柱稽古4
ーー1、2、3。1、2、3。1、2、3。
柚充は1人、頭の中で拍を取る。
「胡麻子、早くなって来てねぇ?」
「もっと早くなるよ。あの3人相手じゃなければね」
時透がそう口にした時、柚充は上から打ち込まれた木刀を打ち払い、その木刀は隊士の手から離れ飛んで行った。
「一人目」
残りの二人は青ざめる。1人では無理だと思ったらしく、2人一気に木刀を振りかぶる。
しかし振り下ろした先に柚充の姿はない。首を振り姿を探す隊士の前に柚充が上から現れる。その体は着地に合わせて木刀を振り下ろし、1人の隊士が持つ木刀を叩く、隊士の手から木刀は離れカランと乾いた音がした。
更に柚充は落ちた木刀を蹴り飛ばし拾う事を阻止する
「二人目」
今度は背に木刀が振り下ろされる。柚充が振り向きざまに木刀を振ると隊士の持つ木刀は道場の壁際まで吹き飛んでいった。それは最初に柚充自身が時透に打ち負かされた時と動きがよく似ていた。
「三人目」
道場に居合わせた隊士たちがざわめいた。
「はい。今日の稽古はここまで。
あとは明日続きね」
ーーーーーー
翌日、朝から昼まで代わる代わる別な隊士を相手に打ち込み稽古。
ーー早く次に行きたいのに。
気持ちばかりが焦っていく。
「白胡麻!!
気ぃ散らしてっと俺様がお前を叩きのめすぞ!」
「!!」
ーー駄目だ。集中が切れてた。
不覚にも伊之助の声で立て直すと、何度目かわからない白星がついた。
「じゃあそろそろやるよ柚充。」
時透と向き合い木刀を構える
「はじめ!」
また一瞬にして時透が消えた。
ーーーーーー
「お疲れ。柚充は次に行って良いよ」
動きは格段に速くなっていた。消えた時透の姿を直ぐに捉えなおし、木刀による攻撃を弾くだけでなく 逆に打ち込む。やはり基本を振り返らせたことは柚充に良い影響をもたらした。無駄を削ぎ落として時透の動きにも喰らい付く。周りで見ていた隊士はまるで柚充が舞っているかの様にも見えたという。
「良いんですか!」
時透との打ち込み稽古を終えた柚充は膝をついて座り込んでいた。
「行きたくないなら何日でもいて良いけど?」
柚充はブンブン頭を振る。
「あ、ありがとうございました!」
思わず手をついて頭を下げたのだった。
・・・・・・・。
しかし彼女。なかなか顔を上げない。
不思議に思った時透は柚充の前にしゃがみ。肩を人差し指でつんとつつく。すると柚充の体はコロンと横に倒れ込んだ。
「何コイツ…寝てんの!?」
伊之助がやってきて柚充の頬をプスプスとつつき始めた。眉がハの字に曲がり迷惑そうな寝顔をしている。
クスッ。
時透は柚充を抱き上げると道場を後にする。
「ソイツどうすんだ?」
ついて来た伊之助の言葉を背に小部屋にたどり着くと、ペイッと柚充をその部屋に転がし襖を閉めた。
「道場に転がしておいても邪魔でしょ。
こっちなら問題ないからね。
さ。稽古に戻るよ。」
「おう!」
ーーーーーー
「継子だか何だか知らねぇけど、
あの女、優遇されててムカつくわー。
俺だって継子だったらあんな奴に負けねぇし」
道場に戻ると、時透が席を外したのを良い事に威張り散らす隊士がいた。彼はまだ時透が戻って来た事に気付いてはいない。
ーーこんなヤツまだ居るんだ。
「アイツが俺らを打ち負かしたのも継子だからだっての」
そんな隊士に時透は声を掛けた。
「ねぇ?
柚充の強さを継子だからなんて簡単な言葉で
片付けるのはやめてくれない?
あの子はずっとあんたらが知らないところで努力し
続けてんだよ。じゃなきゃ不死川さんの継子なんて、
なんとなくで続くはずなんてないでしょ。
そんな事も判らずにここに居るの?
あんたは継子に負けたんじゃない。
柚充っていう努力を重ね続けた女の子に
手も足も出なかった。
良い加減認めたら?見苦しいよ。」
「そんな!俺は!!」
「分かった。君、伊黒さんの所に行って。
話は通しておくから。
早く、目の前から消えて……」
そんなやりとりがあったとは露知らず
柚充はその日時透の稽古を終えたものの、次の稽古に入る事なく眠りに落ちてしまったのでした。
実弥との約束の期限まであと4日。
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