闇堕ち2
とある隠の里。里の者でもその奥まった場所にある庵にはなかなか近づく事はない。
ここには数ヶ月前まで眠り続ける鬼が居た。
しかしもうそこは役目を終え、通う人もいないただの建物にかわっていた。
そこに一人の男性が訪れる。
しかし鬼がいた形跡も、鬼となる前の姿の痕跡も何一つ残されていない。
あいつが来てから鶴梅が変わってしまった。
あいつが来なければ鶴梅は変わらなかった
あいつが居なくなれば鶴梅は元に戻る
あいつが………死ねばいいんだ。
あいつを殺す為に鬼を里に引き入れたのに
何故鶴梅が死んで、あの小娘が生きていた?
何故鶴梅が鬼となって眠っていた?
そうか鶴梅がアイツを殺せばいいんだ!
柱にも斬れなかった。
ならばアイツに斬れるはずがない!
アイツが逃げ出す事は許さない
アイツを殺すのは鶴梅だ。
そして俺も鶴梅に殺される。
それで俺の心は満たされる。
なのに……
なぜ……まだアイツは生きている?
なぜ……アイツは笑っているんだ?
なぜ……俺は生きている?
鶴梅がいないこの世界で何故?
『小さな隊士を連れておいで?
愛しい人に会わせてあげよう』
人であっても闇へ落ちる
深く深く堕ちていく……
ーーーーーー
「柚充さん。おはようございます。
どこか痛むところなどありませんか?」
「……千寿郎くん?」
視界の端でシュルシュルと白い影が動く。左手を肘で曲げて立てると手に巻きつく感覚があった。
「鏑丸…今日もきれいだねぇ」
柚充がふにゃと笑う。
しかし体を起こそうにも鉛のように重くて動く事ができなかった。
「気にせずに横になっててください。
きっと疲れが溜まっているんですよ。」
「私はどうしてここに?」
「伊黒さんが、連れていらしたんです。
鏑丸が見つけたって言ってました。」
視線を巡らすもののその人は見つからない。
「伊黒さんでしたら、不死川さんの所へ話に行かれました。
鏑丸は柚充さんと一緒に居たいみたいだから
置いて行くとの事です。」
千寿郎の口から出た不死川という名前を聞いて柚充の目に悲しみの色が差す。
「やはり、鬼殺隊は辛いですか?
僕はなれませんでしたし、兄上はそんな事は
話してくれなかったので……」
「……たぶん、、、痛いし、眠いし、
大変なことばかりなんだと思うよ。
でもね、私は間違った道は歩いてないと思う」
「普通の女の子の様に過ごしたいとは
思わないんですか?」
「普通ってなんなんだろう……
私は今の私が普通だと思ってるから、思わないかな。
鬼を斬って人の幸せを守る。って決めたから。
もし生まれ変わってもまた鬼殺隊の道を選ぶと思うよ。
……ってそこまで鬼舞辻を
生かしておくつもりはないけどさ」
「また杏寿郎様にも会いたい」
「……柚充さん、、」
千寿郎が袴を握りしめた。
「僕では柚充さんの心の支えにはなれませんか?」
「…千寿郎くん?」
「僕は兄上みたいに戦う事はできないけれど…
「もう、支えてもらってるよ。
伊之助が言ったの。
その羽織は煉獄様が守ってるんだから
怖いものなんてないだろって。伊之助は知らないけど、
風ぐるまを入れてくれたのも、また着られるように
してくれたのも千寿郎くんだもの。
だから私は戦って居られるんだよ」
柚充は体を起こした。鏑丸が柚充の肩に落ち着いた。
「すごく感謝してる」
ニコリと笑う柚充に千寿郎は少し悲しげに笑った。柚充がこれ以上この話題に踏み込まないように線を引いたから。
千寿郎には分かっていた。柚充の中の特別は自分ではない事が。特別になれるに越した事はないのかもしれない。でも、千寿郎は自分が一番になる事よりも柚充が幸せに笑っていられることを選ぶ。
「やっぱり敵わないですね」
ーー兄上。後悔はしてません。
だって柚充さんは笑顔が一番似合うんですから
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