柱稽古


ーー結局玄弥に血の事聞くの忘れた、、
  でも、決めるのは玄弥な訳だし
  なんとかなるよね、、

蝶屋敷から戻ったことを告げると実弥が別な話題を振る。
「柱稽古の事はもう聞いたか?」
「はい。先程しのぶ様から簡単にではありますけど
 お聞きしました。
 でも………
 すごく不安な事があるんですよね」
「ああ?柱を巡って稽古するなんざ、
 今までと大して変わんねェじゃねぇか」
「いや、そこじゃなくてですね、ほら……実弥様が、、」
「俺が?」
「他の隊士の人達に稽古つけられるのかが
 不安なんですよ」

「・・・・・あ"あ"ぁ"!!」
実弥の額に血管が浮き出ていく。
「だから!そう言う所ですって!!」
「それくらいの分別弁えてるわ!」


「テメェ…6日以内に他の稽古回って来い」
「むっ…6日!!?」
「一刻でも遅れたら、お前に稽古は付けねぇ
 解ぁかったか!!」
「…殺生な、、、」
柚充の少し弱気な発言に、実弥はニヤリと笑う。

「無理なら良いぞ。
 頭を下げて謝るってんなら稽古付けてやらぁ」
ーー私の性格を良ぉくご存知ですこと。

「やれば良いんでしょ!
 やれって言うんでしょ!
 やりますよ!やってやりますよ!
 絶対に6日以内で実弥様の所まで
 たどり着いてみせますから!!」

悪戯心が招いて、負けず嫌いが災いした地獄の柱稽古が始まる。


ーーーーーー


ーーああ。
  内容も知らずに言い返してしまった、、
  伊之助にも勝負とかなんとか言われてたんだっけ。
  もうそれどころじゃないよ。
  6日以内でなんとかしなきゃ、、


初めの稽古は元柱、宇髄による基礎体力向上の為に走り込みである。

「柚充。お前はコレな」
頭の中で一人考え倦ねいている柚充に宇髄が投げて寄越したのは木刀。
「え?コレをどうしろと……
 今から走るんですよね?」
「柚充はソイツを背負って走る」
「ちょっ!!この木刀、
 日輪刀より重いのにコレ背負って走るんですか!?」
「ああ。
 そして、一番に戻って来ねぇと次に行かせねえからな」

ーーなにその無茶苦茶。



ーーーーーー


「よーし。
 ここまで到着してる奴ら次、時透の所に行けー。」
一度目の走り込みが終わり、階級の高い者を中心に数人が次の稽古に移っていく。さも当たり前のように柚充は合格組に混ざって次に行こうとすると、背後から肩を掴まれた。
「なに地味に次へ行こうとしたんだ?
 一番に到着しなきゃ、柚充は次に
 行かせねぇつっただろ」
「私だけなんか厳しくないですか!?」

「風柱の継子であることを呪うんだな」

ーーさぁねぇみぃさぁまぁ!!!
  日数指定だけに留まらず、
  他にも手まわしてんじゃないの!!


「ほら、派手に2回目始めんぞ」

柚充は羽織と滅の字の入った上着を脱いで木刀を背負うと、出発地点に移動する。
呼吸を整えて走ることに全集中を傾けていく。

ーーあれ?走る事って具体的になに?

よーい!はじめっ!!

隊士たちが走り出し、出発地点には柚充だけが取り残される。組んだ腕の片方を立て頬杖をついて考える。

「あ!そっか。成る程ね」

柚充は宇髄に目を向けるとニコッと笑い走り出す。その足取りは2本目とは思えない程軽かった。

「まぁ、走る事は柚充の得意分野だからな」
宇髄は次は合格するだろうなと思いながら、小さくなってゆく柚充の背中を見送った。
 




ページ: