煉獄家


翌日
本当に来た。それも煉獄本人が。
「では、確かに預かる!」
「実弥様行ってまいります」
柚充の才能の一つとして適応能力の高さもあるのかもしれない。
だが確かに、屋敷を空ける際、夜も一人で過ごさなければいけない柚充の心配をしなくていいのは実弥にとってありがたいことでもあった。


ーーーーーー

「君の事が隊士内で噂になっているぞ!
 "鬼程恐ろしい風柱に可憐な少女の式神"だそうだ」
「……しきがみ?」
「古の主人に忠実な妖の事らしい。
 人は対象となる者の力が計り知れなくなると
 妖や鬼と言ったこの世のものではないモノに姿を
 重ねたがるものだからな」
煉獄はそういうと柚充に興味津々といった目を向ける。
「しかし、見た目、妖の類ではなさそうだ」
柚充は少し恥ずかしくなり照れ笑う。
「煉獄様、この通り人です。」
「うむ。」



ーーーーーー


ーー確かに妖と例えられるのも頷けるかもしれない。

柚充は煉獄家で初めて竹刀での稽古に臨んだ。
それは実弥が意識、無意識は定かではないが、柚充に刀を持たせるのを避けていたからであった。
しかし、柚充は不死川の動きを真似てみせた。

「本当に竹刀や木刀といった訓練はしていないのか?」
「?…はい。実弥様が鍛錬しているのは見てましたけど、
 刀の訓練はしてないです。
 ……実弥様が避けている様なので
 敢えてふれませんでした。」
「、、そうか。しかしだ!君の小さな体で不死川の
 見様見真似をし続けるのは体への負担が大きい!」
やめなさいと怒られられると思い柚充は下を向き体を縮めた。
「体への負担が軽く済む様に改善するとしよう」

否定ではなかったことに思わず笑みが溢れ、煉獄を見上げると、煉獄もまた微笑んでいた。



「兄上。柚充様。お疲れ様です」
稽古がひと段落すると煉獄の弟、千寿郎が手ぬぐいと水をもってやってきた。

柚充にはどうしても気になる事があった。
「あの、、千寿郎くん?
 私、千寿郎くんより年下だと思うの。
 だから様はやめて欲しいです」
「え?でも、柚充様は風柱様の家の子だから
 様を付けるのはおかしい事ではないかと…」
「その理屈でいくと、
 千寿郎くんも千寿郎様と呼ばれなきゃいけないね」
「いや、僕は様なんて呼ばれる様な立場じゃないですし」
「だって、炎柱の煉獄様の弟様でしょう?」
柚充にたじたじになる千寿郎を杏寿郎が笑い飛ばした。

「柚充は面白い子だ!
 千寿郎、ここは折れておいた方が良さそうだぞ」
「……あ、あにうえ、、」
杏寿郎と柚充の顔を交互に見やり、千寿郎は諦めた様に「…… 柚充さん」と呼んだ。
柚充も「千寿郎君」と、してやったり顔で笑った。



「こんにちはー師範」


「甘露寺か。今日はどうした?」
「噂であの子が来てるって聞いて」
鈴が転がるような声と共に現れた甘露寺蜜璃は縁側で休憩をとっていた柚充を見つけ目を輝かせた。
「噂の"可憐な式神"ちゃん」
ーーあ、それ、本気で流れてるんですか…。


「あの、、柚充です…」
「小さくて可愛いわー。
 柚充ちゃんは甘い物好き?
 私はね大好きなの。実はこの髪もね、、」
「蜜璃さん!蜜璃さん!柚充さんが!!」
千寿郎の焦り声にハッとするといつの間にか蜜璃は柚充を抱きしめていたようで、、、少々力加減を間違えていたようだ。
「あああー!柚充ちゃん!」


綺麗なお花畑が見えた気がしました。


「さっきはごめんねー」
これ、差し入れよ。と山のような甘味が何処からか現れた。杏寿郎、千寿郎はさも当たり前の様子だが、柚充にはその量が信じられない。
「これ?食べきれるんですか?」
「ええ。おやつよ。お、や、つvv」


本当に心配は無用だったようで、面白いように甘味は蜜璃の元へと消えていった。
幸せそうに食べる蜜璃を見ているだけでも素敵な時間だったように思えた。


「うむ。では再び稽古をはじめるか!」
まずは何より基本が大切だという事で、剣道の稽古。基本が体に馴染むまで続けるのだった。


ーーーーーー


「、、師範。いくらなんでも、
 加減ってものを考えてあげないと、、。」
「うむ。早々に根をあげるかとおもっていたんだがな!
 よもやよもや!」

あまりに吸収力が優れていた為、煉獄は教えるのが楽しくなってしまい、つい柚充の限界を考える事を忘れてしまった。
限界を迎えた柚充は突然道場で大の字に寝てしまった。

そうして煉獄家での一日目が終わっていった。
 




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