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日が沈む。
「オイ。テメェら。死ぬんじゃねェぞ。」
鬼がぞろぞろいるなんて藤襲山ぶりの話だろう。
でもあの時とは違うのだ。
ひよっこではない。柱だ。
共に戦う隊士たちもいる。
「不死川さん。貴方はあの、、下弦の鬼を斬れますか?
なんならその役目私が、、」
胡蝶しのぶが空を見つめたまま実弥に声をかけた。
「お前の方が斬れねェだろ」
「そんなことありません。
私は鬼殺の隊士です。
姉さんとは違います……」
「無理する事ねェんだ。
それに……匡近に頼まれてっからよォ
俺が斬らなきゃなんねェんだァ、、」
そして各々走り出す。
ーーーーーー
ーー本当タチの悪い血鬼術だ。
一夜でこんなに斬るのは初めてのことかも知れない。
刀の刃はまだこの戦いに耐えられるだろうか?
お館様は人選をしっかりしてくれたらしい。
鬼の強さは別としても、他の任務に比べて長時間の戦闘となっている。しかし、なおも数人を除いて隊士達は刃をふるい続けていた。
「不死川さん。もうあたりはついているんでしょう?
此処は任せて向かって下さい」
全て斬り伏せてからなど、そんな悠長な事は言ってられない。
実弥の舌打ちが聞こえた。
一瞬目を合わせると頷き合い、実弥は戦線を離脱する。
遠ざかる背中にしのぶは小さく呟いた。
「ひいろさんを
助けてあげてください」
ーーーーーー
歩を進める。
斬らなければならない鬼が居る。
昔ここで共に戦った筈なのに。
兄弟子が心を寄せていた人なのに。
本当は斬りたくない。
本当は生きていて欲しい。
でも、、
もうその選択肢は選べなくなってしまった。
ーーあの夜殺した筈の下弦の陸の本に囚われ続けていた
なんて話だったら、
誰も悲しまずに終われたのかもな。
都合の良いことばかりが浮かんでは消え、その女々しさに思わず嘲笑する。
手を伸ばし引き戸を開けた瞬間に、嫌な気配を察して刀を抜き、迫ってきた気配を刀で受け止めた。
しかし、勢いが強く背後へと飛んで受け流した。後ろで枝が落ち、ワサッと葉音を立てた。
ーー切れ味やべェじゃねェかよ!
ひたひたひたと裸足の音と共に、社の中からは黒い影が現れた。緋い目だけが月明かりを反射していた。
「なんだひいろ、鬼を引き連れて猿山の大将ってか?」
「お手本に見習わせてもらってるだけですよ」
姿も声も記憶の彼女と差異は無いのに、立場だけが変わっていた。
「で、何人人間を喰った??」
「1人、2人なら許してやるとでもいうつもりですか?
そんな事、
どうでも良いでしょう?」
「そうだな。
お前を斬るって事に変わりはねぇ!!」
実弥は日輪刀を振り上げ、ひいろへと振り下ろす。
ーー風の呼吸 弐ノ型 爪々科斗風っ!
動きもしないのにひいろに傷はなく、実弥が初めに開けた社の引き戸がバラバラと崩れ落ちた。
「本当に私を斬る気があるんですか?
かすりもしないじゃ無いですか?」
睨みつける視線を向け、ひいろは大きくため息をつく。
「どれも喰った肉は不味かった。
、、、日々最悪の気分ですよ」
実弥は大きく目を見開いた。
自分で先程「何人喰った?」など聞いておきながら、不味かったなどそんな事は聞きたくなかった。
怒りで体がカッと熱くなる。
きっと今までで一番早く動けていることだろう。何度も刀を振り上げ、ひいろへと振り下ろす。爪で受けて弾かれ、それでも直ぐにまた振り下ろす。
「一点張りでつまらない。
柱?聞いて呆れる」
壱ノ型、弐ノ型、参ノ型と次々と向かっていくが、ひいろはそれを軽くかわしていく。
「っちっ!!
ちょこまかと動きやがってェ!!」
「風の呼吸は匡近をずっと見てたもの。
避けない方がむずかしい話です」
ふと見えた。
ひいろの表情が柔らかくなる瞬間を。
「下弦の鬼があぁぁぁああ!!」
「馬鹿っ来んじねぇ!!!」
平隊士が飛び出し、ひいろに斬りかかろうとしていた。しかし、実弥には平隊士の跡を追ってきた鬼の姿が見えていた
ーー間にあわねぇっ!!
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