ただいま
しのぶからの用は済み、更にポーチの応急処置用具も補充させてもらって、不死川邸に戻る。
不死川邸に戻ると、庭が地獄絵図と化していた。ボコボコにされ転がる隊士に、暴れ回る実弥。それを止めようとして縋りつき振り回されている隊士。
ーーもう夕方なのに、、いつからこんなことに…
あれ、炭治郎だよね。ボコボコじゃん。
これ、柱稽古??私の時と違うんだけど……
「柚充!!風柱止めてくれっ!!」
ーーやっぱり違うんだ、、。
「実弥様!ただいま戻りました!!」
「うるせェ!!んなこたァどうでも良い!!」
「・・・・・・・。」
ーーはぁ、、。どーでもいいと。
笑ってはいたが、柚充の額に青筋が浮かぶ。隊士にすがられなおも怒り続ける実弥の前に足を進めると
柚充の腕が伸びる。
その手は実弥の両頬にたどり着きそのまま引き寄せる。
柚充は実弥に額を合わせた。
!!!!!!!!!
その場に居合わせた隊士全員が固まる。
「只今!!戻りました!!!」
「お、、、おぅ、、、」
顔が近い事に加え、その顔が笑顔なのに恐ろしく冷たい顔であった為、実弥は毒気を抜かれてしまった。
大人しくなった実弥に柚充は背を向ける。
「炭治郎はあちらで手当てをします。
動ける隊士の方は、転がってる方を蝶屋敷へ移動を
お願いします。あ、すいません。あなたは隠の方に
アレ(外れた戸)直してもらう手配して頂けますか?」
「……あの、、大丈夫ですか?
風柱ヤバいキレかたしてましたけど、、」
平隊士の心配に、出来るだけ顔を引き攣らせないように笑った。
「ええ。大丈夫です。
やらなきゃいけない事がありますので」
その場にいた全員が思った。
ーーー無茶苦茶、怒ってるーーー
「実弥様。中へ。
な!か!へ!!」
尚も固まっていた実弥へ柚充のキツめ声が飛ぶ。柚充としては最低限、他の隊士に柱らしからぬ姿とうつらないよ配慮したつもりであったが、心なしか魂が抜けた感が否めない姿で実弥は屋敷内へと向かっていった。そんな中、現場となっていた庭に宇髄が現れる。
「おー。片付いたか。柚充すげぇな」
「宇髄様!あれ、大丈夫ですか?」
「一応、様子見てくわ。
外は柚充が言ったようにしといてくれや」
平隊士にそう言い残すと、実弥の後を追うように宇髄は屋敷内に消えていった。
柚充は炭治郎の応急処置へ向かう。
「うわー。痛そう、、ごめんね炭治郎。大丈夫?
だから心配だって言ったのに、、」
「庭で騒ぎ起こして悪かった。
でも、心配って?」
「この通り大暴れするんじゃないかと思ってたんだよ」
話しながらもテキパキと消毒し、軟膏を塗ったりガーゼを当てテープを巻いたり処置を進める。応急処置も腕を上げたものだ。
「因みに、何があったの?」
「…それはーーー」
ーーーーーー
その後、宇髄がにやにや笑う中、実弥は柚充から説教を食らった。残念ながら正論を並べられ今回は実弥に反論できる余地はない。
ーーあのやろォ、、ペラペラ喋りやがって、、
柚充は実弥の手を取る。
「実弥様。玄弥を思う気持ちは分かります。でも、
この手で危害を加えて仕舞えば、その後に
苦しい思いをするのは目に見えてるじゃ無いですか。」
鬼を滅ぼしても、もしも目を潰していたら、今度はそれに心を潰しながら生きる事になってしまう。そんな未来であってはいけない。
実弥は柚充の手の上に乗る自分の手を見た。
ーー確かにそこまで考えていなかった。
鬼殺隊を辞めさせられればそれでいいと思っていた。
じわじわと罪悪感が湧き上がってくる。
「…………わるかった、、」
視線を合わせずに実弥は小声で返事をした。
「後は天元様に怒られればいいんです!!
私は失礼しますからね」
息をつくと、柚充は部屋を出て襖をスパンと閉めて行った。
「で、なんで、不死川は、正気に戻ったわけ?
あの時、口付けでもされたわけ?」
「されてねぇよ」
「ホントかぁ?
されると思って止まったんじゃねーの?スケベ柱」
「なっ!!ちげぇよ!!」
「何にしても、柚充の言う通り、
大事に至らなくて良かったな」
ーーーーーー
柚充は自室に戻り、握り拳位の大きさの瓶を眺める。それはしのぶから渡された自分の血から作られた鬼の血を抑えるための薬。
薬を使わなければ人からどんどん離れて行くという事実。胸が締め付けられるように痛む。
ーー 一緒にいられなくなってしまうのかな
「嫌だ、、な、」
呟く声は誰にも拾われる事なく
消えていった。
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