遊郭2
善子は悩ましい事に気づいてしまった。
三味線や琴を死ぬ気で練習していた時は気にならなかったが、此処には独特の音がある。そういう事を致す事が主な目的の場所であるから無理はないのだか何にしても辛い。
「?どうしたの?」
部屋の真ん中で耳を塞ぎ善子が、うずくまっているのを柚充は発見した。近くに行って顔を覗き込むと顔が赤い。
額に手を当てて顔を上げさせると、その目には涙が溢れそうだった。
「ごめん。」
耳を塞ぐ手の力は緩まない。
柚充は気づく。耳の良すぎる善逸は遊廓の"音"に苦しんでいることに。
そんな善逸の体をまるで子どもをあやすように包み込んだ。背をトントンとたたき拍を取る。
【 菜の花畠に入り日薄れ
見渡す山の端霞ふかし
春風そよふく空を見れば
夕月かかりて匂い淡し
里話の火影も森の色も
田中の小路をたどる人も
蛙のなくねもかねの音も
さながら霞める朧月夜 】《朧月夜》
「柚充ちゃん?」
「もう怖くない」
「……なんで歌?、、」
「音にには音、、かなと?」
ニコッと笑ってみせると、柚充は善逸から手を離す。
善逸は確かに先ほどまでより楽になっているを感じていた。
そして、ここで一つ気づく。
ーーあれ?柚充ちゃん俺のこと抱きしめたんじゃね?
耳元で響いていた柚充の声が蘇り、一気に恥ずかしくなってきた。なんとなく熱くなる頬を隠したくて柚充に背を向けると、自らの手で両頬を叩いた。
「ぜ、善子?!」
「柚充ちゃんさ、
なんで遊郭(ここ)の潜入なんて引き受けたの?
だって、女の子だよ。
鬼だけじゃなくいろんな意味で危ないじゃん!!
ってか憑き物って何!風のお、」
しーっと口に人差し指を立てて言葉を遮る。
「私にとってアオイも大切だし、天元様のお嫁さん達に
も恩がある。力にならない理由はないよ。」
その瞳は曇りなく澄んでいた。
「憑き物は、私の着物に嗅いでいると幻覚見る香炉が
焚きしめて有るから、
それで幻覚みるように誘導してるの。
しのぶ様の所で薬学も教えてもらったし、天元様から
忍びの事とか教えてもらった事があるから
それを活用ってところかな」
「にしたって、力尽くでって事だってあり得るでしょ?」
「柱には勝てないけど、
色欲まみれた一般人には負けないよ」
「君はそうやっていつも強がる……」
「何にしても任務。絶対尻尾掴む」
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