柱稽古8


「オイ!テメェら!!
 もうイノシシとコイツしか立ってねぇのか!
 早く起き上がって刀(木刀)構えやがれ!!」
どんどん隊士が倒れていく中、柱稽古の進行に追いついた伊之助と柚充は実弥に向かい続けていた。
伊之助は柚充が悲鳴嶼の稽古を終えているとは知らず、まだ柚充に勝てる!先に終えて勝つ!と気合十分だった。
しかし、彼らとて無傷ではない。何度も打たれ、転がりその度に何度も立ち上がって向かっていた。

「伊之助。合わせて同時にいくよ
 じゃないと実弥様には敵わない、、」
「指図すんじゃねぇ。お前が合わせろ!」
「分かった!でも、こっちも動きも気にしてよね!」
獣の呼吸は風の呼吸の派生らしく、普段顔を合わせれば"勝負だ!"なんだと競い合っている二人であったが、共闘するにはなかなか相性が良かった。にしても実弥の動きは早い。
目配せあって実弥に向かっていくが一向に打ち込ませてはもらえない。
必死に立ち向かう二人の姿に転がっていた隊士たちが感化され「風柱討ち取るぞー」と妙な士気が高まっていく。

実弥は面白くなってきたと口の端を釣り上げた。


ーーーーーー

「風柱は化け物か、、」
「あの動きどうなってんだよ、、」
休憩時間になると皆、庭のあちこちに転がって、風柱人間じゃない説を唱え始める。

柚充も転がってはいないものの、庭で休息をとっていた。なんとか一本でも打ち込めれば先が見えるのだろうがその一本が遠い。
実弥は柚充に特に容赦ない。打ち込まれた衝撃で手が痺れた程に実弥は本気で柚充にも向かっている。
「オイ白胡麻!
 なんか風のオッサン倒せる方法はねぇのか?」
「方法って、、、」
柚充が腕を組んで考え始めると他の隊士達も期待の色を柚充に向ける。

ーーそんな方法があったら苦労はしないけど…

「うーん。………死ぬ気でやる?」

「んなこたぁもうとっくの当にやってんだわ」
「他になんかねぇのかよ!」
「つーか俺らもう半分死んでるって…」
みな簡単な方法なんてあるわけないと分かっていたが、あまりに思っていた通りの答えで肩の力が抜け落ちていった。

「でもきっと、力を合わせて打ち込み続けたら、
 私たちにだって勝ち目はあると思うのです
 結局は諦めない事が一番じゃないかな」

静まり返るなか、口火を切ったのは伊之助だった。
「しゃあねぇな。俺様はその案乗ったぜ。」
「嘴平の言う通りか。
 どっち道やらねェとやられるのがオチだもんな」
「言ったからにはお前が一番に諦めんじゃねェぞ柚充。」
何やら柚充と伊之助を中心に隊士たちの実弥を倒すべく再びまとまっていった。

「風柱を討ち取れー」
「むしろ殺せー」
「女の継子とずっと一緒なんて羨ましいぞー」
「ちょっ!!それは違うでしょ!」

ーーーーーー

実弥の柱稽古に入り、2日目が終わろうとしていた。今日をもって伊之助は数人の隊士と共に悲鳴嶼の稽古へと進んでいった。
諦めずに打ち込み続けた結果、先程進んでいった隊士たちが実弥の隊服を掠ることが出来たのだ。実弥は柚充が、隊士たちを諦めさせなかった事には気付いていた。だから本来なら柚充も稽古を完了としても十分なのだが、継子を甘やかしてやる気はない。この後も打ち込み稽古は続いていった。

そして稽古時間外には、実弥と柚充二人で打ち込み稽古もおこなう。
周りの隊士は理解を超えて二人の打ち込み稽古をこの世のものではないといった目で眺めていた。

そうして数日が過ぎてゆく。
 




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