青と赤を操りし者
『い、いたいっ!いたいいたい!』
治療室で今叫んでいるのは私だ
「お前、女のくせに本当女らしさの欠片もないな、もっとマシに叫べないのか?」
横で悪態づいているのは(悪魔の)カリム中隊長である
『だって……!この消毒液染みるんですよ!』
睨んでそう言っても
お前は子供か、と言った目で見られるだけであった
ううっ、となりながらも処置を終え、自室へと向かっていた
部屋のドアの前に着いた為、別れの挨拶を告げようと思ったら腕を引っ張られそのままカリムの部屋へと連れ込まれた
『え、』
中隊長って呼ぼうとした声はカリムによって消された
そう、また抱きしめられている
そして離されたかと思えば次に飛んできたのは耳を劈くほどの怒声だ
「お前は馬鹿なのか!」
頭がキンキンする
『な、何でそんな怒ってるんですか?』
「あの矢を何とか止められたから良いものの当たってたら死んでかもしれないんだぞ」
眉間のシワは濃くなるばかり
『ひっ……』
伸びてきた手に思わずたじろいだが襲ったのは優しい抱擁だ
『ちゅ、中隊長?』
「頼むから、お前まで俺の前から消えるようなことしないでくれ」
そう話すカリムの身体は震えていた
ああ、そうだ、この人だって守れずたくさんの命が消える瞬間を目にしてきている
愛する者を自らの手でかけることがどれだけ辛いことかなんて私が1番知っている
なのに、私はそんなこと考えず全てを周りの為にとしていた
『心配かけてごめんなさい、』
素直にそう謝った
そして、私は更に言葉を紡いだ
『だけど、私は守る為に消防官になったんです、守られるだけなんて嫌です』
「ほんとワガママな女だ……」
私の言葉に優しく微笑んでくれた気がした
頭をくしゃりと撫でられ囁かれた言葉
「安心しろ、お前を置いていくことはしない」
そう闘いは始まったばかりだ
そして、私はカリムの部屋を後にするのであった