離島戦記

 第1章 隔離された島

番外編01「ルヴァの一人旅」
*前しおり次#

※第3話以降の話ですが、ルヴァ視点のため一部彼の過去についてネタバレになる範囲があります。第2章以降で明かされるため、ネタバレが苦手な方はお戻りください。



 あの小童こわっぱ、まるでウィルに生き写しだな……息子むすこているからと気安く助けすぎたか。しかし、随分ずいぶんと世間知らずなガキだったな。
 ウィルだったらその場でしかっていたのに……いや、あの子も似たようなところがあったか。
 もう七百年前になるのか。この世界にとっては……
 この島を残して世界が消えたわけではなかった。この島が世界から爪弾つまはじかれただけだったのか。
 ならばまだ、海の向こうに国はある。人はいる。それがわかっただけで、生かされた意味はある。あの小童にあの程度の謝礼なぞ少なすぎたかもしれん。
 五百年の時、なんぞ。俺にとってはただ水の流れのようなものだと思っていたが……
 あいつはどうしているのか。またひとりで泣いていないならいいが。支えてくれる奴はそばに一人でもいてくれたんなら、いいが……。
 孫はまた、気心の知れた誰かとめぐり合えただろうか。
「リティ……お前は何をしている」
 いくさの世で一度たがえた糸の結び目を、お前はまだかたほぐせずにいるのだろうか。どうか、最後まで人のために走り続けていたあいつに、もう一度陽だまりの笑みが戻っていてくれたなら。
 消えた五百年なんぞ気にしない、元々俺は歴史から消された存在だ。ただのルヴァ≠ナしかない。
 そのただのルヴァ≠フ、ただの長い居眠りだったと笑ってやろう。


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番外編前の話
第03話「影法師が笑う昼」

続きの話
第04話「隔離された街」


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