本当に、あいつは鈍感にも程がある。
職場に早く着いてしまい、始業時間まで時間を持て余している。
今日は来客があるのか、始業前だというのに忙しそうに足を動かす総務の人たち。俺は俺でパソコンを立ち上げ、一日のスケジュールと溜まっているメールに目を通した。
「おはようございます!」
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「なんや具合でも悪いんか」
「……や、ちょっと人に酔って」
社会人二年目にもなって電車で人酔い。顔も上げられずベンチで俯いていると、声の主の足音は遠ざかった。気にしなくていいのに、とそのまま動けずにいるとまた先程の足音が近づく。
「冷たい水、飲めます?」
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「またオサムくんのとこ?」
「うん!」
「新作のお菓子やったら教えてな」
「りょーかい!」
……あれはいつだったかな。放課後中庭でお菓子を食べながら友達を待っている時、不意に声をかけて来たのがオサムくんだった。ゲームに夢中になっていたためびっくりして顔を上げれば、横に置いていたお菓子に釘付けになっている彼。
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