闇堕ち5


ぼたぼたぼたぼた。

ーーこれは本当に"人だった"のだろうか、、、
柚充の服の上に肉塊が落ちてきた。

「うっっーー」
胃の奥から酸っぱいものが込み上げる。耐えきれずに胃液を吐き出してしまった。

『連れて来いと言ったのに、
 殺そうとするとは人もまた愚かな生き物だ』

「……無惨、、」
この声は知っている。柚充は鬼舞辻を睨み上げた。

『何故そんな顔をする?
 その男を切った事で咎められるのはおかしい事
 ではないのか?そいつが死ななければ、
 お前がそこに転がっているはずだった。

 死なずに済んだ事をありがたがられる事があっても
 憎まれ口をたたかれる筋合いはない。

 鬼が人を殺めるのは罪とされ
 人が人を殺めるのは罪ではないのか?
 
 ならば鬼と人の違いはどこにある?
 喰うか、喰わぬかだけではないか?

 それならば食糧として人を殺す鬼の方が
 筋の通った事と言えるのではないか?』

「罪のありかのを言い合う気はない!!
 私が刺されて死のうがあなたには関係がないでしょう?
 何故私を生かした!」
『お前が記憶の中でちょろちょろするからだ』
「はぁ??
 意味わかんない事言わないで!
 不幸を撒き散らす元凶なんてさっさと死に腐れっ!!」

『お前は自分の立場というものが分かっていない』
その言葉が耳に届いた瞬間その言葉の意味を嫌でも理解した。
ーー上弦の鬼がいる。気配が一つじゃない、、

その禍々しい気配に冷や汗が流れた。

『先程お前も言っただろう?
 お前はただ生かされているだけだ。
 口の聞き方には気をつける事だ』

「……私達が……鬼なんて滅してやる!」

柚充の体が吹き飛び床を転がっていく。一瞬の事で何が起きたのか理解が出来なかった。
身体中が痛い。口に鉄の味がして唾を吐いた。
ガクガクする足を立たせると、そこには猗窩座が立っていた。柚充が吹き飛んだのは彼が蹴り飛ばしたせいだった。
『口の聞き方には気をつけろと言われただろう』
柚充は猗窩座を睨みつけた。戦う術が無いのは分かっている。それでも屈してやる気はさらさら無かった。
猗窩座の拳が迫って来るのが見えた。顔の前で腕を交差させ守りを固めた。猗窩座の拳が当たると共に両腕から骨の折れる嫌な音がした。

「……っああぁぁ」

痛みで呼吸がままならない。
猗窩座は柚充の胸ぐらを掴み持ち上げた。足も手も力が入らずだらりと垂れ下がっている。

ーー痛い、悔しい、痛い、痛い、悔しい、悔しい
  ここで死ぬ?諦める?
  楽になりたい…痛いのは嫌だ……



     《下を向くな》

   《見てきた柚充を信じる》


  《お前はもう一度刀を取るか?》



ーー私は手を伸ばしたんだ……


  私の覚悟はこんなもんじゃ無い!
  腕が折られても足は動くはずだ!

  私には 帰る場所がある!!


柚充は自分でも体はもう動かせないと思っていた。しかし実弥の言葉が浮かぶと柚充の心は再び立ち上がる。
猗窩座に向かって足を蹴り上げる。驚いた猗窩座は胸ぐらを掴む手を離し、2、3歩飛び退いた。

「鬼は鬼殺隊が必ず滅する!
 無惨の頸も必ず落としてやる!」

猗窩座、無惨、そして他の気配も睨みつけ柚充は言い放った。




    ドクッ、ドクッ、ドクッ

『ならばお前も鬼となれば、鬼殺隊には戻れまい。
 私の血に適応できればの話だがな』

柚充は目を疑う。
無惨の触手のような物が自身の首筋に刺さっていたから。
異物が無理やり血管に押入ると我先にと言わんばかりに身体中を無理やり巡り始める。突然広げられた血管は体のあちこちで悲鳴をあげた。

言葉にならない痛みと共に口から目から液体が滴り落ちる。腕が折られている為拭うこともできない。体の底から痛みと熱を感じ視界がどんどんぼやけていく。
拒否反応を示した柚充の体は崩れるように倒れ床をのたうちまわっていた。

『こんな弱い奴、鬼にしてもなんの足しにも
 ならないのでは無いですか?』
『私のする事を否定するのか?』
『っ!いえ。そんなつもりはありませんが…』
『多くの血を入れた。適応は出来まい。死ねばそこまで。
 もしも、鬼となれば鬼殺の奴らがどう出るか。
 見物であろう?』

尚も苦しみ続ける柚充を見下げて鬼舞辻は目の前から消せと吐き捨てた。


ーー他人の空似になど用はない



誰かの口元が吊り上がる。


『俺の………みーつけた、、』
 




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