導き
柚充は無限城の中を走り続ける。
近くでひかたが待機していた様で、柚充はその姿を追い足を動かす。ずっと一緒に居たひかたなら柚充が実弥の元へ行こうとしている事も、空間の作りが滅茶苦茶なこの城の中、多少無茶な移動でもなるべく短い移動で案内をする。
そう信じていた為、言葉を交わす事なく走り続ける。
柚充の内では鬼柚充がため息をついていた。
『残念ながら造血剤を飲んで作られる血は、
鬼舞辻由来の血が色濃くなってしまう様じゃ。
回復力を高める為であっても、これ以上造血剤(それ)
に頼ると、我が抑えようとしても抑えられんし、
瓶の血で鬼化を塞ぎきれなくなってしまうぞ』
「でも、それで動き続けるという選択が出来るなら
私はそれでも良い」
『どういう事か分かっておるのか?』
「……ずっと、守りたいものと、守る術を
考え続けていたの。私の血の使い方は私が決める」
柚充が鬼柚充に向けて笑う。
「一緒なら大丈夫」
ーー『そうやってまた強がりを…』
ーーーーーー
『鬼女(おにめ)!!』
「鬼女言うな!この吊り目!!」
柚充は隊服を着た愈史郎を目の端に捉えたが、完全無視して行こうとした。だが、彼のたった一言でまんまと捕まる。後ろでは村田ともう一人の隊士がその剣幕に「ヒィーー」と悲鳴を上げた。
『抑える薬あるんだろうな』
「アンタに心配される必要ない」
あからさまなため息をつきながら、愈史郎は柚充に一枚の紙を差し出す。紙には何やら不思議な模様が描かれていた。
『お前の鴉にコレ付けておけ!』
「はいはい」
一目見て、あちこちの鴉が付けているお札と判断し、ひかたに付けながら適当に返事をする。
『珠世様がお前の為に調整してやった薬だって事
よく考えろよ』
「……分かってるわ。この吊り目、、」
柚充は日輪刀を抜くと背後に迫っていた鬼の首を斬り飛ばす。悟られない様にしているとは言え、鬼の血を持つ2人を目の前にしているせいもあって、先輩隊士の2人は鬼が迫っていることに気づいていなかった。その口からまた小さく悲鳴が上がる。
「じゃ、私は行くから。
……お互い、御武運を。」
ーーーーーー
柚充は躊躇わずに飛ぶ。
深く深く落ちる道でも。
怖いのは自分が死んでしまう事よりも
何も出来ずに手放してしまう事。
しのぶを守りきれなかった。
珠世も死を覚悟していた。
私の覚悟は何処にある?
「木枯らし颪!!」
しのぶと一緒の時より開けた廊下だった為、風の吹き戻しは弱く、受け身をとって衝撃を緩和した。
ひかたに目配せすると、その翼はまた羽ばたき出す。
一直線に伸びた廊下の先。そこに目指す先がある。
突然、鋭い殺気と覇気が突風の様に押し寄せ、足で踏ん張る柚充の元に前を飛ぶひかたが吹き戻され、飛ばされてきた。すぐに風は収まったものの、ひかたの様子がおかしい。
「ひかた、、、羽が?」
突然の事にひかたは羽を痛め飛べなくなっていた。飛べないながらもぴょこぴょこと先へ導こうとする姿に柚充はひかたを抱き上げ頭を撫でる。
「分かったよ。この先だね。
大丈夫。ありがとう。」
「ブジニ カエレ」
「………ん」
もう一撫でし下におろすと柚充また走り出す。
ひかたは柚充が見えなくなってもその背を眺め続けていた。
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