闇堕ち4


ーーここはどこ?

目の前には複雑な空間が広がっていた。
縦にも横にも広がる部屋の数々。どこに繋がっているのか分からない階段に廊下。重力のかかる方向が突然変わり別な方向へ落ちてしまうのでは無いかと不安な気持ちにもなる。

「隠さんどういうつもり?」
座り込んでいる柚充はどこか遠くを見ている隠を見上げた。ぶつぶつ何かを呟いているようだったが、その声は届かない。
「ここはどこなの?!」
隠の顔だけが柚充を向く。
異様な光景に見えて背筋に冷たいものが走った。


「ここならば邪魔も入らない。
 やっと鶴梅の仇が取れる……」
「…仇、、、」

「何が不思議だと言うんだ。
 鶴梅をニ度も殺したのはお前だろ?
 一度は鬼に。二度目はこの世から消した。
 お前さえ現れなければ、
 鶴梅が死ぬ事なんて無かったんだ!!」
血走った目が柚充を捉えその手にはいつの間にか短刀が握られていた。

腰に手をやるもののそこに日輪刀は無い。実弥から受け取る前に隠に攫われたからである。それに今は羽織は着ていても隊服でもなく、己を守るのは己のみと言った状態だった。それでも心が折れずに居られるのはきっと、、
ーーこの羽織のおかげ

柚充は立ち上がるとその顔に笑みを貼り付ける。虚勢だって構わない。心が折れてしまえば動く事もままならなくなってしまう。だから己をも騙す。訳の分からない空間を走り出す。

思っていたより隠の動きは早かった。連れ去られた時も不意打ちとはいえ柱2人を振り切ったのだ。柚充は思い切って縦に伸びる床に向かって飛び上がる。床の面に合わせて重力の向きが変わった。柚充は初めての感覚に対応しきれず床に転がった。すぐに立ち上がり隠をその目に捉える

「鶴梅は殺したくせにお前は命が惜しいのか」

ーー逃げているだけじゃなんの解決にもならない

「惜しいに決まってるでしょ!!
 母様に恥ずかしくないように生きるって決めてるの!」

短刀を振り回す隠の背後を取るべく動き出す。しかし相手も鍛錬を積んでいるだけあってそう簡単にはいかない。短刀を避けつつ間合いを詰める。短刀を手から落とすために隠の手首を蹴り上げた。一度手から離れたが喜んだのも束の間、隠が上に短刀を放っただけで再びその手に収まってしまった。
「ーーチッ!」

振り下ろされる短刀を避け、柚充は飛び上がった。
「っ!」

ーー高く飛びすぎたっ

飛び上がった時に別の重力範囲に囚われ受け身を取ることなく背中から床に墜落してしまう。予想もなかった痛みに声すら出なかった。

ーーまずい、動けないっ……

その目に隠のニタリと笑った顔、そして握られた短刀が降って来るのが見えた。

ーーあぁ。ここで死ぬのか、、怒って逃げずに
  実弥様の話、ちゃんと聞けばよかった、、



柚充の白いシャツと袴が赤く染まっていく、、
 




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