遊郭5
ーー大切にしてたのになー。
柚充は紙飛行機を開き、筆を走らせる
蝶屋敷で宇髄に突きつけたあの紙飛行機。
あの時はこんな事になるなんて思ってもみなかった。
姉女郎に捕まり、定期連絡に向かうことができない。
この紙飛行機なら必ず届いてくれるはず。柚充はそう信じている
【京極屋蕨姫花魁、鬼。
善逸行方不明。雛鶴さん掴めず
柚充、無惨に遭遇。
鬼殺隊とは気付かれていない】
窓から紙飛行機を飛ばした。
鴉が紙飛行機を掴んで飛んでいくのが窓から見えた。
「あとは頼んだよ…ひかた。」
自身の鎹鴉に託す。
ーーーーーー
姉女郎から解放されると、再び任務の為に動き出す。
ーー善逸はどこなんだ…蕨姫花魁の部屋に秘密でも有る?
気配を消して蕨姫花魁の部屋を覗き込む。
ーー誰も、居ない
フゥと息を吐く
「っ!!!」
気づいてしまった。鬼のドロドロとした嫌な感覚。昨日振り切ったあの人。
ーー鬼舞辻無惨…。
ーー失敗した!何としても天元様と合流を優先するべきだった…
「また会うとは思わなかったか?」
「い、いえ。お客様が来てくださるならお会いできると
思っておりました」
左手首を掴まれ壁側へ追い込まれる。手は握って見られない様にはしたが、背中に壁が当たった時、柚充は崖の上に立っている気分だった。手が震える。
「ああ、憑き物付きの生娘とはお前の事だったか
ならばここで奪ってしまうのもまた一興」
空いている手が顎へと添えられ顔をクイと上げさせられる。
「…嫌」
「嫌?ならばお前は何故ここにいる?」
「…….っ!!」
ーーここで正体がバレたら
私は無惨の情報を持ち帰る事が出来る?
………それ以前に、実弥様の所に帰れる?
頭の中で何度思案し直しても結果は"否"
一人では太刀打ちできない。
無惨の唇が柚充の唇を塞いだ……。
柚充の目から涙が溢れ出す。
「何故、そんな顔をする?
何故、涙をながす?
お前は笑っていたはずだろう?」
「………誰の….話……」
「……はて?…私は誰の事を言っている?」
「、、何を言っているの?」
「お前だろう?」
「私はあなたのことなんて知らないし、
知りたくも無い!!」
あまりにも頭にきて、遊郭潜入中で、お客として対応しなければならない事が吹き飛んでしまった。
「っ!!ぁぁ………は、、な、せ、、」
ーー動きが、、見えなかった………
無惨の手は柚充の首を掴み上げ、その体は足が床につかずぶらりと浮いていた。
無惨の顔には血管が浮き出て明らかに怒りの色に染まっている。
「ぁぁ………」
「どうする?首(こうべ)を垂れて非礼を詫びるか?
このままでは死ぬぞ」
ぎりぎりと聞いたことのないような音が聞こえる。視界の色が抜け始めていた。
ーー首(くび)を、、掴んでおいて、
首(こうべ)をって、、無理だっての、、
こんな状況でも、もの申したくなるのは我ながら困った性格といえる。
柚充の喉から漏れ出る声に、無惨はなぜかハッとした表情をした。
「死ぬ?……あれは死んだ、、
ならばこれは?……私は、何を、、」
柚充の苦しむ顔を見て無惨の手が緩んでいき、その身体は力なくどさりと床に落ちた。
「違う、、違う、ちがう、ちがう…」
無惨は突如取り乱し柚充をそのままに消えていった。
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