闇堕ち3
柚充の肩で落ち着いていた鏑丸が動き出し、縁側へと続く襖の前で「開けて?」と首を傾げた。障子を突き破らないとても賢い蛇さんである。
千寿郎が襖を開くと庭に伊黒と実弥が居た。
鏑丸が伊黒の肩へ戻って行くと、伊黒が千寿郎に向かって頷く。千寿郎は柚充にも二人が見えるように両の襖を全開にしていった。
背中の方で柚充が気まずそうに呟く声が聞こえたが千寿郎は知らないふりをした。
伊黒に肩を押され実弥は一、二歩柚充の居る部屋に近づいた。と言っても柚充と実弥の間には4、5mの距離がある。
「………柚充はどうしたい?
鬼舞辻と遭遇した事で、任務が怖いと言うなら
俺は無理に隊士を続ける必要はねえと思う。
それでも続けんなら、
恐怖にも負けねぇように鍛錬するまでだ。
それに、、
………例え出自が分からなくても、
俺は俺の見てきた柚充を信じる。
そう決めてんだ。
お前はもう一度刀を手にするか?」
実弥が差し出すその手には柚充の日輪刀が握られていた。
《見てきた柚充を信じる》
実弥の言葉がじんわりと柚充の心に染み込んでゆく。重くて仕方なかった体がかるくなった気さえする。
布団から立ち上がると一歩目こそは少しふらりとしたが、その後は危なげもなく縁側へ出た。
「私は鬼殺隊士で居て良いんですか?」
「ダメだとも、ヤメロと言った覚えはねぇよ」
「……私は強くなれますか?」
「強くなりてぇなら鍛えてやらぁ」
実弥が風呂敷包みを投げて寄越す。
包みを開くと柚充の口の端が上がる。
ーーそうだ。下を向くな。心を燃やせ。
常盤色の羽織を纏う。視線を感じ肩越しに振り返ると千寿郎と目があった。
柚充はもう大丈夫だよと千寿郎に向けて笑った。
柚充は実弥の方へ歩き出す。裸足なのを構いもせずに庭へ降り、実弥の差し出す日輪刀へ手を伸ばす。
しかしその手は刀には届かなかった。
柚充の足が地面から離れる。
「………さ ねみさま、、」
伸ばされた柚充の手を掴むものも何も無かった
ーーーーーー
目の前で柚充が何者かに連れ去られた。
あまりに突然のことすぎてその場の誰もが理解できず動けなかった。
確認できたのは連れ去った者の背に刻まれた"隠"の文字。
「爽籟!柚充を探せ!!
煉獄弟!要をお館様のところに飛ばせ!
伊黒っ!」
「分かっている」
これは柚充お得意の"鬼ごっこ"や"かくれんぼ"ではない。
何かが起きている。
隠が継子を攫うなんてそもそも起きる事ではない。なぜなら継子は柱の庇護の元にある存在。それを攫うとは柱に牙を剥くこととほぼ同意義となる。ならば何故?
伊黒、実弥、千寿郎それぞれが出来うる最大のことをするために地を蹴った
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