マルダース会長

 マルダースはメブサ前会長一番弟子で、彼の思想をよく理解していた。よく饒舌にさとすメブサを前に、大勢の中の彼は、淡々とメモを取っていた。その内容のほとんどは「ホラ」で、読み返した時はただ呆れるばかりであった。そのページを破り捨てるべく屑籠を探していると、大概誰かが「何てことをするんだ!」とまくし立てて、マルダースの手から奪い取っていった。恍惚し、呪詛のようにメブサの言葉を呟き続ける会員の様を見て、彼はさらに呆れを感じていた。
 メブサの言葉が大事なのではなく、「至高たる植物」が大事だというのに。

 マルダースはだからこそ、妄信的で根拠のない研究を良く思っていなかった。「創造主」復元は、それに至る過程で確定事項が非常に少なく、非効率だった。現に旧市街のように、その失敗例と犠牲が大勢出ていた。
 マルダースはそれを鑑みて、より成功率が高い「鼓動植物」の研究を推し進めることにした。こちらは動物・人体実験も、ね良好な結果が出ている。

――植物こそ至高――

 彼は多くを語らず、淡々と研究を続けていた。植研会が行う実験を上手く隠し通していたメブサは既に亡く、旧市街で払われた犠牲の全てもマルダースのせいだと思われていた。彼は俗世に興味がなく、否定もしなかったため、ナギャダでは植研会の研究の悪評はたちまち広がった。

 マルダースは「救い」や「神」など求めていなった。自然の無常にあるのが最善と、純粋・客観的に物事を考えていた。新しい人類を見ていた。

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(投稿:2018.05.08)
(加筆修正:2018.05.08)

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