もう一度三人で


兄ちゃんと二人で食べるご飯はいつもと変わらなくて。それなのにどこか物足りなさを感じているのは俺だけじゃないはずで。美味しいと喜んでくれる表情を思い出しては泣きそうになって。たった一週間とちょっとを一緒に過ごしただけなのに、こんなにも俺の中に根付いてしまった存在がここにはもういなくて。

どんなに上に掛け合っても女一人を探す暇があるなら他の仕事をしろ!って言われるばっかりで全然話を聞いてくれないし。最後にあの子を見たイタリア兵が言うにはイギリスが連れて行っちゃったって言うし。そのイギリスに連絡しても一向につながらないし。

酷いこと、されてないかな?ご飯とか、ちゃんと食べさせてもらってるのかな?でもイギリスのご飯だしなぁ…。寂しい思いしてないかな。怖い思いしてないかな。泣いてないかな。

ああ、知りたい。今すぐにでもあの子を迎えに行きたいのに。イギリスに立ち向かうのを恐れて足が動かない。

俺はこんなにも意気地なしで救いようのないやつで。女の子一人守ることもできないなんて、本当に情けなくてしょうがない。

ドイツや日本からしたらどうでもいいようなことでも俺にとってはすごく大事なことで。小さいことで悩んで、あの子の本当の気持ちも知らないのに俺ばっかりが先走って。

もしあの子が望んでイギリスの手を取ったのなら?俺たちから離れることを願っていたのなら?俺が迎えに行っても、なんで来たの?なんて言われた日にはもう絶対立ち直れない。それくらい、怖いんだ。怖くて仕方がない。

それでも俺は、あの時あの子を助けたことを後悔なんかしていないし、むしろ出会えてよかったって思っているくらいだ。

あの不思議な女の子のナマエが、俺に向けてくれた笑顔だとか言葉だとか。全部全部捨てきれないものの中に含まれていて。

俺たちは国だから簡単に死ぬことはないし、たくさんの情報と過去で成り立っている。時には忘れてしまいそうな小さなことも、俺は全部覚えていようとするから容量が悪いって兄ちゃんに怒られるんだ。でもそこが俺のいいところなんだって言ってくれたドイツや日本に救われたのも事実で。

言ってないことがまだまだたくさんあって。聞かなきゃいけないこともきっとたくさんあるはずで。

あの子が一度踏んだ俺の地雷は不発に終わったけれど、今度は逃げたりなんかしないって君に誓うから。だから、お願いだから、無事でいてほしい。願わくば、もう一度三人でパスタを食べれることを夢見て。


「おいイタリア!イタリアはいるか?!」
「ヴェ、どうしたの?ドイツー」
「聞け!あの子が戻ってきたぞ!」
「え?!」


兄さんが知らせてくれたんだ!どういう経緯でそうなったのかはうんたらかんたら。ドイツが何かを説明してくれているけど俺の耳には入ってこなくて。もうすぐナマエに会えるんだって思うといてもたってもいられなくて。


「お、おい!イタリア!どこへ?!」
「兄ちゃんに知らせてくる!」


兄ちゃん、俺たち二人、ちゃんとぶたれる覚悟はできてるよね。

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