「‥本当に僕も行かなきゃダメなの?」
「当然でしょ」
「御幸お前は黙ってろ‥すまん、多分双葉が来るまでしつこいと思う‥あの人達なら教室まで来る」
「…」
はっきり言って‥怖い
運動部の先輩と関わったことないのに
それに男の先輩だし‥
‥怒られたりするんだろうか‥
□■□■□■
朝、御幸と倉持に謝られて何度も頼まれた‥本当はイヤだ心の準備出来ずに今日の昼に会うなんて急すぎるから‥でも教室まで来ると言われると‥仕方なく承諾した‥こう言う時の授業はすぐに終わってもう昼になり中庭に連れて行かれる、弁当片手に‥
「あ、どうしよう‥今日のおやつ3つしかない‥」
「えっ」
「‥ちなみに何のおやつ?」
「プリンだけど‥」
前日が休日だったのでおやつを用意してたのを思い出した、事前に聞いておけば人数分用意できたのに‥と文句言おうと思ったら僕よりも顔色悪くなる2人‥
「‥よりによってプリンかよ‥」
「‥‥取り敢えずこんな時のために俺たち連絡先交換しとかね?」
現実逃避なのか御幸の誘いに倉持も怒ることなく僕らは連絡先を交換した‥でも確かに今まで毎日学校で会ってたから連絡交換する必要なかったから、いい機会なのかも
「‥初めまして‥御幸と倉持と同じクラスの双葉 千隼です‥」
「だから言ってんじゃないですかー双葉は男だって」
「先輩達全然信じてくれないんだから〜」
自己紹介したのに野球部の先輩方4人は僕の弁当を凝視してる‥普通なら挨拶する前に弁当は開けないけど御幸と倉持に強制的に開けられた、そしたら先輩方は夢中で見てくる‥僕はその光景が異様でもう帰りたいよ‥
「‥まさか本当に男が作ってたんだ」
「信じられるわけないだろ!あんな手の込んだ美味そーなメシ、男が作れるなんて想像出来るか‼︎」
ピンクの髪の人がニコニコしていて、目つきの悪い先輩が怒鳴る‥正反対の反応にビクビクする‥先輩と言っても3年じゃなくて2年の先輩らしく‥だけど一つ年上ってだけなのに、なんか圧が凄い‥怖い‥
「本当にこの前の差し入れお前が作ってんのか?親じゃねーのか⁉︎」
「どんだけ信じてないんっすか純さん」
「‥両親は共働きで家事は僕が小さい頃からしてましたから‥」
今の時代男が家庭料理するのは変なことじゃないはず‥怖いけど何とか返事すれば舌打ちされる‥ひぇ‥
「チッ!面白くねーな」
「なーんだ1年が浮ついてるならレギュラー取れないようにしてやろうかと思ったのに」
すっごく目つきが倉持並に怖い人とピンク髪が特徴の先輩にもの凄く毒をはかれてるけど御幸はいつも通りニコニコ笑ってる‥それも凄い
「‥」
「‥‥、だが女性だろうと男性だろうと、無理に連れて来てしまったな、我々の身勝手な頼みに付き合わせてすまなかった‥申し訳ない」
「‥うがっ」
短髪の真面目そうな先輩が見た目通り丁寧に謝ってくれた‥その隣に座ってる身体がデカい先輩も‥言ってはないが頭を下げてくれた‥
「‥え‥あの‥」
「俺もあの絶品なとり天を作った人に興味があり、つい純達のノリに乗ってしまった」
「は‥はぁ‥」
「今日の弁当も美味しそうだ‥
失礼、俺は2年の結城 哲也だ、いつも後輩が世話になっている」
「‥‥」
「おい哲、天然炸裂すんな後輩がついていけてねーぞ」
