広い。
なんだこの広さは。地方のドーム
……サラリーマン家庭の
まず男子
……元旅館の土地と聞いたか。既に。旅館レベルなんて当然か。
しかも渡り廊下の向こうの女子棟は、男子棟より部屋数が減った小規模サイズ。それでもでかい。
どちらも朝と夕方のトイレの混み具合が半端ないらしい。各階に二つずつしかないせいで。
まだ入って一日目の自分ではこれ以上覚えられる気がしない。自分に与えられた部屋で荷物を整理している中。浄香が机の上でしっぽを垂らし、揺らしてしばらくしてこちらを見てきた。
『まだ終わらんのか』
「暇ならどっか行けよ。もうすぐ夕飯らしいぞ」
『フン、敵陣に乗り込みふらふら出歩くなど
「て……敵じゃないだろ、千理は別として」
あいつは別な意味での敵だけれど。廊下に面した
「あ、ごめん整理中か」
「いや、いいけど。もう夕飯?」
「ミリ単位で
「
「おー隻さん突っ込み凄いなー千理が言った通りだなーさすがさすが」
「
「いや誉めてる誉めてる。あの千理とやっていけた人なんだからそりゃーもう凄い突っ込みなんだろうなってね?」
「
隻が息を切らす中、満足げに頷く翅はマイペースに合掌。
「期待通りの反応
「手前表出ろ一人
「わー隻さん江戸っ子だったのか。じゃあまた後で」
「るっせえ!!」
「あ、食事の間、戦争だからご
「意味わかんねえよ!!」
ぜはっ、ぜはっ、ぜはっ。
息継ぎも必死な中、襖はすでに閉められていて。
拳を震わせた隻は、猫が不機嫌に睨んできている事に気づかないままぐったりとしたのだとか。
「
「うんまあ、一人
それでもけろっとして言う言葉ではない。反省が欠片も見えていない態度に、隻は昼間会った千理の弟の心境が嫌と言うほどわかった。
「そりゃそうだろ……やっぱり、血飲ませるのって相当まずいんだな」
「あー……それは確かに大事なんすけど、ほかにも色々やらかしちまってるもんですから……多分三年分
どうして期限が
なぜ食堂の案内を万理に頼む前に千理に会ってしまったのだろうと苦い顔になるそば、廊下を歩きながら見えた人影にぽかんとする。千理が驚いているではないか。
「
「おまえ本当に三年間家出してたんだよな? 後ろめたさないのかよ!」
人影がこちらに近づいてきた。隻より若干低い青年は、ぼんやりとした目で千理を見、しばらくして隻を見て──頷いた。
「ん」と。
隻、思わず固まった。その間に青年は千理へと視線を戻している。
「
「あーうん。結局見つからず
「そうか。特に、変わってない。明日……午後から、謹慎部屋か」
「そうっすね。その前に
青年が親指を立てた。千理も立て返した。
隻、やり取りにひたすら内心冷や汗が出る。それなのに青年が隻へと目を向けてきても、彼が固まらないわけがない。
「ここの、養子。
「あ──よ、よろしくお願いします。隻です、これからお世話になりま──」
ぽん。
ぽんぽん、ぽん。
隻の頭に置かれた手は、明らかに目の前にいる、隻より身長が低いはずの政和のもので。
固まった隻へと頷く彼は、親指を立ててサムズアップ。
「
「……え……あ……あ……は……はい……はい……?」
満足げにまた頷かれて、サムズアップ。
恐る恐る、隻もサムズアップ。
そのまま政和は真顔で廊下の先を進んでいって──
見送った千理は、隣で隻が冷や汗だらだらなことに気づいていない。
「おー、気に入られましたね。最速最速」
「どこが!? ってか何が!? そもそもいつっ、つかどうしてそうなったんだよ!!」
「
「どういう職人がいるってんだおい!!」
したり顔で重々しく頷かれた。
隻、ついに
レーデン家養子、
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第04話「血と兄弟と赤の他人」
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第05話「三年後」