下弦の壱、姑獲鳥を討った実弥を正式に柱として任命する為にと、現柱たちが招集されている柱合会議に実弥は呼び出されていた。

そこで初めて会う産屋敷耀哉に実弥はイライラを隠さずにいる。
兄弟子が同じ任務で死んでいるのに、その兄弟子が何よりも望んでいた柱に付けというのだ。

匡近の代わりにひいろを保護する為でもなく。
組織の為に。
ーーそんなモノに縛られてたまるか!

「いい御身分だなァ。産屋敷様よォ。
 白々しいんだよォ。
 隊員のことなんざァ
 使い捨ての駒としか思ってねェくせに」

「ごめんね。

 叶うことなら、私も君たちのように
 体一つで命を守れる強い剣士になりたかった。
 君たちに辛いことをさせてすまない」

自分は体が弱くて戦えない。
だから代わりに戦ってもらっている。
でも、自分は決して偉いわけではない。
君たちが捨て駒なら、私も捨て駒であり、
鬼殺隊という組織の駒の一つ。
私が死んでも何も変わらない。

「私は、偉くもなんともない。
 私の命よりも、人の命を守っておくれ」

実弥は、耀哉の発言に驚かされた。
そして、耀哉は匡近だけでなく、ひいろの事も知っていた。

「ひいろさんの事は
 なんて言えば良いのか分からないけれど、
 柱には発言力と、
 行動にある程度自由が認められる。
 実弥は心に決めている事があるのだろう?

 ならば柱という地位を利用すれば良い

 引き受けてもらえないだろうか?」

気付くと実弥は耀哉に膝を折っていた。


「私は実弥の想いを尊重したいと思っているよ」
言いたいことがあるのだろう?と促された実弥は立ち上がると、匡近が残した遺書を握りしめる。

「ここに居る全員覚えとけ。
 下弦の陸には手ぇ出すんじゃねぇぞ

 アイツは俺がこの手で頸を斬る。


 勿論他の鬼も。

 醜い鬼共は俺が殲滅してやる」



ーーーーーー

なかなかひいろの行方を掴む事はできず、いつの間にか風柱と呼ばれる事にも違和感がなくなっていた。

後藤にも任務の傍、ひいろ探しに協力してもらっていたが、それでも彼女は居ない。
しかしそれから更に時が経ち、匡近の死から一年を迎えようとしていた頃、妙な鬼の動きを掴む。

群れることのないはずの。鬼の群れ。
被害は広がるのに、鬼殺隊を煙に撒く。

実弥は小さく舌打ちをした。

ーーーーーー


「……チッ。何の用です?」
暗い外套に身を包んだ赤目の鬼は、目の前にいる鬼を睨みつけた。

「いい加減その態度を改めたらどうだ?
 私とお前は最早敵同士ではあるまい?」

鬼舞辻はひいろの髪を一房指に絡める。

  パンッ!!!
音を立てて鬼舞辻の手は払われ、ひいろの視線には一層の鋭さが増す。

「私はアイツを殺したいだけ
 アンタと馴れ合うつもりは無い」

「そんな事を言いながら、
 鬼を集めて私を裏切るつもりはあるまいな」


「っふあぁははは。
 鬼の頭ともあろう貴方が怖いのですか?」


ひいろの本質を歪めるその血鬼術で、鬼たちは群れることを厭わずにある場所へと集まっていく。目的地へ向かうよう仕向けているだけで、一体一体を操っているわけでは無いため鬼たちは人も襲うし、鬼同士の争いも勝手にする。

鬼同士が争って数が減る、そんな事はひいろにとってはどうでもいい。
昔から"蠱毒"と言うものがある。小さな入れ物に生き物を閉じ込めて共食いをさせる。そうして残ったものは強力な毒へと変わるらしい。
毒にならずとも、方法は違っても、残った鬼は強くなる。
それが鬼殺隊へ牙を向けば、、、


「でも安心してください。
 貴方の頸に用は無い。

 そもそも、私は貴方を手本にしてるだけ。
 他の手を使って目的を達するの。
 少なくとも私は弱いから。
 こうやって生きていくしかないのよ。

 手本と言われるが嫌なら自ら出て戦えば良い。」

ひいろは平気で鬼舞辻に悪態をつく。
他の鬼舞辻に心酔する鬼が聞いたらひとたまりもないだろうが、鬼舞辻自体はさして相手にする事はなかった。

「そろそろ鬼殺隊の奴らも追ってくる。
 楽しみだなぁ。」
手を広げてひいろはくるくる回る。
さも楽しそうな姿に鬼舞辻は興味を無くし視線を外した。


ーーね?……不死川実弥

  ここまでおいで
  私はここに居る、、
 




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