遊郭8


炭治郎の目に首の落ちた堕姫と柚充の小さな後ろ姿が映る。

ーー斬った!!頸が落ちてる!!
  俺はあんなに苦労したのに。
  風柱の継子…… 柚充。
  一体どんな鍛え方してるんだ、、

「おい。戦いはまだ終わってねぇぞ。
 妹をどうにかしろ」

宇髄の声に炭治郎は現実に引き戻された。禰󠄀豆子が暴れ出す。バタバタ畳を蹴る音を背に尚も柚充は堕姫から目を離さず睨みつけていた。

「あんた私の事睨みつけて何様のつもりよ!
 よくも私の頸斬ったわね!
 タダじゃおかないんだから!」
「まだギャアギャア言ってんのか
 もう用はねぇよ。地味に死にな」
「ふざけんじゃないよ。私は、、私は上弦の陸だもん。
 あの方に気に入られて、
 数字も貰ってアタシ凄いんだから!!」
堕姫がまるで幼い子供のようにわんわん泣き出す。

ーーなんで頸が落ちてるのにしゃべっていられるの……

「お前の言うあの方が鬼舞辻だっつーなら、
 そこの柚充も気に入られてるらしいぜ?
 2度も会いに来たらしいからなぁ?

 唇の一つでも奪いに来たんじゃねーの?」

「「なっ!!!」」

柚充は反射的に腕で唇をぬぐってしまった。

宇髄は思った「まじかーーー!!」と。
そして堕姫も察してしまう。そしてそれは確実に堕姫の怒りの対象であった。

「何言ってるんですか!天元様!!
 私は鬼舞辻に気に入られてもなんも
 嬉しくないしむしろ、、、」

「その声、、夏椿。
 やっぱりアンタなんか先に殺しておけば良かった!!
 アンタが気に入られてる?そんなわけ無いでしょ。
 ふざけた事言ってんじゃないわよ!!
 ……許さない。許さない。許さない。
 私がアンタを殺してやる」

正に鬼の形相で堕姫は柚充を睨みつけていた。
堕姫の声がどんどん冷ややかな音へと変わっていく。
「死ね!死ね!死ね!みんな死ね。
 お兄ちゃん。起きて!。柱もあの女も殺すんだから!」
堕姫の背中あたりが妙な形に盛り上がっていく。それはだんだんと人の形を成し唸り声まで発した。柚充は宇髄の動く気配を背に感じ刀を構えた。

しかし

その体は突然宙に浮く。柚充は宇髄に首根っこを掴まれ外に放り投げられたのだ。その体は向かいに建つ廓、二階の障子を背中で破り畳を転がった。
飛ばされながら目の端に堕姫が泣き喚きながら柚充を睨んでいたのが見えた。
「天元様っ!!なんで!!」 
突然戸を突き破ってきた柚充に部屋にいた男女は信じられないと部屋の隅へ逃げていく。

ーー人がまだいる。

「命が惜しければ今すぐここを離れて!!」


《俺は派手にハッキリと命の順序をきめている。
 まずは嫁ら三人。次に堅気の人たち。そして俺。
 柚充は、、、隊士なんだから
 自分ことは自分で守りやがれ》

ーーって言ってたのにさ。
  なんだかんだでかっこいい人だわ!

投げ込まれた先の部屋や、二階の部屋にいた人たちには十分おかしな事が起きていると伝わり粗方逃げ出させる事が出来たが、目前にしていない一階の人には柚充が「今すぐ此処を離れて」と言っても聞こうとしない。
刀でも振り回してやろうかと頭の片隅に浮かんだが、それで裁判にかけられるようなことがあっては実弥に顔向け出来ないので選択肢から除外した。

歯痒さに唇を噛んだ時、廓の二階から屋根を突き破る音が一階の人たちの耳に届いた。
その顔がみるみる青ざめ柚充が頷くと蜘蛛の子を散らすように走り出す。
尚も聴き慣れない暴れ回る音が響く。

ドン!!!

ーー間に合った。

二階の床が抜け、宇髄が降ってきた。
『曲がれ飛び血鎌』
残っていた遊女と客を逃がす事に気を取られ、宇髄は妓夫太郎の攻撃に一拍遅れた。

血鎌に向かう緑の影、、

「参ノ型 晴嵐風樹!!」
その風は血鎌を吹き飛ばし、宇髄に驚きと一瞬考える時間を与えた。

間を置かず宇髄は火薬玉を二階へ向かって投げ日輪刀で切る。
切られた火薬玉はまさにド派手に打ち上がった。
宇髄と柚充は穴から二階に飛び上がる。これで片付くとは思っていなかったが、二階では妓夫太郎を守るように堕姫が帯玉を作っていた。

「まぁ、一筋縄ではいかねぇわな、、」
しゅるしゅると帯玉が解けながら一本の帯が宇髄へと向かってくる。柚充は一歩前に出ながらその帯を斬り伏せた。
『俺たちは二人で一つだからなあ』

解かれた帯玉の場所には妓夫太郎。そしてその後ろで堕姫が柚充を睨みつけていた。
 




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