僕が返事に困ってるのに御幸と倉持からの救助はなく(御幸は楽しんでる、絶対)結城先輩から何故か自己紹介が始まったピンクの人が小湊 亮介先輩、目つきの‥悪い人が伊佐敷 純先輩、ずっと無口の大柄な人が増子 透先輩‥
自己紹介が終わったところで昼食に‥僕だけ1人野球部じゃないけどいいのかな?って疑問は残るけどこの個性的なメンバーの中で帰りますとも言えず‥殆どが購買組の中、お弁当を食べる
「双葉は料理部に入っているのか‥部活中によくいい匂いがして我が部員達は悲鳴をあげていたな」
「あ、御幸からも聞いたことがあります」
「家でも料理してんだろ?学校にまできてする必要あんのか?」
僕が料理部に入った理由が真面目に分からない伊佐敷先輩からの急な質問に僕は自信を持って答える
「料理するのが好きって理由で入部したんですけど‥今は部員みんなで料理するのが楽しくて‥それに時々、先生方にお裾分けする際『美味しい』って言って貰えて嬉しいんです」
「へぇ〜そんなもんか?」
僕や料理部メンバーには共感を得られる回答だったと思うけど、運動部員達には理解不能なのか‥みんな不思議そうな顔してる
「‥‥」
「‥こ‥これは‥」
そして最大の問題がやってきたらしい‥僕としては大した事ないんだけど‥御幸達や先輩達の顔色を見てこれが只事じゃないって分かる
「‥すみません‥いつも3人分しか持って来てなかったので‥」
僕を含めて7人に囲まれた3つのプリン‥
「‥ねぇ一年‥もしかして“いつも”お昼にこーんな美味しそうなスイーツが食べれたの?」
「いやいや毎日なんて千隼に悪いですから“時々”ですよー」
「でも“時々”は食ってんだろ」
「それでも双葉は“俺達”に作ってきたんでー、すみませーん」
皆、3つのプリンに目線を固定しながら、何やら小湊先輩と伊佐敷先輩からの攻撃が始まり、御幸が全て笑顔でかわす‥倉持は小湊先輩をチラチラと気にして何も言えないみたい
「御幸お前‥甘いもん食べねーじゃん、譲れ」
「双葉を甘く見ちゃダメですよ先輩、甘さ控えで甘党じゃない人でもサイコーに美味しんですよ」
「‥サイコーのプリン‼︎」
確かに甘さ控えめだけど‥お店レベルじゃない普通のプリンにそこまでハードル上げないでほしいよ‥御幸‥増子先輩勘違いしてるよ‥
「待て」
『‼︎』
何となく思ったけど、結城先輩はキャプテンなのかな?たった一言で戦々恐々としていた皆が止まった
「今回は俺らが無理に呼び出したんだ‥その上プリンまで奪ったらダメだ‥食べたいだろうが、そのプリンは御幸達のだ」
『‥』
結城先輩は先輩らしく常識的に伊佐敷先輩達を止めたんだけど‥その強い瞳はプリンに注がれてる
「(‥食べたいんだな先輩も‥)」
我慢してるのがバレバレな結城先輩に言葉無くして気まずそーな空気の中、僕だけが先輩の態度に何故か和んでしまった
「‥あの、今日は無理ですけど、都合が合う時に先輩方のプリン作って来てもいいですか?」
「いいのか⁉︎」
「はい、ただの普通のプリンなんですけど、それでよろしければ‥」
「うっうがっ‼︎」
作るのは別にいいけど、期待しないで欲しいと言ったつもりなのにきっと通じてない‥そして意外に1番の反応を見せてるのが増子先輩だった寡黙な先輩だと思ったけどプリン好きなのかな?
「だったらさ‥
プリンのついでにお願いがあるんだけど」
「‥え」
静かだった小湊先輩からの急なお願いは‥
満面の笑みで毒を吐くよりも怖いと感じだ僕は
おかしいかな‥?
