それぞれの決意4


『いい加減罰を与えないとね』
童磨の扇が柚充の頬を滑り紅い血が線を描く

頬を流れる血を舐め取ろうと童磨の顔が柚充の頬へと近づいていく。

ザシュッーー

『お前にくれてやる血なぞ
 一滴たりとも持ち合わせておらんわ。』
『なんだ。やっぱり鬼にもなれるんじゃない!』
顔に4本の爪の裂傷を付けられて尚、童磨はその顔に笑顔を貼り付ける。笑顔と裏腹に柚充の首を掴む手に力が込められて行く。
ギリギリと骨が悲鳴をあげた。
その時、童磨に向かって何かが飛んで行き体に突き刺さる。蝶を模した鍔。床に転がるしのぶは精一杯の力を込めて日輪刀を童磨に向かって投げつけたのである。童磨はニコリと笑い、柚充の体を壁にむかって投げ捨てた。その腕はしのぶへと伸ばされる。

しのぶの体をぎゅっと抱き締めた。

『そんな体でよく頑張ったね!!俺は感動したよ!!
 君は俺が喰うに相応しい人だ永遠を共に生きよう!』

童磨は涙を流し、声は高揚感に満ちている
『言い残す事はあるかい?』

「ーーーーーーー」

柚充の体は壁に打ち付けられ、背の壁にはひびが入っていた。

『蟲、の、、み、はしら……』


突然戸がバンと音を立てて開かれる。

「師範!!」
その声はカナヲだった。
しかし無情にもカナヲが捉えたしのぶからゴキッと骨の砕ける音が聞こえた。

童磨の立つ足元に若竹色の日輪刀も落ちていた。壁側にぐったりした柚充の姿。
カナヲは血が沸騰するかのように怒りが込み上げる。
ーー花の呼吸 肆ノ型 紅花衣

走り出し、刀を振るうが、童磨の姿は目の前から消えた。驚き振り返るとその姿は別な床面でひらひら扇を振っていた。
『吸収してる最中に斬りかからないでおくれよ』
これほど怒れる笑顔を見た事がない。徐々に取り込まれていくしのぶを前に必死でカナヲは怒りを抑えていた。そんな童磨の背後に緑の影が飛びかかる。だがその影は扇にあしらわれ床を転がった。けれど緑の影、柚充は手放してしまった日輪刀を掴み上げていた。

「カナヲごめん。守りきれなかった、、」
「謝らないで。今は。」
「……うん。」

カナヲと柚充は日輪刀を構え直すと、ほぼ同時に飛び上がった。

ーー弐ノ型 御影梅
「弐ノ型 爪々・科斗風」

二人の斬撃が童磨へと向かっていく。柚充の目には童磨の扇が斬撃を退け尚且つ、氷の粒子がこちらに向かってくるのがうつる。
「参ノ型 晴嵐風樹」
カナヲと柚充を風が包み氷の粒子を吹き飛ばす。
『うーん。吹き飛ばされるのは嫌だなぁ
 意味がなくなっちゃう。』
閉じた扇の先を口元に当て童磨は不満を漏らす。
『血鬼術 蔓蓮華』
氷の蓮華がムチのように向かってくる。
ーー弐ノ型 御影梅
自身の周囲に無数の斬撃を繰り出す。蓮華のムチを斬撃が切り落とす。
ーー思ったより多い
捉えきれなかった氷がカナヲを傷つけた。

一方柚充は蔓を避け童磨に向かっていく
「陸ノ型 黒風烟嵐」
間合いに入り込んだものの、扇で受け止められ首を落とすどころか、傷を負わせる事すらままならない。もう一方の扇を童磨が振ると氷柱が柚充に向かって飛び、頬と肩に血が滲む。

柚充は小さく舌打ちした。
 
継子として、普通の隊士より厳しい稽古や鍛錬を積んできたカナヲと柚充の二人掛かりでも、上弦の弐と戦う事は容易ではなかった。

ーー柚充の動きが遅くなってきてる
  師範とも一緒に戦ってたから仕方ない、、
  なんとか回復する時間を私が作らなきゃ

『あれぇ?猗窩座殿もしかして死んじゃった?
 ………悲しい、、一番の友人だったのに……』
童磨の目から涙が落ちる。

「嘘ばっかり吐かなくていいから」

童磨はカナヲとは違う。
心の声が小さな彼女とは違って、童磨は何も感じない。人が生まれて当たり前に持ってるはずの感情を理解ができない。
そしてそれを取り繕う姿は滑稽。

「馬鹿みたい。ふふっ。
 貴方、何のために生まれてきたの?」

ーーカナヲ!そんな挑発したら、、、

  ………私、、の為?

その時柚充の中で、鬼柚充の声がする
ーー『二口程薬を飲め』
ーー「でもそれじゃ、、」
ーー『安心せぇ。それだけだは消えんさ。
   策はある。』

『何でそんなに酷いことを言うのかな?』
童磨の扇がギチギチと軋み、バチンと音を立てて閉じた。その顔には一切の笑みは無い。

「貴方のことが嫌いで、一刻も早く地獄へ送りたいから」
反対にカナヲの顔は笑っていた。

ーーーーーー

ーー花の呼吸 伍ノ型 徒の芍薬
カナヲは童磨に深く飛び込みつつ九連撃を放つ
『いいねぇ綺麗だねぇ
 血鬼術 枯園垂り』
ーー弐ノ型 御影梅
激しく刀と扇がぶつかり氷が砕け散る。

『血鬼術 凍て曇』
「参ノ型 晴嵐風樹」
カナヲが飛び上がるのと入れ替わるように柚充が入り込み氷の粒子を吹き飛ばす。
『本当にそれ嫌な感じだよね。
 血鬼術 蔓蓮華』
目の前の柚充だけでなく氷の蔓はカナヲのところにも伸びていく。
「陸ノ型 黒風烟嵐」

『それはさっきも見たよ』
飛び上がりながら刀を振り上げると、斬撃は童磨の肩に傷をつけるが、柚充は足首を掴まれ放り投げらた。水飛沫が上がる。

『次いくよー
 寒烈の白姫』
まるで戦いに不釣り合いな口調で童磨はカナヲに声をかける。
氷が女の人の形に変わると、口から氷の吐息が吐き出され、みるみるうちに水と床がピシピシと音を立てて凍りついた。

ーーこんな広範囲じゃ、近づけない。
「カナヲ!!後ろに飛べ!!」
柚充の声にカナヲが飛ぶと先程までいた場所に氷柱が突き刺さっていく。
ーー柚充の声があったから、、、
カナヲが柚充へ視線を向けるが、いると思ったところにその姿はない。
「……?、、柚充?」

『カナヲちゃんだっけ?
 これなーんだ?!』
 




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