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「………」

町のイルミネーションが、こんなに鬱陶しいと思った日はない。チカチカチカチカ、目に悪いったらない。

町は、すっかりクリスマスムード。
イブを超えた今日、とりあえず万国の島民たちも盛り上がっているようです。

今日から幹部の人たちも、年明けまで長期休暇になるので、合わせて私にも休暇をくれたペロスペローさん。

いまは、プリンの屋敷に居候しているのだけれど、少しでも彼の温もりを感じたくて、年内はスイートシティの屋敷に寝泊まりしたいとペロスペローさんに申し出ていた。その許可が下りたのは、本日、年内最後の幹部会でのこと。

カップルだらけのスイートシティ大通りを、折角の仕事納めだというのに、特にプリンや、幹部の面々と予定の入れなかった私が、のしのしと歩く。

さようなら幸せ。
今年の私は、ひとりぼっちで聖なる夜を過ごしますよ。


第一、彼氏のシャーロットカタクリ様が、魚人島に長期遠征に行ってからというもの、私の総ては崩れっぱなし。
仕事の不備しかり、体重しかり……
極めつきにはファンデーションのノリまでも悪い。

「はぁー!」

目の前でいちゃつくカップルの真後ろで、不自然すぎる溜め息を盛大に吐いて、そのひとたちを抜かす。あ、笑われた!くそぅ!


カタクリさんとは、付き合って9ヶ月が経った。遠征に行ったのが4ヶ月前なので、会っていない期間を抜かすと、実質付き合って5ヶ月目?なのかな。

一応、去年は一緒に、と言っても家族みんなとクリスマスを過ごせたのだが、今年は絶対無理。それは叶わない。
人魚の島、魚人島で、彼はのびのびと羽根を伸ばして……いや、任務を全うしているはず。

あーありえない。ありえなすぎて悲しい。
最高傑作の彼女は辛い。人並みの幸せすら許されないのね。

慣れていたはずの、カタクリさんが隣にいないという現状。実際は慣れてなかったんだな。
イベント事が来るたびに、カタクリさんの肩書が憎らしくてたまらなくなる。

私はビッグマム海賊団の幹部じゃない。
だから私は、彼らの任務の大切さがわからない。
あのひとが全てをかけてやっているもの、それを理解することがまだ出来てないのだ。

頭ではわかってるよ、
カタクリさんにはママが、いやビッグマム海賊団が全てなんだもの。でも、同じように私にはカタクリさんしかない。

カタクリさんは、私がいなくてもビッグマム海賊団の将星やら、幹部やら、最高傑作って肩書があるから大丈夫、だけど私は?

カタクリさんがいなくなった私はどう?
笑っちゃうくらいボロボロなんだ。
なんか………惨めだなぁ。


スイートシティのお城に着いて、幹部室に入って、隅の扉を開いて仮眠用に設けられているベッドに倒れ込む。ひとりぼっちで歩くクリスマスイヴの大通りは辛過ぎた。

「魚人島なんか………」

金髪とか、ピンクとか、赤とかオレンジとか、そんな派手な髪の毛で、くっきり二重で、ぼんきゅぼん!で、唇なんて、ぷるんとしてて……
そんな人ばっかりなんじゃないの?魚人島の女の人って。勝ち目ないーーっ!

あーあ……どうせ忙しくて電伝虫も出てくれないんでしょ。

別で魚人島に出航した、カタクリさんの部下に渡したお手紙なんて、もう3ヶ月経っても返事なんて来ていないし。

私、こんなんでカタクリさんの彼女って言えんのかな。

彼女ってもっと、相手を支えたり、支えられたりするもんじゃないの。
私はカタクリさんを支えられてんのかな。

「………」

むつかしいことを、ない知恵絞って考えたって、眠気が先行するだけだ。

カタクリさん、元気ですか?
わたしは元気!……
なわけないじゃん………!