□■□■□■
「‥よし」
僕の聖地である、
アイランドキッチン‥
中学に上がる時に家を買うと両親が決意。その行動力は凄まじく僕が家事をするから僕が納得いく家を探し出し購入‥特にキッチンにはこだわりがあって前の家では一人暮らし用のキッチンだったのに設備が整ってるアイランドキッチンになった‥お陰で料理のレパートリーは増えて両親は大喜び‥1番の目的はそれだったのかも‥
鶏肉のトマト煮にジェノベーゼの冷製パスタそれにポテトサラダ‥両親の夜ご飯を作って振る舞った後に明日の用意をする
「‥こんなにたくさん‥大丈夫かな‥」
テーブルに埋め尽くされた明日持って行くもの‥料理するのは大好きだから無我夢中で作っちゃったけど‥これは‥
「運動部の差し入れって感じじゃないのに‥いいのかな‥
プリンで‥」
大量のプリンを目の前に僕は不安な気持ちが押し寄せてきて‥数日前の先輩達の言葉を思い出す
□■□■□■
小湊先輩にお願いされた‥?ことは野球部の合宿に差し入れを持ってきてくれないか‥との事で‥
「‥この間みたいにお弁当ってことですか?」
「いや、プリンだけでいいよ」
「プリン‼︎」
小湊先輩の頼まれごとに畏れていたけど意外にも普通の頼み事だった‥1番反応してたのは増子先輩だけど‥やっぱりプリンが好きなんだ
「合宿っていつあるの?どこで?」
「確か再来週じゃなかったけ」
「青道は設備が整ってるから山やら海に行かねーよ。ここ(学校)で朝から夜まで野球」
「ひぇ〜」
野球部の合宿について倉持と御幸に聞けば運動部の解答に悲鳴しか出ない
「無理なら遠慮なく断ってくれていい」
「‥えっと‥学校に差し入れなら大丈夫だと思います。プリンはここにいる人数分でいいですか?」
「20人分」
ん?
結城先輩に気を遣われたが遠出じゃないならプリンぐらい差し入れできる‥んだけど‥
「20人分⁉︎」
「おいおい!小湊‼︎流石にそれは無茶だろ‼︎」
あまりの数に頼まれた僕よりみんなが驚いて伊佐敷先輩が止める
「俺だって無茶なお願いしてるって分かってるよ
でもきっと数が少なかったら3年のレギュラー陣から取られるよ」
『⁉︎』
運動部じゃない僕には分かんないけど小湊先輩の言うことにみんな言い返さない‥本当に取られるんだ
でも20人分か‥今まで多くても5個ぐらいしか作ったことないのに‥それに‥
「あの‥流石に20人は‥言い難いですけど‥」
「材料費のことだね」
「っ!」
「まぁ大丈夫、僕だって考えなしに提案なんてしないから‥」
『?』
□■□■□■
それから僕の知らないところでただの差し入れが小湊先輩により大ごとになった
「双葉ー!」
「あ‥って凄い量だねっ⁉︎」
まず、結果からして小湊先輩から頼まれた合宿への差し入れは日曜日、合宿の最終日に勝手に決まってた、その日は練習試合があって他の強豪校との試合をついでに見ていきなよって言ってくれた
だから金曜の学校帰りに御幸と倉持が材料を家まで運んでくれることになり(小湊先輩に命令されてた‥)校門で待っていたら‥
「‥本当にこんなに大量の牛乳と卵もらっていいの?」
「平気じゃね?まだ大量に残ってたから」
「なんか泣いて喜んでたぞ」
「‥そうなんだ‥」
卵と牛乳が大量を目の前にして僕は小湊先輩の凄さを思い知る‥本当にこれなら20人分のプリン作れる‥
どうやってこんな卵と牛乳を用意できたかと僕の家まで運んでもらう間 御幸から詳しく話を聞いた
青道の野球部には寮があって、もちろん学校とは違う食堂も寮の中にある寮生の朝と夜ご飯を作っている食堂のご飯の量は凄まじく多いらしい(最低でもご飯山盛り3杯ってしぬぅ‥)
食事は栄養バランスの考えられた美味しいご飯らしいのだがある事のせいでそれが偏る時期があるらしい‥
OBによる差し入れ‥
運動部とはかけ離れた生活しかしてなかった僕には未知の世界だけど青道は特に野球部強豪校なだけあってOBの差し入れの量がハンパないらしい‥でも日頃はスポドリとかお米などが支流なのだが時々少し変わった差し入れもある‥らしい
