それでも耳を塞ぐあなた




それから二日後
私は保健室に向かってみると
其処には


『え?ぜ、善法寺先輩に喜八郎君に、勘、右衛門?』

勘「都佑、」

すっと立ち上がった勘右衛門に私は大きく身体をはねて
そのまま後ろに下がって背を低く保ってしまう

その姿に勘右衛門は宙に手を置いたまま
驚いた顔をした後少し眼の色が泣きそうな濁りが見えた

嗚呼、ごめんなさい
そういう対応をしてしまうの



あれから上級生だけでなく中学年、三年や四年生も
少し苦手になり距離を取るようにしているのだ
特に同い年と一つ上はかなり距離を取らないと
生きていけない。鉢屋達と授業する時もかなり離れている。



勘「・・ごめん」

『あ、いや(謝らなくていいのに。私が悪いのに)』

そこで私はまた眼を見開き口に手を当てる


私が悪い?
私は何にもしていないのに?


不安そうに伊作が「どうした?」と具合が悪い方に
勘違いを起こしていたのですぐに前言撤回させてもらった

まぁ流石に部屋に少女が来てから
ふと感じた思いが自分と違う様な気がして
気になって仕方がない

とは言えないので流して伊作達が
どうして此処に居るのか聞いてみると



『そう、か。正気に戻ったのか』

伊作「うん、天女・・に都佑ちゃんが手を出す事がおかしいと踏んでね
尾浜も少し不安だったらしくてさ、気になって聞いてみると同じだったようで」


どうやら天女様がやらかした騒動が
此方の良い方に転がったようだ
嬉しい様な、なんか気に食わないような?


綾部「・・都佑先輩、最近ぼーっとしていると
色んな方面から聞くのですが、本当の様ですね」

『ええ!?わ、私が?』

其処まで少女の事を考えているのだろうか?
と言うか今一瞬また考えてた?



此処まで来るとおかしすぎる事に不安を感じて来たのを
悟られたのか伊作が声をかける


伊作「何か気にかかる事があるのかい?
それとも、僕の友人か誰かにいじめら」

『嗚呼、大丈夫です!
虐められていたとしても助けは乞いませんし
この件は関係ない事だと思いますから』

急に何を言い出すのだろうか私は一体こったい。

虐められていると言ったようなものだが
裏の言葉が無い事を三人は知った様で
軽く息を吐いただけになった

勘「俺達に関係がないって、どういう事?」

『うん、多分だけどね。ごめん
あんまり言ったらいけない気がするんだ』

この事を誰かに話してしまうと
少女が本当に涙を流してしまいそうで怖かった

確かに不思議な処が幾つかあるのだ
然しそれを全て話してしまうと
少女が消えてしまう気がして怖かった








あの子が今居なくなってしまったら
果たしてこれから私は存在していられるのだろうか?


急に怖くなって来たのですぐに別の話題に変えてみる
すると伊作達は本当に快く話してくれて
寧ろ今迄すまなかったと土下座する勢いで謝って来た


これからは学級の勘右衛門を中心に伊作も喜八郎君も
自分の委員会と他の委員会も少し見てくれるらしい
因みに私は委員会に参加するのは禁止された


何故だ解せぬ



喜八郎「都佑先輩がぼーっとしながら
何かをやってみて下さい
確実に事故が起きますよ」

『多分起きない起きない』

伊作「そうやって思っていると本当に
怪我をしてしまうから止めておいた方がいい。
大分無理をさせてしまったし、三日ほど
ちゃんと休養を取っておいた方が良いと思う」

勘「その意見には俺も賛成です。
都佑、余り無理しないで俺達にも
頼っていいんだよ?」

『駄目だよ、人に頼ったら
私はまた我儘を言って
皆を困らせてしまうじゃないか。』


するりとそんな感じた言葉が口に出た事に
私はまた眼を見開いて口に手を当てた
今度は両方の手で閉じたので息が少しできなくて苦しい


勘「都佑?」

『え?あ、いやごめん!
私やっぱり疲れているっぽいね!
じゃーーー』

私はすぐに保健室から逃げるように出ようとすると
パシンと勘右衛門に腕を掴まれて身動きが取れなくなった
膝を立てて立とうとした処だったのできついのだが


勘「都佑、聞いて。
少なくとも俺は都佑に頼って欲しい。
我儘だって聞いてやる
もうどこにもいかない」

『・・嘘つき。』

そんな事はない

何故か断言が出来た


最後の言葉だけ、断言が出来る



君らだって人間だ
何処かには行ってしまうだろう

あの人みたいに


『(だからあの人っていったい誰だ?)』



良く分からない誰かの事を考えた
また集中が出来なくなる
嗚呼、本当にやっかいだ


勘「都佑、」

『ごめん、1人にして』


そう言って私は外に出て部屋に逃げるように戻って来た

ばたんと音が立った後深呼吸を繰り返して前を見る

其処にはまだ無表情の顔をした少女が立っていた
その眼は少しまだ、泣きそうな眼をしていて
私はごめんねと自然と言葉が零れた


するとまた安心感が溢れ出てくる
何故なんだ
何故この少女に安心をしているんだ





 手に入れた十字架

(君が真顔でじっと見ている事が只安心が出来るだなんて)
(私は狂ってしまったのだろうか)





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