すこし違うなにか



『嗚呼、止めて』

私は両耳を両手で塞いで眼をギュッと瞑った
声は確かに聞こえてくるが
その声よりも別の声が聞こえて来た


君は未だに囚われている、と





綺麗事だけでは駄目だということ






尾浜勘右衛門が鉢屋三郎と対立をしている
その情報を手に入れてすぐに私は近くまで走ってそのまま
気配を消して茂みに隠れた


『(一体どうしたんだ、お前達は昔から仲の良い委員長と
噂が立つ程良かったじゃないか)』


勘「っ、だからいい加減にしろって言ってんだよ!」


その声に私は少しびくりとなるが
微かに少女が思い起こされ直ぐに安堵する
最近何かあれば黒髪の少女を思い出す様にしているのだ

直ぐに落ち着くので逆に怖い位なのだが良いだろう。
結果良ければ全て良しだ


三郎「じゃあどの面下げてあいつの前に行けばいいんだよ」

ぼそりとそんな言葉が聞こえた
私はえ?と心の声が漏れそうになるのを抑えた



勘「どういう事だよ、三郎お前まさか!」

三郎「そのまさかさ、天女様の近くに居たら
何か情報が洩れると思ってな
ずっと惚れている様に見せかけていたんだが」


ぅおい!

そんな事聞いていないぞ!?


三郎「然し帰って行きたいのは山々だが
どの面下げて帰ればいいのか分からないし
この事が雷蔵達にバレてしまえばたいへーー」


























雷蔵「へぇ、三郎は天女様の事が嫌いだったんだ」













タイミングが悪いと思ったのは私だけではないだろう


その声に私だけでなく三郎と勘右衛門もゾクリとした
背筋が凍ったのは確かだ
気配をより一層消そうとするが逆効果になりそうだったので
私は少女を思い描く、綺麗な黒髪にあの表情が笑顔になれば
どれ程綺麗なのだろうか

ホッと何故かする私に対して雷蔵達はかなり険悪と化していた



雷蔵「僕らに嘘をついていたんだよね、三郎」

三郎「ちっ、ちが!」

雷蔵「違う事ないだろう?
あんな黒くて気味わるい奴の何処がいいのか」



黒くて?


はて、雷蔵に私は一度も黒髪の姿を見せたことはないのだが


私は段々と汗が額に現れ出す
じりじりと熱くなる自身の身体が嫌になりそうだ



勘「気味わるいっておい、雷蔵訂正しろよ」


雷蔵「気味わるいで何が悪いの?
あの子ずっと真顔で居るんだよ?
そんな子を連れて嬉しそうに笑うだなんて
都佑は狂っていると言っても過言じゃないよね?」


彼は少女が見えるのか?
  ・・

と言うよりかは、あの子を気味わるいと言ったのだ
そこで私はプツリと来た



ガサガサと大きな音を立てて私はゆっくりと身体を持ち上げる




眼が段々周りをはっきりと見せてくれるようになった時
私は雷蔵に向かって大きく苦無を投げつけた

人に対して、友に対して初めて
ギロリと睨んで敵として見た瞬間だった



意識が段々と上に上がっていく

嗚呼、今日も悪い日だなぁ。







勘右衛門side


ガサガサといきなり音がしたものだから
何だと思ったら都佑が現れて来た

何時から居たのか知らないがかなり怒ってる気がする。
と言うか眼の色がおかしいけど!?
待って!と思った瞬間だった


その場で苦無を取り出し雷蔵めがけて投げつけた

勿論雷蔵は避ける事はしないで
都佑が苦無をギリギリの処に投げたんだけど・・


勘「(それでもあの眼はなんだ)」


ギロリと睨んだその眼は細くなったりするものの
その睨みは衰えず、まるでそう

勘「(都佑、止めろ)」


敵なんかじゃないんだ。

そう言いたいのに声も心の中ですらも叫ぶことは出来ない




『・・不破雷蔵、貴様今なんて言った
聞き捨てならん言葉を聴いた気がしたんだが
はて、気のせいと言いたいなぁ。』

雷蔵「ん?何の話?僕忙しいんだけど」

そう言って直ぐに帰ろうとする雷蔵に
都佑は勢いを付けて背中に足で殴りかかった


蹴り上げとはいかないがドンと言う音が鳴り響いただけでもうーー


雷蔵は舌打ちをして都佑に言いかかる
雷蔵が雷蔵で無くなったものと
都佑が都佑で無くなる感覚に肝が冷えていく


勘「都佑!落ち着け」

『だ、−−分かった。
不破雷蔵、貴様は此方に戻って来ても許さないからな
彼女を侮辱する者は例え友だろうが教師だろうが
何だろうが許すわけにはいかない』


ギロリと睨みながらも都佑は潔く離れてくれる
一応冷静に見ているらしいが頭に血が上ったのは確かなので
直ぐに離した後別れさせた


勘「都佑ともあろう者がどうしたんだよ
少女って妹?くノ一とかにいたっけ?」

俺の勘と情報が正しければ都佑は妹も姉も兄弟は愚か
親も亡くした独りぼっちの筈だ
昔から仲の良い夫婦だったらしいがある日急に容態が悪くなり
病で死んでしまったと言う噂を聴いたことがあるし
都佑本人も言っていたのだ「一人っ子だ」ってね。


いつの間にかギュッと掴んでいた腕を都佑が振り払い
親戚の人間がくノ一に入ったんだと言った


勘「え?そんな事聞いた覚えないんだけど」

『・・勘右衛門達にだけでなく
生徒全員に隠していた事実だからな
私はこういう事は余り
外に情報は出さないのは知っているだろう?』


そう
都佑は自分の事を外に漏らすのは特に嫌っている
本人曰く知らない処で話されるのは気に障るらしい
だから五年生になるまで友達は愚か気の合う人間は
指折りの人間しか居ないらしい

これは本当かどうかは知らないが
噂によると都佑が嬉しそうに笑っている姿を見る事が
出来るのは同室の葵だけらしく恋仲になっているのでは?
と言う話も出ている位だが

そんな事を本人に話してみろ
即首が飛ぶ覚悟をしなければいけない位
噂は余り好きじゃないのだこの人は

勘「まぁ親戚とは言えど気味わるいはちょっと」

『言い過ぎだよなぁーあのピュアに見せかけた雷蔵様は
一体何処いったんだかって話だよ、まったく
あんなに口が悪くなるのか恋仲とか創り出した時には
面白い程人間の欲が表出るなあー怖い』


あー怖いこわい
だから恋仲は恋心は持たない方がいいんだよね




そう言った都佑に違和感を持つ
それは彼もそうらしく
驚いて口に手を当てようとしていた



学園の中を隅々まで調べ上げる事が学級委員会の役割でもあるのだが

勿論その中には恋仲の話も上げて代々巻物に書かされている位

周囲の情報は大切に保管管理はしている


勿論岡本都佑の情報も噂と知っている確実な情報位はまだ少ない少ないのだ


その中に一度も恋の話だけでなく

自分の気持ちをさらけ出すのが多いとも何も書かれていなかった





なのにだ

彼は最近ぼーっとして思った事を口に出して
自分で驚き眼を開き口に手を当てる

まるで自分が言いたい事を言っていないかのように
誰かに言われたかの様に


だから?

まるで前に恋仲が居たような言い方ではないか



もう一度言おう




都佑に恋仲と言われる人間は10歳からは確実に

学園の中では噂として出てきたことはなかったのだ







その少女が親戚ではないと確信した俺は
何かとんでもない方向の情報を手に入れてしまったと

今迄に無い程に冷や汗が冷たく熱く感じた





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