帰還2



目が覚めてから更におよそ3週間の入院となった。退院してからも直ぐに任務に戻る事はなく、不死川邸で2週間程、軽い鍛錬を続ける日々を過ごしている。内臓の損傷であったから、復帰は慎重に計られていた。蝶屋敷では伊之助に続き、炭治郎も目を覚ましたとひかたが教えてくれた。
大事な羽織は肩の破れ目を補綴して貰うために縫製担当に回されている。


柚充は普段着を纏い縁側で膝抱えてすわって、蝶屋敷の療養中に訪れた変わった客を思い出していた。そのお客はネコ。どこからどう見てもネコ。
背に箱のようなものを背負い、首輪に赤で不思議な模様が描かれたお札を吊るしたネコが禰󠄀豆子と一緒に現れたのだった。
背の箱を開けると、手紙と棒状の何かが入っていた。



突然のお手紙失礼いたします。
私は珠世と申します。
鬼舞辻無惨に鬼にされた医者であり、その鬼舞辻を倒す為、そして禰󠄀豆子さんを元に戻す為にも炭治郎さんに鬼の血を集めてもらっての研究をしています。
大変失礼な申し出とは思いますが、貴方の血を調べさせて頂きたくお手紙を差し上げた次第です。遊郭で炭治郎さんから鬼の血を受け取った際、その茶々丸が何かを感じ取ったのです。
手前勝手なお願いではありますが、協力頂ければと思います。




手紙を読んでいる間、禰󠄀豆子とネコは戯れあっていたようだ。禰󠄀豆子がこんな姿をするのならば手紙の珠世という人は信用するに値する人だと柚充は判断する。
しかし、直ぐには踏ん切りがつかなかった。
鶴梅のこと、悲鳴嶼から聞いた話、そして遊郭で気を失った間のこと。まだ頭の整理がついてはいなかった。

何より文面に書かれた"鬼の血を研究"と言う言葉。足踏みするには柚充には十分な理由。

「茶々丸、、で良いのかな?
 あの、、少しだけ考える時間を頂戴?
 まだ心の整理が付かなくて…」

「ナーァ」

茶々丸は一声なくとぴょこぴょこと病室を出ていった。禰󠄀豆子が頭を差し出してきたが柚充は頭に疑問符を浮かべる。すると禰󠄀豆子は柚充の手を握って自分の頭へと導いた。

ーーあ。なるほど。

「茶々丸を案内してくれてありがとうね」
頭を撫でると、満足そうに笑って禰󠄀豆子も病室を出ていった。


ーーーーーー


手の中の採血器具。
棒状のそれを見つめると、何度目か分からないため息をつく。まだ踏み切れなくて隣に置いていたポーチの中に突っ込んだ。

空に月が浮かんでいる。

ーー早く任務に戻りたいな、、

心の迷いに気づかないふりができるから。
目の前のことに集中し続けさえいれば良くなるから。

ーー私が誰かなんて考えなくて良くなるから……
 




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