遊郭4
廊下を急ぎ足で進む。
善逸の姿が見えないのだ。
しかし、怪しまれてもいけない。
ここには鬼がいる。しかし雛鶴さんの手がかりは掴めていない。
廊下を曲がった時、人とぶつかりそうになった。
白い帽子を被り、黒い上着を着た男性、、
途端に背筋に冷たいものがはしった。
本能が逃げろと警告する。
ーーニンゲンじゃない……この姿、、
唯一鬼舞辻無惨と会っている炭治郎から聞き出された情報は、全隊士に通達されている。
柚充の中で照合された結果を、喜べば良いのか、悲しめば良いのか、、
そのまま逃げてしまえば、自ら怪しんでくれと言っているようなものである。
動揺を必死に隠して声を掛ける。
「申し訳ありません。急いでおりまして
お怪我はありませんか?」
「大事無い。」
柚充と目があった瞬間、色の白いその顔に何故か驚きの色が浮かんだ。
「きみは………どこかで会っただろうか?」
「な、夏椿と申します。広間でお見かけ頂いたのか、、
もしくは……夢の中でございましょうか?」
笑顔を貼り付け上等文句を口にする。
「興味深い事を言うのだな」
ーー興味持つな!丸腰じゃどうにもならないってのに!!
「どこだい夏椿!今日の御座敷の打ち合わせの時間、
言っておいたじゃないか!夏椿ー?!
はぁ……あの子また迷子かしら?」
遠くで柚充を呼ぶ姉女郎の声がする。
だんだんと客が集まり始める時間が近づいているため、大声で叫ばせ続けるのも考えもの。なにより現状から脱する為には助かったとしか言えない。
「!!申し訳ありません。
呼ばれておりますので失礼いたします。」
呼ぶ声を理由にその場を後にしようとするも、着物を掴まれた
「お前は誰だ…。」
問いの意味も引き止められた理由も、何もかも意味がわからない。
「な、夏椿と…」
名乗っても着物を掴む手は離れてはくれなかった。刀を振っている手はどう頑張っても隠し様ないため手を掴まれなかった事が幸いではあるが、着物を掴まれていればこの男、鬼舞辻無惨から引く事が出来ない。
「離してくださいませ。呼ばれておりますゆえ、、」
しかし、一向に無惨は動かない。
ーーもう!一か八かどうにでもなれ!!!
振り返り手を極力引っ込め、着物の両袖口で挟むように無惨の手を取る。
「また、お会いできる日もありましょう。
ですから、今は離して下さいませ。」
小首を傾げ笑ってみせると着物を掴む手がゆるんだ。
その機を逃さず「失礼いたします」と、言葉を残し呼ぶ声へ急ぐ。
無惨の視線が向けられている事を背に感じながら兎に角急いだ。必死で足を動かす。心臓を掴まれているような、気道を縛られているようななんとも言えない息苦しさに襲われていたのだ。
ーー止まるな!振り返るな!足を動かせ!
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