柱稽古5


「やっぱり蜜璃様の稽古は柔軟ですよね」
「勿論よ!でもあと、音楽に合わせて踊ったりするわ」
「…………他の稽古と何かが違いますよね」
「そう??」

蜜璃と2人、話が弾んでいると、何故か別室に行っていた隊士達が戻って来た。しかしなかなか道場に入って来ず入り口でモジモジしている。
「さあ!稽古始めるわよ!みんな早く入って!」


「………っぷっ、、蜜璃、様っ?
 あれっ、、あれ何ーーっ」
その姿はこの時代では滅多に見ることのないピタリとした上下繋がった服で、上は肩から先、下は太ももの付け根から布が無かった。腰のりぼんは飾りなのか機能性には何の利点もありそうにない。
極力笑いを堪えながら、蜜璃に聞くもののその顔は至って真面目。

「甘露寺様!!何で俺らはこんな格好で、
 柚充は隊服のままなんですか!!」
笑われた事にせめてもの反撃の気持ちを込めて声を上げたものの、誰も言い返せない言葉が返ってくる。
きっとこの言葉は最強。

「それは不死川さんに言ってね」


ーーーーーー

道場のあちこちから悲鳴が聞こえる。
柚充は経験済みであり、前もって体を伸ばしてから臨んだため、叫ぶ事なく柔軟を受けた。思えば体もだいぶ柔らかくなったものだ。

時透がゆっくり寝かせてくれたのも良かったのかもしれない。頗(すこぶ)る快調である。

しかし今、なぜか調理場に立っていた。

先程からひたすら"ぱんけえき"なるものを焼いている。
ーー私の稽古ってこれ?

たしかに大量の粉に卵を割り入れて牛乳を入れて混ぜ合わせるなどなかなかの上半身運動ではあったが、、、

「やっぱり何か違くない?」


首を傾げながらもぱんけえきを焼き続ける柚充であった。

ーーーーーー


「柚充ちゃん!流石だわ言った通りに出来てる」
蜜璃は大量に焼き上がった、ぱんけえき目を輝かせた。
「あの、、蜜璃様?私の稽古って、、」
「あ!稽古自体は合格してるわよ。」

ーーは?

「でも、柚充ちゃんは一旦不死川さんの所に
 行ってから、伊黒さんのところに行ってね」
「、、、?」
「あの、だって、ほら、柚充ちゃん
 不死川さんところ戻ってないでしょう?」

「あ、、、まぁ。」
柚充は前日、前々日と時透の稽古の道場に泊まったため、不死川邸には戻っていなかった。着替えは支給されているし、湯浴みもできたから移動時間より鍛える時間を優先していたのである。
「男の子ばっかりだから、
 不死川さんも心配してると思うわ。だからね。」



ーーーーーー

蜜璃に言われて来たものの、まだ柱稽古を終えていないのに不死川邸に戻る事にすごく気が引けていた。敷地内に入る事なく中をこっそり覗いている。

ーー違うもん。蜜璃様に言われただけだもん。
  ぱんけえき届けたら伊黒様の所に行くんだもん。

庭では隊士達を吹き飛ばす実弥の姿があった。
どうやら柱稽古は宇髄の稽古を通過後はいくつかのグループに分けられ、回る順番が違っているらしい。
よくよく考えれば、短い期間に全隊士に効率的稽古をつけるためにはこの方法しかないのは確かだ。

ーー羨ましい、、

「……柚充?」
「、、カナヲ、、」
「柚充もここの稽古?」
「わ、私はまだ、、蜜璃様のお使いだよ」
何だか居た堪れなくなって蜜璃に待たされた、ぱんけえきの入った風呂敷包に目を落とす。
「羨ましいな、、」
カナヲの言葉に驚いて彼女の顔を見ると、カナヲは庭で稽古をつける実弥の方を向いていた。
「不死川さんに稽古付けて貰えて羨ましい
 師範は柱稽古には不参加だから、、
 私も師範に稽古付けて貰いたかった」

柚充はカナヲの言葉に何と返事をして良いのか分からなかった。
「柚充も、、心の声大切にしてね。」

心の中で風が吹く

ーーもたもたしてちゃだめた。
  1日でも早く辿り着かなきゃ…


「……カナヲ。ごめん、コレ実弥様に渡して?」
カナヲに風呂敷を託すと踵を返して走り出す。
目指す先は伊黒の所。


「柚充来てたのか?」
いつの間にかカナヲの後ろには実弥が立っていた。カナヲが頷き風呂敷を渡すと、開いて中を確認する。実弥は中を見せながらカナヲに問う
「栗花落も食うか?」

あまりに美味しそうな物に思わずカナヲは頷き、ハッとして実弥を見上げると、見た事のない様な柔らかな顔をしていた。
「、、柚充も素直になれば良いのに」
カナヲの呟きに実弥は「栗花落、胡蝶に似て来たな」と呟き返す。

その一言があまりにも嬉しくて
カナヲも思わず微笑んだ。
 




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