宇髄合同遊郭潜入!? 6


「あーー!!
 女将さんに絶対ドヤされる!!!
 今日は汚れちゃ、困るってのに!

 壱ノ型 鹿旋風・削ぎ」

柚充は直ぐに立ち上がると再び日輪刀を構えた。地を抉りながら鬼へと向かっていく。
しかし、日輪刀は弾き返された。予想はしていたが、ここまで見事に攻撃が通らないとは予想外。宙で体制を整えながら鬼の情報を収集すべく集中する。

ーー悔しいけど私一人ではこの鬼は斬れない、、

思わず出る舌打ち。
間もなく地面に足がつく感覚。だが、ついた足は鬼が飛ばしたヘドロの上へと降りてしまい、体重を支えきれずに体が傾いていく、、、。

ーー完全に失敗したっ、、

痛みを覚悟してキュッと目を閉じたが、痛みとは別の感覚に包まれた。
恐る恐る目を開けると白い髪がふわりと揺れた。

「悪りぃな。"実弥さま“じゃなくてよ」
「何言ってんですか。天元様、助かりました。」
「1人で無茶すんじゃねぇよ」

へらっと笑って下ろしてもらうと、攻撃をしてかき集めた情報を共有する。
どうやらこの鬼はこのヘドロをどうにかしなければ本体へ傷を負わせる事は出来ないらしいことを。

「でも、ここで天元様が爆破したら潜伏してる鬼の方が
 警戒して身を潜めちゃうかも知れません」
「柚充も、こいつとそっちは別物だと思ってるわけか」
「かむろちゃん達の話にヘドロとか汚れとかそう言う
 類の話はありませんでしたから」
「ちゃんと頭使ってんなら上出来だっ!」

宇髄は背負う日輪刀を掴むと鎖で繋がる片方の刃が円を描く。目に止まらぬ速さで鬼へと切り込みヘドロは周囲に飛び散った。
あちこちに飛んだヘドロは鬼と離れた場所で塊となり攻撃を続ける宇髄へと迫っていた。

「参ノ型 晴嵐風樹」

宇髄へと迫っていたヘドロの塊は柚充の風に吹き飛ばされべちゃっと音を立てて落下したのち、ナメクジのような動きをして本体へと戻っていった。

2人は一旦引き、鬼から距離を取る。
「ありゃどうなってんだ?
 ヘドロが厚すぎて殆ど刀が通らねぇ」
「…早く戻らなきゃいけないのに、、」

ーー実弥様早く来て、、私じゃ役不足だ、、。
悔しさが込み上げていつのまにか拳を握りしめていた。

「オイ柚充。不死川が近くに来てるからって、
 不死川を頼るつもりでいたら、お前はいつまで経っても
 不死川を超えることなんて出来やしねぇぞ。
 柱達(俺ら)が何で継子を育てたり、時間があれば
 下の隊士を鍛錬すると思う?」

柚充は心を見透かされドキリとした。
"超える"そんな事は考えたこともなく、いつだって背を追うものだと思っていた。鍛錬する事なんて当たり前すぎて、強くなりたいと思った事はあっても、柱達がどうして剣士を育てるかなど考えたことも無かった。柚充は宇髄の問いに対する答えを絞り出す。
「……鬼と戦う力を絶やさない為」
言葉にして、えらくその答えが薄っぺらいもののような気がした。

宇髄は鬼から目を離すことなく「当たりでもあり、はずれ」だという。

「確かに戦う力が途切れてしまうのは
 避けなきゃいけねぇもんだと思う。だがよ、それ以上に
 柱(俺ら)はどこかで俺らを超えて俺ら以上に
 鬼舞辻と渡り合えるようになって欲しいと思うんだ」



だから柚充。

自分の力を信じて戦え。



宇髄は柚充の成長を促したかった。力を蓄えていても、認識の違いや、心算でその力さえ発揮できるか、内に留めてしまうか別れてしまう。鬼殺隊として戦い続けるには隊にとっても柚充にとっても前者であってもらわなければいけない。
それは彼女の身を思うが故。

「天元様。私を上に放り投げて下さい。
 必ずヘドロ吹き飛ばして頸、見える様にしてみせます」

ーーヘドロが本体に戻る時、足元に戻って行ったった。
  だったらきっと、頭の方は……



ーーーーーー

自分で飛び上がれる高さよりもっと高かった。一人ではこの鬼を斬れないのは柚充だけじゃなく宇髄もで。でも、後から考えると、自分の力量をここまでと決めてそれ以上の力を発揮することを諦めていた気がする。同期と出会って"負けない"と思った。でも、本当に目指さなければいけないのは鬼舞辻を討てるほどになる事。

ーーなら実弥様を追ってちゃいけない。
  背を預けてもらえるほどに
  並んで戦えるほどに

  なりたい。


「伍ノ型 木枯し颪!!」

上空から激しい風が吹き下ろし、
その風は肌を指すように冷たい。

周辺の建物の建具がガタガタとなり、外に出ていた箒や桶が音を立てて転がる。
鬼を覆っていたヘドロが地面に押し戻されるように下へ下へと波打ち、ついに鬼の頸が露出した。

「天元様!!」
「出来るじゃねぇか!」

宇髄が鬼の頸に向かって刀を振り下ろす。鬼も斬られまいと必死でヘドロで頭を覆い隠そうとしていた。しかし宇髄は双刀。一刀目でヘドロを斬り飛ばすと空かさずニ刀目が頸を捉え、線を描く。

体と離れた頸は尚も吹き付ける風によって地面に叩きつけられるように落下した。
鬼の最期の恨み言は、風の音に吹き消されどこにも届くことなく霧散して消えていった。


ズサッと音がして宇髄がそちらに目をやると、柚充が片膝をついた状態で肩で大きく息をしていた。
「派手に頑張ったな」
宇髄は柚充の頭をポンと撫で口の端を吊り上げた。


「オイ!不死川!」
別の方向へ目を向けて名を呼ぶと、視線の先から黒髪仕様の実弥が鴉を連れて現れる。小柄な鴉は直ぐに実弥の元を離れ柚充の側に降り立つと顔を覗き込むような仕草をした。

「後始末は俺がしておくから、
 不死川は柚充を京極屋まで運べ。
 こいつにゃあ、まだ仕事が残ってる」
「ああ。」

ーーなんだ、、実弥様、、居るじゃん、、

ちょっと悪りぃなと、一言残すと宇髄は柚充の緩んでいた半幅帯を解いて着物として纏っていた羽織を剥ぎ取り、実弥へ柚充を放り投げた。
「?!!なっ!!」
下に襦袢を着ているから裸になったわけではないとはいえ、そんな姿で人前に出ることなどない為、柚充の顔は恥ずかしさで赤く染まる。

「宇髄!?」
「師弟揃って慌ててんじゃねぇよ。
 ヘドロ(コイツ)早く落とさねぇといけねぇだろ。
 今羽織ってるやつでも掛けてやれや」

そう言って、早く行けと背を向けて宇髄はひらひら手を振った。

実弥が視線を逸らしたまま着ていた羽織を柚充へ差し出す。
「ほら。」
「………"殺"の字入ってないならお借りします、、」
「……お前なぁ、、、」

受け取った羽織のほのかな温もりに緩む口元を袖で隠して京極屋に向かって走り出した。
 




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