遊郭3
京極屋広間にて琴の音色と共に柚充の口から唄が紡がれる。
それは1人の女の恋を唄にしたものだった。
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遠い遠い昔の話。
1人の女がおりました。
容姿は可憐で女を娶ろうとする輩は後を断ちません。
しかし女は誰1人にも首を縦に振る事はありませんでした。
女はすでに恋をしていたのです。
それはきっと一目惚れ。
どこか遠い目をした儚い姿に目を奪われたのです。
女は男の微笑む顔が見たくなりました。
しかし男が微笑んでくれる事はありません。
長きの苦しみに笑う事を忘れたと男は言います
ならば私と見つけましょう。
女は手を取り微笑みました。
女は男の元へ通い続けます。
しかしそれもやがては終わりが来ました。
男へ狼が牙を剥いてます。
女は自身を構う事なく狼の前に立ちはだかり
その牙に引き裂かれてしまいました。
命を救われた男は女に問います
あなたの望みは何かと。
血濡れた女は男にこたえました。
あなたの微笑みと命一つ。
男が微笑むことができたのか、そして
男と女がどうなったのかは定かではありません。
しかしきっと、会うことが叶わなかったとしても
女は男との短い逢瀬を支えに
生きてゆくのです。
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その声はとても澄んでいて、広間に居た全ての人が引き込まれていた。
「夏椿には"はかない美しさ" "愛らしさ"って意味が
あるんだ。ピッタリだろう?」
善子の隣で姉女郎はそう口にした。
「あの子が唄うと一夜分とまではいかないにしても
大量のお捻りがあつまる。
だからあの子は特別が許されるのさ」
それが、店に不都合がない理由だった。
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ーー睨まれてる感はあるんだけど、ただの嫉みなのか、
鬼関係なのか、、。
琴の手入れをしながら気配を探り続けていた。
ぽやーっとしていても、夏椿はこんなもんだと思われいる為、誰も気にしない。
「夏椿。今日も御盛況でした事。
何でこんな小娘に皆夢中になるのか理解に苦しむわ」
「もちろん蕨姫花魁の美しさを目当てに来たお客様の
時間潰しですから、わたしの手柄ではありませんよ」
「その声だけは認めてあげないでもないけど」
蕨姫花魁の手が柚充の顎に添えられる。
「…食べてしまおうかしら?」
「……嫌ですわぁ。
わたしは蕨姫花魁の声のほうがうらやましいんですよ」
少し目を伏せて笑うと、蕨姫花魁は満足そうに頬笑むと、もう興味はないと言わんばかりに手を振り払って去っていった。
ーー鬼はここか、、
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