心臓にすら爪を立て



しくり、痛む傷


葵side

あれから一日が立った
結局都佑を口説く事は出来なかった

させてくれなかったのだ


ただ傍に居てほしいと言われて
すっと眠った私の前でこの人なら、と
泣きそうな声でいいや違うと
かなり高いソプラノの優しい声が聞こえる

嗚呼、この声はとても気持ちがいい
三郎達等に渡すには惜しい程


『駄目だよ私。この人と言ってみーんな
私から離れたじゃないか。この人だって・・
お母さんと同じだ。そうだそうだきっとそうだ』

そう言って涙を押し殺すように泣く都佑を
今すぐに抱きしめると流石にこのチャンスも
水に流れるのでじっと泣いて眠るまで待つ

前世の記憶を取り戻した都佑の眼は
とてもじゃないけど言葉に出来ない程の
暗いでも優しい色を持っていた。

その優しい眼の色は純粋すぎる程の眼で
都佑本人は上手く騙せていると思っているらしいが
私や八雲さんからは騙せれる事は出来ない。


その眼をする人は必ず懺悔をしてずっと苦しんでいる人だから



『嗚呼、いっそこの人に全てを話してしまえば
どれ程楽なんだろう、きっと楽しいだろう
でも駄目だよ私。この記憶もこの想いも
人に話すは良いが絶対に消したり水に流すような
事にだけはしては駄目なんだ。』


何故だい
どうして其処までも自分を追い込むんだい
君は十分に生きた筈ではないのか
そこで私は失態を犯した


自然と目が疲れて開けてしまったのだ
うーん、何故開けた私よ


『・・・・』

葵「・・すまん、盗み聞きする様な事は」

『・・聞いてくれる?』

嗚呼、勿論

私は、俺はそう言って都佑の頭をゆっくりとさすると
都佑は驚いた顔をした後直ぐに微笑んだ

その笑顔は見た事もなく
本当に嬉しそうに笑って安堵していた






















都佑side

全てを話した

両親の離婚で私が本当に恋焦がれている事を
他人に沢山迷惑をかけられて泣いたことや色んな事

確かに生きていた事を言うと
葵は「ありがとう」と言ってくれた


『あおちゃん・・・』

葵「口説かせてはくれないが、私の事を見てくれるようになって、ありがとう」

そうすりすりと取られた手に頬を摺り寄せて来る
私は少し恥ずかしくなって後ろに下がろうとするが
直ぐに葵が手を引いてそのまま葵の身体の中に納まってしまう


『!?!?!!?』

葵「ふふ、都佑は本当に可愛いね。
やわっこいし、癒されるし」

そう言う葵に対して私はバッと顔を上げて口をパクパクして
困っていると葵は「誰にも言わないよ」と空いていた手で
人差し指を作り口に当てた



葵「だぁれも知らない現実は
私と君の2人の秘密。」

『・・・いいの?』

葵「寧ろこーんな都佑なんて見た事なくてね
君が本当に純粋無垢で優しい幼い形を持っているとは
この学園で私だけとは嬉しいじゃないか」

『なんか嫌な気がしてきたから
全部さらけ出そうかしら』

葵「やれるもんならやってみな
君は絶対に出来ない。
仮に出来たとしてもその時はーー」


嗚呼、この人は私と"私"をちゃあんと見てくれている
嗚呼、どうしてこんな優しく溶けていく気持ちを
感じさせてくれるのだろうか。

『(きっと夢だ。これは酷い悪夢に
1滴の甘い果実の滴の様なものだ)』


私はそう想いながら確かに生きていた頃の自分を
想いはせながら確かに夢見ていた希望の光をゆっくりと
確実に輝かせる事を決意した











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