夢の中より2
しのぶは無言のまま柚充の前まで来ると、柚充の体を抱きしめた。抱きしめられた当人は驚きで固まる。
「見た目派手に変わっても、不死川に物怖じ
しない柚充は、まんまで安心するわ。
で、体の方はどうなんだ?」
ーー見た目?
「宇髄さんそれは私が聞くことですよ。で、柚充ちゃん。
何処か痛いところとかありませんか?」
しのぶは柚充を離すと医者の顔へと変わった。
「…額が一番痛いです」
実弥も頭を痛そうにしているのを一目見るとしのぶはすぐに察した
「それはすぐに引いてくると思いますので大丈夫ですね。
立てそうですか?」
しのぶに手を差し出されベッドから足を下ろし力を込める
「………あれ?」
しのぶの目線が少し上を向いている、、
そして視界の端、チラチラしている白い色。
不思議に思って首を傾げると、はらりと髪が流れた。
「何これ!!!髪が真っ白じゃん!!
え?何で!?どうして?!どういう事!?」
「おい、そんなクルクルしてっとこけるぞ」
「いやいや、実弥様もしのぶ様も天元様でさえ
馴染みすぎでしょ!!」
「俺らは5日前に派手に驚いてんだよ。
5日もありゃーもう驚かねーよなぁ?」
「一周回ってアレ思い出しますよね?」
「ああ、アレだろ?」
「不死川の式神」
「不死川さんの式神」
宇髄としのぶが楽しそうに話す中、実弥は柚充を見ながら丈を測るべく手を床と平行に動かしていた。
「つーかお前、背ぇのびてねーか?」
「我ながら突っ込みどころがありすぎて何から
処理すればいいのか分かりかねます」
頭を抱えてしゃがみ込みうーうー唸り始めた。
「とりあえず、検査をさせてもらいますね」
しのぶの差し出す手に柚充は手を重ねた。
ーーーーーー
しのぶを前に丸椅子に柚充が座り、その後ろで壁に寄り掛かるように実弥が立っていた。
検査の結果は驚くほどに正常。
しかし前回より詳しく血液は検査され、その結果鬼の血が消えたわけではないことも判明してしまった。
「鬼の血の成分を包むように藤の花の成分が塗り
固められた状態とでもいうのでしょうか。
この藤の層が壊れる、または藤の層で包まれていない
鬼の血が増えて仕舞えば柚充ちゃんは鬼に
なってしまうと思われます。」
そして、それは今まで例が無い。
「何がきっかけでこの層が壊れてしまうのかも、
何をすると鬼の血が増減するかも、
今現在私から説明できる事はありません。
もし、再び鬼の血が目覚めてしまったら…」
「その時は迷わず頸を落としてください。
また刀を持たせて貰えるのなら、
自分の意識があれば意識があるうちに
私は私の頸に刃をたてるつもりで居ます」
私は死ぬ時は私のままでありたい。
そう言葉にした柚充の目はどこまでも真っ直ぐで、意思が硬いことを物語っていた。
「でしたら引き止める必要はありませんね。
不死川さんも考えに変わりはありませんね?」
「考え?」
「柚充ちゃんがもし再び鬼化するような事があれば
不死川さんがその頸を落とすと、
お館様と柱全員の前でおっしゃったんです」
「ちっ……継子の責任は師が取るもんだろ」
柚充から視線を背ける姿を見て、そんな事を言わせてしまった事を少し悲しく思った。
実弥が柚充の脇に寄ってくると、おもむろに刀を抜く。
腕を前に差し出し刀を滑らせた。
「なっ!!何やってるんですか!!」
血が溢れて流れ出す。それをみて柚充は腰の位置に手を当てるものの、いつもの応急処置用ポーチは無い。
ーーああもう、えっと!!居るじゃん!!
「しのぶ様!治療の道具を貸してください!!」
「全く困った師匠さんですこと。
みんなやらなくていいって言ったんですよー。
検査で明らかになってるからその必要はないって。」
「じゃあなんだってこんなことするんですか!!
血が有り余ってるなら輸血用にでも
取っておいて貰えばいいじゃ無いですか!!」
「今の技術では、血液を長期保存はできませんから
取っておく事は出来ませんよ」
「なら尚更大事にしてくださいよ!!」
「ふっ」
柚充に治療されながら実弥は笑い出した。
「笑い事じゃないですよ!!実弥様!
もう不死川方式は禁止です!!私が許しません!
もう馬鹿なんですか?」
しのぶはきっと2人ならもう心配は無いだろうと微笑んだ。
そして5日眠り続けていたにも関わらず退院が許された。
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