柱稽古6


伊黒と隣り合ってぱんけえきを頬張る柚充。伊黒の道場についた時、丁度休憩を取る所だったので、蜜璃から託された風呂敷包を渡すと、「少し話しておく事がある」と奥の部屋に通されたのだ。
こういった時、向かいに座るのが普通なのかもしれないが、伊黒に対してはこれが正解で、お互いに口の包帯の事は気にしてはいないが、これがちょうどいい距離感だった。
因みに伊黒が食べているのは柚充が焼いた物ではなく蜜璃のお手製である。

「美味いのは分かるが、顔が溶けているぞ」
「、、はっ!!見るに耐えられませんか?!」
「そういう意味で言った訳ではないが、これから
 稽古があるというのに随分と余裕がある顔をしている
 と思ったまでのことだ」
「余裕、、、残念ながら無いですよ」
「しかし次が不死川の稽古だろう?」
「そうなんですけどね、、、
 ちょっと、意地というか何というか、、

 実弥様には言わないでおいてもらえますか?

 ーーーーーー」

話を聞いた伊黒はフッと小さく笑った。
「だからと言って俺は甘やかさない。軽くしない。
 条件を達成するまでは次へは行かせない。いいな。」
「よろしくお願いします!!」
ーー痣の事を伝えておくべきかとも思ったが、不死川が
  言った通り柚充は強くなる事を諦めない。
  ならば導くのが柱としての責務なのだろう。

ーーーーーー

ーー早いっ、、
伊黒の太刀筋は蛇の様にくねくねと曲がる。今までも鍛錬の際に見てきたが、比べ物にならないくらい早い。そして今回は打ち返すにも大きな障害がある。青い顔をした隊士達が角材に縛り付けられ縦に横に天井にと吊るされていたのだ。構わず木刀を振り回せば確実に怪我をさせてしまうだろう。伊黒は彼らの事を罪人扱いしていたが、怪我をさせるつもりは無いようで、曲がる太刀筋も綺麗に彼らを避けている。

ーー例え太刀筋を避ける事はできても、
  伊黒様にこちらの木刀は届かない。

  考えろ、考えろ、考えろ、考えろ。

柚充はなおも伊黒の太刀筋を見極め受け続けている。角材を避け伊黒との距離を詰めようとするが、まさに蛇の如く逃げられてしまう。
こちらから攻撃を仕掛けようとすると、隊士の青い顔が目に入る。

「やりにくいなぁ……」

「打ち込んでこなければ、ここの稽古を
 終える事はできない。分かっているのか」

柚充は意を決して隊士の間を通して木刀を振る。しかしその間合いはたかが知れている。
そのまま伊黒の木刀に手を叩かれ、柚充は木刀を落としてしまった。

「ここまで」
「どうしよう、、受けれるのに攻撃できない」

「次の番まで考える事だな。
 次の者。」

柚充は稽古の邪魔にならない場所で伊黒をそして、道場を眺め続ける。
ーーどう戦えばいい?
  こんだけ人が磔にされてちゃ、、

柚充は角材に手を伸ばすと、ポンポンと叩く。
すると当たり前の事ながら、縛り付けられていた隊士に凄い勢いで睨まれた。


ーーーーーー

時は進む。
実弥と約束した6日目が終わろうとしていた。
しかし、柚充は約束の日までに不死川邸へ戻るとこは出来なかった…。
 




ページ: