宇髄合同遊郭潜入!? 5


ーーお化け、お化け、お化け?
  それっぽいのは出会えないなぁ

「探しに来たのになぁ」
「何を探してるって?
 あんた廓内をちょろちょろして何やってんの」
「蕨姫花魁っ!!
 花魁から話しかけてくれるなんて
 今日は機嫌がいいんですね!」
「アンタ私を馬鹿にしてるの?」
え?何で?と気の抜けた真顔になった柚充を見て蕨姫花魁は「夏椿、アンタ。声だけは良いのにバカね」と盛大にため息をついた。

「そうだ!蕨姫花魁!琴と三味線どちらが得意ですか?
 菊華花魁に琴教えてもらったんですけど、
 それでも上手くいかないところがあって…」
「残念ね。私は貴女に稽古付けてあげるほどの
 お人好しでもなければ、そんな暇もないの。
 芸事なら教えてもらおうとせず見て盗みなさい」

「成る程、、見て盗む、、、
 あ!、、蕨姫花魁っ!………行っちゃった…。」

蕨姫花魁は、奥の自室へと向かって行ってしまった。柚充の相手をする気は全くないらしい。また仲良くなれなかったと柚充は小さく頬を膨らませた。


「なつつばきぃーーそろそろ支度しな!!」


そうして今宵も遊郭の夜が始まろうとしていた。


ーーーーーー

「えーせっかく練習しましたんにぃ!」
女将がやって来て柚充に告げたのは"琴は弾かずにうたえ"という事。
「今日の曲はまだ琴が危ういじゃないか。弾くのは
 菊華に任せて夏椿はうたに専念しなって言ってんのよ」
「時間まで練習すればっ!」
「時間切れだよ。
 ここはね。お客様を夢で魅せる場所なんだ。
 そんな出来るか出来ないか危ういようなモノ、
 披露する訳にはいかないんだよ」

割と琴を弾く事を楽しんでいた柚充は頬を膨らませて不満を示すが、仕事である以上仕方のない事である。
「椿ちゃんのうた一番近くで聴けるなら私、
 完璧に弾いてみせるわ」
最終的には菊華花魁の言葉で柚充は渋々納得するのだった。



菊華が微笑むその背にある窓の外。
ぬるりとした気配が通り過ぎる。


咄嗟に菊華花魁を押し避け柚充は窓の外へ身を乗り出す。菊華からは「きゃっ」と驚きの声が上がった。

ーー外に何か居る、、

柚充は鬼の気配に気づいてしまった。

「…椿ちゃん?」
「すいません、、菊華花魁。。………女将さん、、、
 少しだけ。……少しだけ時間を下さい。」


「夏椿の出る時間に変更はないよ」

「……必ず」

柚充の歌う時間まであと1時間ほど猶予だった。

ーーーーーー

かつらをとり、前で結ばれた帯を解き重苦しい裾綿入りの着物を脱ぎ落とした。

隊服を纏う余裕はないため、襦袢(じゅばん)の上に黄緑色の羽織を前で合わせ半幅帯で締め上げて、屋根の上へ飛び上がる。

近くの木から黒い何かが飛び上がり、柚充の頭上を飛び去りながら細長い何かを落として行った。柚充はそれを掴むと腰へと下げる。

「虹丸ありがとう!」
ひかたに案内されるかたちで宇髄の鎹鴉は柚充の日輪刀を運んだ。ひかただけで日輪刀を運べないとは思っていたが、まさか虹丸が飛んでくるとは想像していなかった。流石宇髄の相棒といった所。面倒見の良さは宇髄そっくりである。

そしてそのまま虹丸は飛び去る。きっと宇髄の元へ報告に向かったのだろう。

「ひかた。爽籟をさがして。
 実弥様が居るからあの子も居るはず」

ーーさぁ。時間との勝負。

花町の屋根を柚充は走り出す。




柚充が屋根から屋根へ飛び移ったその姿を偶然見かけた男が1人居た。
月明かりが逆光になり、ハッキリとその姿を捉えたわけではないが、何故かその姿は男にはとても美しく見えた。

その男、月彦こと鬼舞辻無惨はしばらくの間、何者かの背後で輝いていた月を見上げ続ける。

ーー遠い日、、、誰かが私に笑いかけていた。
  あれは誰だっただろうか、、

心の奥に追いやったあの日の記憶が、、想いが蘇る日はまだまだ先のお話。


ーーーーーー

どろり、どろり、と腐った様な匂いが風に乗って吹いている。

ーー…ん?雨も降ってないのに道が濡れてる、、?

人気の少ない花町の外れまで移動していた。柚充は屋根の上から飛び降りると、そこにはまるでカタツムリが這ったような跡。それが路地の奥へと。

ーー水と言うよりもっとドロドロしてる??


「!!」
しゃがんで状況確認をしている柚充の元へ突然何かが飛んでくる。気配を察知して柚充は、後ろへと飛び下がった。
柚充のいた場所にはヘドロ。

『……お前、、女?』

細い路地から鬼は姿を表した。その体は先程飛んできたヘドロに覆われて酷く腐った臭いがした。柚充は日輪刀を抜くと、鬼に返事をせずにただ睨みつける。
鬼は口の端を歪ませた。

「弐ノ型 爪々・科斗風」

柚充が振るう日輪刀から風の爪が鬼に向かい、確実にその体に傷を付けた。
鬼は後ろへと蹌踉めき、足元に視線を向けていた。

ーー大した鬼じゃない。動きも鈍い。


『酷いじゃないか。俺がお前に何をした?』

「・・・・?!」

斬ったはずの体はぶよぶよと、波打ちそこに傷跡は残っていなかった。それでも柚充は怯まない。けれど、接近戦に切り替えなければ自分の力では鬼は切れない。

ーー虹丸は?ひかたは?
  汚されちゃまずいけど、そんな事言ってらんない!

柚充は踏み込み、近距離で日輪刀を振り上げた。
「陸ノ型 黒風烟嵐」

風は太刀筋に沿って巻き起こり、ヘドロは風に絡みとられに僅かに鬼から吹き飛ぶ。すかさず刀を返して型を爪々・科斗風へと切り替える。
ーーこの接近した状況であれば威力も上がるはず。

刀を振り下ろした直後、右脇に強烈な痛みを感じた。風で吹き飛んだかに見えたヘドロは塊となって柚充へと向かって来たのだ。小柄な体は宙を飛び、地面を転がった。
 




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