野菜の差し入れなら野菜中心なメニューになったり、野菜嫌いには地獄の日々らしく‥反対にお肉パターンの時は喜ばられる‥だがそんな事は本当に時々らしい‥食堂の人達が上手く調理してバランス調整してるんだって
でも数日前新たにOBからの差し入れが来た‥とてつもない量の‥
「‥それがこの卵と牛乳なんだ‥」
「確かにこの頃卵料理多いなーとは思ったけどそれが差し入れのせいってよく気づくよな」
「オレ気にしたことねぇー」
日持ちしない卵と牛乳の処理はそれはもう大変だと思う‥食材を無駄にしないため‥尚且つ部員達が味に飽きないように試行錯誤して‥2人が気づいてないのはその努力あってこそだ‥うぅ‥尊敬する‥
目ざとい小湊先輩はすぐに分けてもらえないか交渉したら2つ返事でOKをもらい、それに顧問の許可もちゃんと取って抜かりは無い‥
「‥なんか‥僕の方が緊張してきた‥ただのプリンなのに‥」
こんなに大ごとになるなんて思ってなかったから‥僕の普通のプリンで大丈夫か心配になってきた
「平気だろ双葉のプリン店レベルだし」
「いやいや〜どうかなー味にうるさい先輩がいるかも‥」
不安な僕に倉持は励ましてくれたけど御幸は意地悪顔して意地悪こと言ってくる‥倉持が凶悪な顔で御幸を睨む
「不安を煽ること言うんじゃねーよ」
「えぇー優しい言葉だけ言う無責任な男に俺はなりたくねーな」
「んだとテメェ喧嘩売ってんのか」
なんだかわちゃわちゃする2人を見てたら不安もすっ飛んでいった、一生懸命頑張って作るけどダメだったら2人にいっぱい食べてもらお
「あ、ここだよ僕の家」
「へぇー本当に学校から近いんだ」
「でけー」
数十分もしないで我が家に着いた、2人の我が家の感想に笑いながら荷物を玄関まで運んでもらう
「‥おじゃましまーす‥親御さんいないんだ‥」
「うん、2人とも仕事人間だから」
家から近いと言っても20人分の材料は僕にとっては大荷物だから2人にお茶ぐらい誘おうと思ったけどこれから部活だから早く戻らなきゃいけないらしい(部活馬鹿な2人だ)
「じゃあちょっと待ってて」
「「?」」
すぐにでも帰りたそうな2人を止めてキッチンでいつも常備してるお菓子を2つ取って戻る
「これ、両親の軽食分に作ってるお菓子なんだけど今日のお礼」
「いいのか?」
「まだいっぱいあるから大丈夫」
簡素にラッピングされた今日のお菓子はクッキー、残業になった時の両親のために作ってるお菓子
「親御さんってそんなに仕事忙しくて帰ってきてないの?」
一般的より少し大きい一軒家は確かに僕1人じゃシンとして寂しい空気が流れる御幸はその空気を感じ取ったみたい
「大丈夫だよ残業がある日でも夜ご飯食べに一度絶対帰って来るんだ」
「ん?」
「なんだか僕のご飯を食べないと元気出ないって言ってどんなに忙しくても絶対帰って来るんだー食べた後に残業しに行ったりしておかしいよね出張だとご飯食べれないから行きたくないって子供みたいに駄々こねることもあったり‥」
「‥あーなるほど?」
「‥なんかスゲーな‥」
冷えきった家族じゃないって言いたかったのに家族の羞恥を曝け出してしまった‥やっぱり異常だよね
「じゃあ日曜、荷物が多かったら俺ら手伝いに来るから」
「先輩命令だから遠慮せず頼っていいぜ」
「ありがとう」
“あらー頼っていいぜなんて男らしいこと” “うっせーお前も同じこと言ってんだろーが‼︎”‥と御幸に揶揄われ怒る倉持、2人が学校へ帰って行くのを見送って大量にある材料を冷蔵庫の中へ‥出張の際、地元の食材を山ほど買ってくる両親のせいで冷蔵庫は業者並みにデカいからラクラクに入った
「わぁ‥人数分のコップまである‥正直ありがたい‥」
卵と牛乳‥それに砂糖まで入っていたのにビックリしたのにコップまで用意されてる‥20人分のプリンカップないから僕買おうと思ってたのに‥小湊先輩が用意したのかな‥用意周到すぎる‥
「‥よし、頑張ろ‥」
いつの間にか緊張のドキドキが‥
好奇心のドキドキへと変わっていた