交渉


蝶屋敷の門へと続く道、アオイとナホを抱え、カナヲを引きずりキヨ、スミに群がられている宇髄の前に柚充は立っていた。
「その羽織も派手に見慣れてきたな。」
「そこじゃなくて、天元様。
 アオイとナホを離して下さい!」
「人にモノを突きつけて言う事か?」

「壊さないで下さいね。
 時透様に作ってもらった紙飛行機なんですから。
 よく飛ぶんですよー」
「仲良しかっ!」
「だって、刀突きつけたら隊律違反になりますでしょ?
 隊律違反は流石に実弥様に殺されかねないので」
「派手にえげつねぇ事いってね?
 昔は可愛げあったのになぁ」
「お褒め頂き光栄で。私少々怒っています。
 ナホは隊士じゃないし、
 アオイは別な仕事をこなしています。
 連れていくのはやめていただけません?」

宇髄は抱えていたナホを「じゃあいらね」と放り投げた。
そして空いた手は柚充の顎に添えられる。

「やっぱ派手に面白れぇな。柚充は。嫁に来るか?」
「もれなく保護者の実弥様付きますよ?」
宇髄を直視する形になるが物怖じせずににこりと笑う。柚充にとっては慣れたものである。

「でも地味に残念だけどよー。
 柚充が来ても、1人じゃ足りねーんだわ。
 だからコイツは連れて行く。」

「人さらいですーっ!助けてくださぁい!」
「あの馬鹿ガキ…」

すると柚充の目の前に炭治郎が降ってきた。宇髄はアオイを担いだまま炭治郎から距離を取る。その姿は門の屋根へと移動していた。柚充は背に庇われる行為が"新鮮だわ"なんて呑気な事を思っていた。
「愚か者。元忍びの宇髄天元様が
 お前の鼻くそみたいな頭突きなど喰らうと思うか」

ーーそれ、実弥様くらったんですけどね。

炭治郎は宇髄に頭突きをしようとしていたらしい。
「アオイさんを放せ。この人攫いめ!
 柚充、大丈夫か?」
「あ、うん。平気」

「てめーら、誰に口効いてんだコラ!
 任務で女の隊員が居るから連れて行くんだよ!
 継子じゃねえ奴は胡蝶の許可も必要ねぇしな」
「え?天元様?
 私、割とあちこちふらふら任務出てますけど?」
「………それは、
 お前が派手に好き勝手やってるだけだっつーの!!」
「そーなの?!初めて知りましたよ!」
「おまえなぁ……」


「だったらアオイさんの代わりに俺たちが行く」
善逸と伊之助が宇髄を挟むように竹垣の上に現れた。さすが実質蝶屋敷の住人といったところだ

「あっそォ。じぁあ一緒に来ていただこうかね。
 ただし、絶対俺に逆らうなよお前ら」

アオイを返却し、柚充の所で一度止まると「柚充は先に潜入開始しとけ」と肩を叩いた。

「はーい。仰せのままに。
 じゃ、またあとでねー」

柚充は小さく手を振ると走ってその場を後にした。

「で?どこ行くんだオッさん」
伊之助の問いに宇髄はニッと笑った。
「日本一色と欲に塗れたド派手な場所。
 鬼の棲む遊郭だよ」

「!!!柚充ちゃん分かってて行ったの!?」
「たりめぇだろ。まぁ、初めてじゃねーしな」
「おまっ!!柚充ちゃんになにさせとんじゃ!」
「口の利き方派手に気をつけやがれ」
「むもももももーー」

片手で両頬を掴まれ善逸はアヒル口状態になっていた、

かくして遊廓潜入の幕があがる。
 




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