怒り2
伊之助、カナヲ、そして柚充は童磨に向かって刀を振る。お互いを補い合い、目の前の鬼を倒す為なら出せる力を惜しみはしない。
『そんなに怒っちゃって面白いの鬼殺隊(みうち)に
鬼がいるってことも知らずに鬼を討つとか言って』
「禰󠄀豆子は鬼だけど鬼じゃねぇ!!
なにを言ってやがんだ!頭おかしんじゃねぇの」
「またデタラメ言ってるだけ!」
『その子は知らないけど、デタラメじゃあないよ
琴葉のことだって本当のことだったし。
ほらそこに居るじゃない?』
童磨は片方の扇で刀を弾き返しながら、もう一方の手で指を指す。
『ね?柚充?
生まれた時から鬼の子だよね?』
「「……!?!」」
「伊之助!!」
カナヲが叫ぶ。一瞬見せた隙を童磨は逃す事はなく、伊之助は床面を転がる。受け身を取る事は出来たようで直ぐに刀を構え直す。
「白胡麻ぁ!!
テメェ!違うなら違うって言いやがれぇぇええ!!
馬鹿にされてんだぞ!黙ってんじゃねぇ!!!柚充!!」
「……、、、」
ゆっくりと柚充の日輪刀が下を向く。
その姿は戦意を削がれたようにしか見えず明らかに肯定を意味していた。
「……う、そ。柚充が鬼?!
だって日の光だって平気じゃ、、」
『不思議だよねー。人も喰わないし、、
鬼になりきれず、人にもなれない。
ほんと出来損ないだよね』
「でき、そこない、、」
童磨の言葉を思わずくり返す。そのあまりの悔しい響きに唇を噛む。
《鬼は鬼殺隊が滅してやる!!》
それは自らが口にした言葉。
ーー私がどう思っていようと、
鬼殺隊から見たら私は斬るべき鬼、、、
知られたくなかった、、、
知らないで欲しかった、、、
柚充の足が止まる中、童磨に切り込むカナヲは扇で弾き飛ばされ何度目か分からない水飛沫をあげて着水した。
『さあ、柚充。共に行こう。
君の居場所は鬼殺隊(あそこ)にはないんだから。
出来損ないでも僕なら柚充の事
大事にしてあげられる』
童磨の手が柚充へと差し出される。
『僕が、居場所を作ってあげる』
柚充の両手が力なく垂れ下がり、その目は床を彷徨う。
みたびカナヲと伊之助の攻撃を察して、童磨は扇振る。
『血鬼術 結晶ノ御子』
すると童磨そっくりな氷の人形が出来上がる。しかしその人形の大きさは童磨の3分の1程。二人の前に立ちはだかると童磨の動きを真似て見せる。
ブワッ!!
人形の動きに合わせて氷の花弁が伊之助とカナヲを襲った。
『この子俺と同じくらいの強さの技出せるんだ
あとは任せるね』
童磨は柚充へ向き直る。
『さあ。』
手を伸ばし童磨は柚充に近づき、手を伸ばせば届くそんな所まで来て微笑んだ。
『また、僕のところへおいで。』
「………そうかもしれない…。
私は人でも鬼でもなくて知られてしまえばもう
そこに存在してはいけないものになってしまう……
人の言葉を借りるなら、とても悲しい。」
『じゃあもう選択肢はないよね?!
さぁ!』
童磨の両手が柚充の体を包み込んだ。
『……………?』
つもりだった。
後ろへ視線を向けた瞬間に左肩から腕が引きちぎられ吹き飛んだ。背後に居た柚充は何かを口に放り込むとギリっと童磨を睨みつけた。
「たとえ私の居場所がなくなったとしてもお前に
居場所を与えられるくらいならこの頸自分で落として
死ねば良い。たったそれだけの事だ!!」
童磨の笑顔を貼り付けた顔に血管が浮かぶ。
『ああそう。これだけ言っても聞かないなら、
守ってあげる必要はない。もう要らない。
さようなら。出来損ないの柚充』
新しい腕が生えると氷の人形を更に作り出す。
作り出された人形は柚充に向かって怒り狂ったように攻撃をし続け、傷を負いながら柚充もまた氷を砕く。
掠った氷が手に巻き付けていた包帯が切り割いていった。
「聞いたかカナヲ!!!さっきのが胡麻子の答えだ」
氷の童磨と交戦しながらも、伊之助はカナヲに目配せをし、カナヲもまた伊之助を見て頷く。
「カナヲ!!伊之助!!コイツを倒す間だけで良い!!
今だけで良いから一緒に戦って!!」
「今だけじゃねぇ!当たり前だ!!お前は俺たちの
仲間だ!!」
「仲間だから!!」
伊之助とカナヲの声が重なった。
『何それ。仲間だからって何になるの?
ほんと人間って馬鹿馬鹿しい』
ーーーーーー
増えた氷の童磨に3人はどんどん引き離されて、連携が取れなくなっていく。
『あんまり遊びすぎると叱られちゃうから、
僕は行くよ。城に入ってきた鬼狩りたち殺さなきゃ』
ーー畜生!!逃げちまう!!
「だああああくそがァァ!!」
「伊之助!!焦らないで!!
あと少し!!粘って…」
蔓を断ち、氷を破り、吹き飛ばし、、
立ち止まる事なく刀を振るう。
『じゃあね』
童磨はドアに手を掛ける
ドロ……
『あれ?なんだこれ』
ーー毒?体が溶けていく…?
《私の体は高濃度の藤の花の毒が回っている状態です。
あの鬼を倒すには、
私は鬼に喰われて死ななければなりません》
童磨の体から力が抜けずるりと倒れ込む。
同時に氷の人形が崩れていく。
「何だああ!?急に消えて罠か?!!」
「違う!師範の毒が効き始めた!」
《必ず私が鬼を弱らせるから、
カナヲが頸を斬ってとどめを刺してね》
「頸を狙って!!一気に追い込む!!」
伊之助とカナヲが童磨に向かって走る。
今を逃してやる必要はない。
ーー大丈夫安心して。
私が絶対やり遂げる
しのぶ姉さんの命は無駄にしない!!
『柚充、柚充、柚充の血、
あれだ、あれさえあれば、、、』
ずるりずるりと童磨は体を引きずる。
柚充が血を流しながら刀を振り続けるのが見える。
カナヲと伊之助が童磨へと飛びかかる。
「往生しやがれ!ド腐れ野郎!!」
『血鬼術 霧氷・睡蓮菩薩』
童磨への道を塞ぐように巨大な菩薩が現れその手を振り下ろす。
ドゴォと音を立て、床面を叩き割り水飛沫が立ち登った。
ページ: