はもちろん勝ち‥野球に詳しくない僕でも見てて本当に楽しかった試合だった
「双葉ー!」
試合が終わって事前に約束してた場所で御幸達を待ってたらすぐに2人とも来た‥
「お疲れ様ー試合途中から見てたけどすごくカッコよかったよ」
「さんきゅー」
「こっちからも見えてたぜ双葉1人だけ浮いてたからすぐ分かった」
確かに観覧席には学生がいなかった‥何故か年上ばかりだった、あんまり気にならなかったけど目立ってたかな‥?
「あ!休憩って短いよね早く渡しちゃうね」
「そんな急がなくていーぞ監督の許可は取ってある」
「‥反対に待たせるなって追い出されたよなー」
あのすっごく怖そうな監督さんが許してくれるなんて‥案外優しい監督さんかも‥?
「それならよかった‥少し多めに持ってきちゃって相談したかったから‥」
お弁当箱‥ではなく使い捨ての紙食器に入れてきた、これなら食べたら捨てればいいだけだからお互い気をつかわなくてすむ
「おにぎりって言ってたから箸を使わずに食べれるおかずを選んだつもりだけど‥」
「「‥‥‥」」
今回のからあげパーティーで残ってしまった大量のからあげと定番の卵焼き、シャケ、肉団子(ミートボールじゃ手が汚れるから)それにちくわの磯辺揚げに中には大葉と梅が入ったとり天…後運動部だから食べるれると思って大量につくった我が家の大人気メニューのチーズ入りコロッケに…
「あとさっぱり食べれるように煮卵と浅漬けを‥」
紙じゃなくプラスティックに入った(本当は全部紙食器にしたかったけどね)煮卵と串に刺さったきゅうりとトマトの浅漬けを取り出す‥
「‥他の部員さんにあげるかと思っていっぱい用意しちゃったけど‥多すぎたかな?」
「「‥‥」」
「?」
少し場所を移動して中庭にあるテーブルに料理を並べたら何故か2人が固まったまま‥
「‥‥‥おぉっ‼︎やべぇ‥めっちゃ美味そう‼︎」
「今すぐ食いてぇ!鬼練でいつも食欲ねぇのに‼︎」
「⁉︎」
急に大声を出す2人に驚く‥目を輝かせて興奮してる姿を見るに喜んではくれてるみたい‥
「予想以上すぎてヤバいんですけど」
「‥これ全部もらっていいのか⁉︎」
「全部⁉︎」
喜んでくれて嬉しいけど次はこっちが驚いた‥今回用意したおかず10人分は超えてると思うからそれを全部欲しいとはさすがに言わないと考えてた
「僕は全然大丈夫だけど‥食べきれるの?」
「よゆーだろ」
「俺ら2人でも食べれそうだけど‥こんな美味そーなの目の前にして先輩達は黙ってねーだろうしな」
「‥‥」
さっきから会話の中、暇さえあれば美味そう、美味そうと言ってくれる御幸と倉持‥
うれしーな
大いに喜んでる2人にお弁当を預けて僕は帰宅した‥2人の話ではこの後練習試合はなく、地味な練習で見ても楽しくないから(‥練習はあるんだ‥)帰った方がいいって言われたからだ
「‥楽しかったな‥」
今まで…前世の記憶も含めて家族以外に料理を振る舞った事が少なくて…人にご飯を作るってこんなに嬉しくて楽しいことなんだ‥
「‥」
また別の機会があったら作りたいな‥と幸せな感情に包まれた僕は夜ご飯張り切りすぎて机に溢れんばかりの料理を作って両親を驚かせてしまった
□■□■□■
「え」
また別の機会に‥と思った土曜、そしてすぐの月曜、御幸と倉持は朝練でいつもホームルームギリギリな2人がその日は早くに教室についたから僕は『おはよー』『こんなに早いなんて珍しいねー』と声かけたら2人がバックを机に置くことなく僕に頭を下げた‥ん?
「いや〜巻き込んでごめん!」
「ちゃっんと謝れ御幸‼︎本当にすまん‼︎」
「‥‥どうしたの?2人共‥」
クラスの目もあるから謝る2人を止めて事情を聞く‥原因はやっぱり土曜日の差し入れみたいで‥
「双葉の弁当があまりにも美味すぎてさ〜」
「‥」
「からあげ、とり天もヤバかったが煮卵と浅漬けは練習で疲れて食欲ねーのにラクショーで食えた」
「チーズコロッケも良かったよなー最初食べてまさかチーズ入ってると思わなかったからマジ感動したもん」
「‥‥」
事情を聞いてるんだけど‥差し入れの話で盛り上がる2人‥褒めてくれて嬉しいけど恥ずかしいな‥
「もう分かったから‥なんで僕に謝罪?」
「‥あー‥実は弁当の事、隠すつもりはなかったけどなー‥でもヤバい先輩達にバレたっていうか‥勘違いされたというか‥」
「お前が目つけられてんのが悪りーんだろ‼︎」
「???」
説明を求めてるのに御幸ははっきり言わないし、倉持はそんな御幸に怒ってばかり‥まったく理解できない
「野球部に差し入れって珍しくないのに双葉の弁当本当美味くてさ〜他人の差し入れに興味ない先輩まで目つけられてさ」
「差し入れってそんなにもらうの?」
「多いな俺たちみたいに個人でもらう人もいるし」
野球部が人気なのは知ってたけどそんなに差し入れもらうんだ…差し入れ禁止な部もあるのに以外と自由なんだ
「でもそれなら問題ないと思うんだけど‥」
「‥いや、問題大アリだ‥」
「あっはは〜あんな手の凝った差し入れ なかなか見ないからな、みんな興味持っちゃって〜なんか知らない内に俺の彼女説が浮上しちゃって‥
それで昼休み連れてこいって先輩に命令されてんだよねー」
「‥‥‥‥え」
予想を遥かに超える御幸の発言に僕は理解できなかった‥