「とりあえず、ソイツの事は置いといてやる。
 下手な真似したら、その頸叩っ斬るからなァァ。

 でだ。何で匡近の任務に俺が加勢に呼ばれんだァ」

被害も報告されていないのだから、お前一人でも十分足りる任務だろと。

「それが、なにか妙なんだ」

鬼の子の頼みを聞いて山中の鬼は斬った。彼女が言った情報は本物であり、おかげで商人が襲われる事件はあっという間に減っていった。

何が妙だってんだよ。と鬼の子を睨み付けながら実弥は匡近に話の先を促す。

「この子は商人たちに見返りを求めてなんていない」
「ア"ア"ァァ?匡近。人が良いのも大概にしろォ!
 鬼にまで手ェを差し伸べてお前は何を考えてんだァ。
 鬼の名誉でも守ろうってんじゃねェよなァァ?!」

別に匡近は鬼の子の名誉を守ろうとしたわけでも何でもない。ただその妙な違和感を追って彼は調査を続けていた。商人が襲われず、助けられる事も無くなれば社の子どもたちの食扶持(くいぶち)が減る、または無くなってしまう事を危惧したという方が適切だったかも知れない。
しかしそんな中、気になる事が出てきた。


「子どもの出入りが早すぎる。」
「出入り?」


あの社では、子どもを保護そして、里親へと送り出す役目をしていると言っていた。しかし、口減らしがあるような昨今、毎日のように子どもの里親が決まり旅立たせていくなんて事が可能なのだろうか?それだけで鬼殺隊に身を置く者であれば血生臭い予感がしてくる。

「ソイツはそれについては何もしらねぇのか?」
「信用する気になった?さすが実弥!話が分かる!!」
「バカ言ってんじゃねぇ!!
 今は片っ端から情報を集めねぇとだろォ!!」

仲がいいんだか悪いんだか不思議な心地で二人の動向を見ていた鬼の子であったが、視線が集中した為、実弥をチラリと見やるも直ぐに視線を逸らし匡近の方を見て口を開いた。
「社が出来た当初はちゃんとした人が管理していて人が集う場所でした。でも、その人が亡くなってからどんどん荒れていって、、見向きもされなくなってしまったんです。
 だけど、、
 今どうして子どもが集まってるのかは知りません。」
「ちょっとまって!出来た当初って君いつからここに
「匡近。コイツは鬼だ。
 そこんとこ間違えんじゃねぇ」

匡近には言い返す言葉が思いつかなかった。
ここ数日鬼の子と一緒に山中の鬼狩りを続けていたが、危害を加えられるという心配など微塵もなく匡近の中では鬼という認識ではなくなっていたのだ。

「とにかく。子どもたちが寝ててくれるなら何とかなるかもしれないけど、結構な人数を守りながら鬼と戦うには1人では不安が残った。だから加勢を頼んだんだ」
「で、どれだけ確証がある?」
「まぁ、7割ってところかな」
「十分だァ」

実弥がニヤリと笑うと、匡近と共に立ち上がり外へと足を運ぶ。鬼の子は後を追って立ち上がろうとするものの実弥の一睨みによって動きを止めた。
まるで、ついてくるなとでも言うような顔。
「実弥!そんな怖い顔しないでよ」
小さく肘で実弥を小突いたあと、匡近は鬼の子に視線を向ける。
「こんな顔だけど、良い奴だから許してやって。
 事が済んだら戻ってくるから、その時は君の名前教えてね?」

「………名前、、」
 
ニコリと笑って実弥の背を押すように二人は出かけていった。


ーーーーーー

「匡近ァ。お前の見立てだとあの社は何だと思う?」

「んー、、生簀(いけす)かな」

身寄りの無い子どもを集める事で、居なくなっても気づかれる事はなく、そのせいで被害としてなかなか表に出てくる事はない。また、山の中で人を守る存在をあたかも社の手柄と吹聴し食料を運ばせ続ける。
さらに必要以上の食料をよその必要としている施設や何やに回してやる事で、社の信頼性をあげている。

ここまで仮説を立てたものの、鬼の影というものが浮かんできてはいない。どんな鬼で、どんな血鬼術を用いているのか予想も立たない。知識はありそうだということ以外何も見えては来ない。そこだけが問題であった。


ーーーーーー


「何だここはァ?」
忍び込んだ社の中。古びた外観とは違い、中は本で埋め尽くされていた。
壁という壁に本、本、本、、そして本。

「中がこんな風になってたとはね」
あり過ぎだろ、という実弥の呟きが耳に届いたとほぼ同時に匡近の足に何かがあたる。
向けた視線の先にはやはり本。
手に取り開いて匡近は目を見開いた。

その頁(ページ)には、いつか匡近が「ききさまのこと教えて?」と話しかけた女の子の生写しが描かれていた。
あの子には言葉を交わして以来里親が決まったとかでもう会う事は叶わなかった。

生写し、、、本当にそうだろうか、、

この本全てに子供たちが"取り込まれている"としたら、、


「実弥。この本全て、傷つけちゃダメだ。」
「全て…」
匡近は実弥に向かって本を見せる。
二人の額に冷たい汗が流れ落ちていった。




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