始まりの物語


これは竈門家が鬼に襲われる
1年くらい前から始まる物語。

お館様はある日、柱合会議へまだ幼さの残る少女を連れて現れた。いつもの白髪童女ではなく黒髪の10才程の少女。不安の色を目に浮かべお館様の後ろに隠れる様に控えていた。

「お館様におかれましても、御壮健で何よりです。
 益々のご多幸を切にお祈り申し上げます」
あまり少女に興味を持たなかった冨岡義勇が挨拶の言葉を述べると、他の柱達はハッとし、少々悔しく思うのであった。

「ありがとう。義勇」

「恐れながらお館様!
 そちらの少女の事をお聞きしても良いでしょうか?!」
興味津々であった煉獄杏寿郎は皆疑問に思っているであろう少女のことを切り出した。
「うん。そうだね。まずはその話から始めようか」
お館様の話によれば、少女は親も出自も不明。鬼の潜伏先という情報を元に向かった隊士に保護された子らしい。

「この子を鬼殺隊の見習いとして柱に預けようと思う」
唐突な話である。しかしお構いなく話は進む。
お館様は少女に視線の高さを合わせ「行先は自身で決めると良い」と頭を撫でた。

少女は恐る恐るではあったが、柱たちを見回す。
「なれどお館様。
 見習いとはいえ、幼き少女に
 少々身が重いのではないでしょうか…
 …お労しい…南無阿弥陀仏…」
「その点においては大丈夫かと思うよ行冥。
 彼女にはなにやら素質がある様だから」

柱たちを見ていた少女が、お館様の袖を引いた
「…決まったかい。じゃあ心のままに行っておいで」
少女は頷くとふわりと庭に降り立ち、
自ら決めた師の元へ足を進める。
その足が止まった先には……

「………は?俺?」
正直言って、傷だらけで目つきも良くない。
そんな見た目で幼い少女が自分を師と仰ぐ事はないと不死川実弥は思っていた。だから思わずそんな事を口にしてしまった。

「……よ、ろしくおねがいします」


「そうかい、実弥の所だね」
「お館様!本気ですか!!」
「彼女が自分で決めた事だ。頼んだよ実弥。」

不死川実弥は尊敬するお館様に言われてしまえば反論するに反論できず、御意と頭を下げるしかできなくなってしまった。

のちにこの少女、柚充に実弥が振り回される事になるとは、この時、誰も予想できなかったという。
 




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