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-中等部・玄関口-
寮から中等部迄は、さほどの距離ではない。
それこそ、10分歩けば着くような位置にある。
その為俺達は、割と早々に中等部へと到着した。
下駄箱や廊下では生徒達同士が挨拶を交わしたり、じゃれあったりしている。
「お? よお、時雨に志苑。」
「二人ともおはようございます。今日は早いですね。」
その下駄箱で傘に付いた水滴を払っていると、金髪に青い帽子を被った少年と、銀髪紫眼の少年が話し掛けてくる。
中等部の不良の代表格、荒風 龍斗と、それを取り締まる風紀委員に属し、それを統括する風紀委員長の神宮 翼だ。
何故役割が正反対なこの二人が一緒にいるのかと言えば、彼等がルームメイトであると言う点が大きい。
…龍斗が言うにはもっと以前からの付き合いらしいが。
「いつも遅刻してくるみたいな言い方しないでよ、翼。」
「やだなぁ、そんな言い方してませんよ。ただ今日はギリギリじゃないんだなぁと思いまして。」
軽く目を細めて不服そうに翼を睨む志苑。
それに対する翼の対応は、なんとものらりくらりとしたものだ。
志苑はこの二人、特に龍斗を前にすると、少しだけいつもの優しめな態度が崩れる。
そういえばこいつらと志苑も、かなり長い付き合いらしい。
それ故の塩対応なのかもしれない。
……ただ単に苦手なだけかもしれないが。
「その辺にしとけよー?翼ー。オレも遅刻は良くするしな。……んー?時雨ってばなんか不調そうじゃねぇか。ひーとの料理でも食ったか?」
龍斗がこっちを見て首をかしげた。
……この男、無駄なことによく気がつきやがる。
「…そんなわけあるか。あんなもん食ったらまず中等部に来れねぇよ。何でもねぇから気にすんな。」
「そうかぁ?まぁ……無理だったらサボれよ?」
いつも通りに軽く返したつもりだったが、どうやら失敗したらしい。
……そういやこいつとも、初等部四年からの付き合いだっけな…。
「龍斗さんは遅刻どころかサボりと喧嘩の常習犯じゃないですか。あと、人にサボりを勧めるのやめてください。時雨も具合悪いなら、大人しく保健室に行ってくださいね?」
翼が風紀委員らしいことを言う。
龍斗曰く昔かららしいその真面目な性格は、この役割だからこそ輝くのかも知れない。
……俺も一応、彼とは幼馴染みということになっているが……、その点に関しては全く思い出せないのでどうしようもない。
だがあいすが言うことなので、きっと本当のことなのだろう。
「……わかってる。」
「うーん、こう言うときの時雨はホントに信用ならないんですよねぇ。志苑さん、頼みますからね。」
「はいはい、解ってるよ。僕も保健委員だしねー。」
……体調悪いときの俺はどうやら信用されていないらしい。
そういえば説明し忘れたが、志苑は保健委員に属している。
そのせいか、俺が体調を崩すとよく構ってくるのである。
……正直助かることの方が多いから良いんだが……個人的には口うるさいと思う部分もある。
というか……自分のことももう少しは気にしてほしい。
「さてと、そろそろ教室行こうか。じゃあね二人とも、また部活とかで。」
「おう、じゃあな!」
「頼みましたからねー!」
志苑が俺の背中を押しながらにこやかに言うと、二人が後ろからそんな声を掛ける。
ここで別れるのは、クラスが違う為だ。
俺と志苑はクラスA、龍斗はクラスB、翼はクラスDに所属している。
そういえば、隣のクラスを跨いだルームメイト達は数あれど、龍斗と翼のようにクラスすら隣り合っていない例は珍しい。
基本的に体育等を隣のクラスやひと学年下のメンツとやることの多いこの学年では、二人組を組むときにあぶれる事がないように、ルームメイト同士が一緒のクラスになることが多いのだ。
実際、俺と志苑も似たようなもんだし。
そもそもここ、レクライアは、初等部に入学ないし、転校してくる以前の友好関係を洗いざらい調べてからルームメイトを選出するらしいから、まぁ基本あぶれる心配はないだろう。
だがそれでも、派閥やらいじめといった面倒臭い事実があるのが、悲しい現実だ。
そういう関係もあって、ルームメイト選出を断り、個人部屋を持っている生徒もいる。
……理事長が基本そういういじめみたいなのが嫌いな人だから、それをやった瞬間にレクライアから摘まみ出されるんだが……それでも掻い潜ってのうのうと学園生活を送っているやつもいる。
はっきり言ってムカつくことこの上無いが、俺には他人の人生をどうこうする権利はない。
……一回主犯とかぶん殴ってぶっとばしたことあるけど…流石にあのときは先公に叱られたし。
別に一般の先公に叱られるのは全く平気なんだが、特殊教科……"術"を扱うレクライアの先公…教師達は、一様に強い人物が多い。
俺達のクラスであるクラスAは、特にそういう教師が必須科目を請け負っている。
そういう関係もあって、あの時俺を叱りつけたのは……。
「あ、クロノア先生おはようございます。」
「あぁ、辻倉くんに水森くんおはよう。」
今志苑が挨拶をし、それに返答したこの女性教官、クロノア・ディ・シュトルツである。
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